スズメバチは凶暴で危ないって聞くけど、実際どれくらい危ないの?
こんな疑問に答えます。
スズメバチは、昆虫界でトップクラスに位置する肉食性の昆虫。
スズメバチの特徴と魅力については以下の記事でも紹介しました。
そんな彼らは日本で最も危険な生物の1つとも言われます。
それは、スズメバチによる死亡事故の件数が多いからです。(詳しくは後述します)
では、「スズメバチが生息する場所は、危ないから絶対行っちゃダメ!」なのでしょうか?
いえ、ちゃんと注意すべきポイントに気をつければ大丈夫です。
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。
そんな虫好きの僕が、スズメバチの特徴と魅力を紹介します。
- データから見るスズメバチの危険度
- 種による攻撃性の違い
- オス・メス、女王バチによる攻撃性の違い
- 時期による攻撃性の違い
- スズメバチをもっと知る【ハチに関するおすすめの図鑑】
- スズメバチと同じ分類に属する虫たち
- まとめ
データから見るスズメバチの危険度
厚生労働省の人口動態調査結果を見ると、
スズメバチによる死亡事故は「毎年15 - 30件」発生しています。
熊やヘビによる死亡事故は「毎年0-5件」なので、その数倍の件数です。
↓のサイトでデータを詳しくまとめてくださっています。
この死亡事故発生件数の多さが、日本で最も危険な生物と言われる理由です。
でもこのデータ、スズメバチと熊では接触する回数が全然違います。
なので、スズメバチの攻撃性の証拠としては不十分です。
実際、年間100回以上も探索に行く僕は、たくさんのスズメバチに会いますが、スズメバチに刺されたことは一度もありません。
僕が何度も観察している経験からは、スズメバチが攻撃的になる条件があると感じます。
例えば、冒頭に貼ったこの写真、数十センチまで近付いて撮影しています。
もしスズメバチが常に凶暴だったら、これ撮ってる時に刺されてますよね?
僕が実際に出会ったり、観察した経験上、攻撃的になると思われる条件を検証していきましょう。
種による攻撃性の違い
スズメバチと言っても、色々な種類のスズメバチがいます。
種類によって攻撃性が異なりますので、僕は種類に応じて気を付ける度合いを変えています。
オオスズメバチ
腹に細い線が一本あるのが見分けポイント。
実際に出会うと、態度も大きく気が荒めな印象。
図鑑によると、樹液場を占有する習性があるとのこと。
チャイロスズメバチ
温厚な印象で、攻撃性を感じたことはほぼない。
樹液に夢中で、近付いてもあまり気にしない様子なことが多い。
この写真もかなり近付いて撮影しています。
一般的には特別攻撃性が低いわけではないようですが。
種別の被害件数のデータ
以下のサイトによると、コガタスズメバチによる被害がダントツで多いようですね。
※コガタスズメバチは、冒頭で掲載している写真の種です
個体数の影響もありそうですが、やはりチャイロスズメバチの被害は少なさそうです。
樹液場はえさ場なので、ハチを刺激しないよう、激しい動きはしないように意識しています。
樹液場にオオスズメバチがいた場合は、特にハチの動きを観察しつつあまり近づき過ぎないようにしています。
オス・メス、女王バチによる攻撃性の違い
まずオス・メスですが、毒針を持つのはメスのみ。
つまり、オスは刺しません。
じゃあオスなら素手で捕まえることもできるんだ♪
その通りなのですが、素人にはほぼ不可能なのでやめましょう。
ただでさえ見分けづらい上に、動き回っているハチのオスを見分けるのは困難だからです。
また、女王バチと働きバチによる違いもあります。
女王バチの方が攻撃性は低く、働きバチの方が攻撃性が高いです。
春に現れて、6〜7月頃に巣作りしているハチが女王バチ。
巣が完成した後、巣を守ったりあちこちに餌を探しに言っているのが働きバチです。
女王バチの方が体が大きくて強そうなのですが、こちらの方が大人しいんですね。
なぜなら女王バチが死ぬと、一家は全滅。
戦闘するリスクが高いためです。
野生の動物って、本能的で衝動的に行動しているイメージがありますが、ある種人間よりもとても合理的に行動しているんですよ。
代わりに、働きバチの攻撃性は高いです。
特に巣の周りにいる奴はヤバい。
なぜなら、巣を守る為に戦うことが彼女らの目的なのです。
この写真はある野鳥観察舎に入ったら、ヒメスズメバチの巣が作られていた時のもの。
ビックリしたのですが、せっかくなのでしばらく観察しました。
じっくりハチの巣を観察したのは初めてだったのですが、働きバチの行動を知る良い機会になりました。
まず、僕が気付かず巣に近付いたら、警戒度を上げて兵隊たちが巣から何匹か出てきました。
そして兵隊たちは巣を囲んで、羽音を鳴らして警戒モードに入ります。
僕が少し距離を取ってじっとしていると、問題なさそうだと感じたのか、いくらかが巣の中に戻りました。
その他の兵隊たちは、定期的に交代で外にパトロール(か餌探し)に行っていました。
この様子を見ていて、すごく統制の取れた動きだと感心したものです。
働きバチたちは、まさしく巣という砦を守るための「ソルジャー」なのです。
時期による攻撃性の違い
スズメバチが攻撃的になるのは、秋(8〜10月頃)と言われています。
僕の経験的にも、スズメバチはこの時期に一番活動的だと感じます。
なぜなら、この時期はスズメバチにとって繁殖期。
スズメバチの巣が完成し、働きバチのソルジャーたちが配備されている時期なのです。
働きバチのところで説明した観察舎の状況で、もし僕が巣に対して何か刺激を与えるようなことをしたら…?
何度も引用させてもらっていますが、↓に被害発生時期が掲載されています。
草刈り中にコガタスズメバチに刺される事故が最も多いです。
巣があることが分かっていれば当然警戒できるのですが、問題なのは気付かずに巣に近付いてしまった時です。
コガタスズメバチは、庭の木の枝や軒下に巣を作るからですね。
事故への対策は、以下を知っていくことが重要かと思います。
- スズメバチがどういう場所に巣を作るのか知っておく
- 繁殖期には巣がありそうな場所に近づかない or 気を付ける
スズメバチをもっと知る【ハチに関するおすすめの図鑑】
また、「スズメバチの種類と特徴をもっと知りたい!」という方は、以下の本がおすすめです。
名前や外見的特徴だけでなく、行動や生態についても紹介されています。
スズメバチはもちろん、他の身近なハチたちのことを知るのにピッタリですよ!
スズメバチと同じ分類に属する虫たち
スズメバチはハチ目スズメバチ科に属する虫。同じ分類の虫たちを以下で紹介しています。
[ハチ目]
膜翅目(ハチ目)の昆虫まとめ|ハチやアリなど社会性を持つ昆虫がいる
▼
[スズメバチ科]
スズメバチ科の昆虫の種類と魅力|高い攻撃力の理由は毒針と社会性
まとめ
以上から、
スズメバチは常に攻撃的なわけではないが、気をつけるべき種と時期がある
と言えます。
僕が虫探ししている時の感覚と、被害結果もだいたい一致していました。
ということで、虫探しするのに、必要以上にスズメバチをおそれる必要はないですが、以下の点には気をつけましょう。
- 攻撃性の高いオオスズメバチ、コガタスズメバチ、キイロスズメバチに注意
- 7月以降に見られるハチはほぼ攻撃的な働きバチなので、むやみに刺激しない
- 繁殖期の巣に近づかないようにする
そのほかのおすすめ虫紹介記事↓
■ キリギリス類
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