ネイチャーエンジニア いきものブログ

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寄生バチは実はきれいな虫たち。寄生という恐るべき生存戦略の凄さ

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サトセナガアナバチ エメラルドゴキブリバチ

今回の主役は、「寄生バチ」。

 

え?寄生って、なんだか怖い言葉だなぁ…。

 

確かに、言葉には怖いイメージを持つ方も多いかもしれません。

 

しかしあまりメジャーでないので、一般にはあまり知られていないハチが多いです。

 

ところが、この寄生バチのことをよく知ると、実はとても個性的で面白いものが多いのです。

 

僕はネイチャーエンジニアの亀田です。

 

年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。 

 

そんな虫好きの僕が、寄生バチの種類と魅力を紹介します。

 

 

寄生バチとは? 

寄生バチを含むハチたちは、ハチ目というグループに属する虫です。

 

寄生バチは子供を宿主に育ててもらうハチ

寄生バチとは、

 

寄生の対象(=宿主)に卵を産み付け、孵化した幼虫が宿主の体を食べて成長する

※宿主は動物だけでなく、植物の場合もある

 

ような生態を持つハチのこと。

  

チョウ類の幼虫は、よく宿主にされます。

 

例えば、アゲハヒメバチという寄生バチ。

 

アゲハヒメバチは、アゲハチョウの幼虫に卵を産み付けます

 

アゲハチョウの体内で孵化したヒメバチの幼虫は、アゲハチョウを殺さない程度に体を食べて成長していきます。

 

そしてアゲハチョウがさなぎになると、ヒメバチたちは羽化。

 

さなぎの体を突き破って外に出て行きます。

 

虫探しをしていると、以下のようなものを見たら、寄生バチのしわざですね。

  • 繭(まゆ)がたくさん付いたチョウの幼虫
  • 穴が空いたさなぎ

 

チョウの幼虫が寄生される確率はかなり高いと思われます。

 

お、恐ろしいハチだ…。

 

と思うかもしれません。

 

でも、これは動物が生き残っていくために必死で考えた「生存戦略」なんです。

 

寄生をするには、ハチもリスクを取る必要がある 

寄生することって、寄生する側が自由自在に操る絶対的支配者のようなイメージがありますが、結構リスキーな行動なんですよ。

 

例を2つあげます。

 

(例1)

 

1つ目は、宿主自体が他の捕食者に食べられてしまうかもしれないこと。

 

宿主のアゲハチョウの幼虫自体が鳥に食べられたら、