イモムシ・ケムシというと、僕の友人たちの反応を見ると、苦手に感じている人が多いように感じます。
しかしながら、イモムシたちは実はとっても魅力的な虫。
単にイモムシと言っても、
「かわいい姿のもの」
「奇抜な姿のもの」
「見つけるのが難しいほど巧みな擬態をしているもの」
と実に様々な姿のものがいるのです。
しかも生態(天敵からの身の守り方)も種ごとに違いがあり、彼らの観察をしてみると、とってもたくさんの発見とワクワクがあるんですよ!
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。
そんな虫好きの僕が、イモムシとケムシの種類と魅力を紹介します。
※動画版はこちら▼
イモムシ(芋虫)とは
イモムシは漢字で書くと「芋虫」と書きます。
この「芋」とは、サトイモやサツマイモのことであり、イモムシとはもともと「サトイモやサツマイモを食害するスズメガの幼虫」のことを指していたようです。
農家の方々にとってイモは主要な作物で、それらを食害するイモムシは目立つ存在だったのでしょう。
ちなみに「スズメガ」とは特定のグループの"蛾(ガ)"のこと。
例えば以下は、スズメガの仲間であるセスジスズメの幼虫です。
セスジスズメの幼虫
赤と黄色の紋が目立つ、8cmほどもある大きなイモムシで、まさにサトイモを食べます。
今では、「イモムシ」という言葉は今では広範囲の幼虫を指す言葉となり、「チョウやガ類の幼虫の総称」といった意味で使われることが多いです。
イモムシとケムシの魅力
僕が思うイモムシと毛虫の魅力は2点あります。
2.じっくりと観察できる
1.多彩なバリエーションと宝探し感
イモムシたちが属する「チョウ目」には、日本で5,000種ほどが知られています。
つまりそれは、それだけ異なるイモムシがいるということであり、実に多彩な虫たちなのです。
例えば大きなくくりで言えば、イモムシの中でもその特徴によって以下のような呼び分けがあります。
・毛が目立つイモムシ=「毛虫(ケムシ)」
青虫姿のナミアゲハの幼虫
さらに、
「奇抜なデザインや装飾を持つもの」
「毛ではなくトゲを多く持つもの」
など、実に豊富なバリエーションの姿があるのです!
また、イモムシの情報は少なく、一般的な昆虫図鑑にはあまり種類が掲載されていません。
そのため身近な場所でも見たことのないような姿のイモムシに出会うこともあり、そのような「宝探し感」がある虫たちなのです!
2.じっくりと観察できる
イモムシ・ケムシたちは、動きが俊敏なものはあまりいません。
また、昆虫のほとんどは成虫になるとはねを持って空を飛びますが、イモムシたちにははねはありません。
そのため、見つけることさえできればじっくりと観察させてもらうことができます。
ただし、飛んで逃げることができない分、イモムシの多くは自身の姿を背景に似せる「擬態(ぎたい)」をして身を守ります。
擬態をするエダシャクの幼虫
巧みな擬態で見つけることが難しいことも多いのですが、それを見抜いて見つけた時のワクワク感も大きい虫たちです!
イモムシとケムシの種類
ナミアゲハの幼虫
小学校で飼育をすることなどもあり、"最も知名度の高いイモムシ"ではないかと思います。
体の前方の「頭部っぽい部分にある黒い点」は目のように見えますが、実はこちらは実際の目ではありません。
これは天敵から身を守るために、「ヘビに擬態」していると言われています。
では実際の顔はというと、こちら。
伏せ気味の体勢でいることが多いので、本当の顔はなかなか見れなかったりします。
ちなみにこの姿は「終齢幼虫」と言って、さなぎ直前の姿です。
幼虫初期の頃は白黒の姿をしており、こちらは「鳥の糞」に擬態していると言われています。
このナミアゲハのように、同じ幼虫の段階の中でも、姿が大きく変わるものもいるのです。
アカボシゴマダラの幼虫
つぶらな瞳とちっちゃな口を持つ、ゆるキャラなイモムシです。
アカボシゴマダラが属するゴマダラチョウの仲間の幼虫は、マスコットのような見た目で、そのかわいらしさから本が出版されていたりする人気のイモムシです。
イモムシたちには、このような愛らしい姿のものもたくさんいるのです。
ルリタテハの幼虫
「イモムシとケムシの中間型」のものもいます。
トゲトゲした部分は毛じゃなくてトゲなので、ケムシとはちょっと違うのですね。
いかにも毒々しい姿ですが、ルリタテハには毒はありません。
この姿も天敵から身を守るための「擬態」なのだと思われます。
ちなみに成虫になると、青い模様のはねを持つ美しいチョウになります。
ルリタテハ 成虫
ルリタテハが属するタテハチョウには、このように幼虫時代はトゲトゲ、成虫になると美しい姿になるパターンの種が多くいます。
このように、幼虫の姿と成虫の姿のギャップも、面白いのです!
シャクガの幼虫
シャクガという蛾の幼虫には、「擬態名人」のイモムシが多いです。
イモムシは空を飛ぶためのはねがないため、擬態を使って身を守っていることが多い。
中でもシャクガは"木の枝"に巧みに擬態しているものが多く、木の枝に紛れて静止していると見つけるのは困難です。
そのような彼らを見つけ出すワクワク感も、イモムシの魅力の1つです。
ヒトリガの幼虫
ヒトリガの幼虫は、その熊のようにモサモサした姿から、「熊毛虫(クマケムシ)」と呼ばれます。
いかにも危険そうですが、実は彼らには毒はありません。
この姿も、天敵から身を守るのに役立っているのでしょう。
ちなみに、その姿に似合わず動きは割と俊敏で、体をしならせてかなり高速に移動します。
また、ヒトリガの成虫の姿は幼虫時代に反してシンプルな姿のものが多いのも面白いです。
スジモンヒトリ
イラガの幼虫
イラガの幼虫は、非常にカラフルで鮮やかな姿を持つものが多いです。
とっても綺麗なのですが、イラガの幼虫をむやみに触ったりしてはいけません。
実はイラガの幼虫は、「毒棘(どくきょく)」と呼ばれるトゲを持っており、刺されると電気が走るような激しい痛みに襲われます。
その特徴から、「電気虫」という異名を持つケムシなのです。
その鮮やかな姿は、天敵に毒があることを知らせる「警告色」なのだと思われます。
ちなみに成虫になると、随分とすっきりした姿になり、毒もなくなります。
■ 成虫
「イモムシ・ケムシたちが身を守る方法」に注目してみるのも、面白いと思います。
ハバチの幼虫
こちらはハバチというハチの幼虫であり、イモムシの定義からは外れる幼虫です。
ハバチの幼虫は、イモムシによく似た姿をしています。
イモムシたちとは腹脚という、脚のような器官がたくさんあるのが違います。
また、つぶらな瞳(単眼)がかわいらしいです。
イモムシではないですが、こちらも魅力的な虫なので、出会ったらぜひイモムシとの違いを観察してみてください!
オススメのイモムシ図鑑
「もっと色んなイモムシを見たい!」という方のために、オススメのイモムシ図鑑をご紹介します。
■ イモムシハンドブック
全3巻あり、全て揃えると600種以上のイモムシ・ケムシの姿を見ることができます。
幼虫を取り扱っている図鑑は少なかったりあっても高かったりするので、ライトに入手できるこのハンドブックはありがたいです。
■ 小学館の図鑑NEO イモムシとケムシ
子供向けだと思って侮ることなかれ。
中身はめちゃめちゃコアな内容になっています。
他の幼虫図鑑では大型の種のものが多いですが、こちらでは小型の蛾の幼虫も多く掲載されています。
イモムシとケムシと同じ分類に属する虫たち
イモムシとケムシはチョウ目に属する虫。同じ分類の虫たちを以下で紹介しています。
[チョウ目]
おわりに:イモムシ・ケムシをもっと楽しもう!
イモムシ・ケムシたちには、まだまだ紹介しきれないくらいたくさんの仲間がいます。
身近な場所にもたくさんのイモムシ・ケムシたちが暮らしているので、ぜひ観察してみてください!
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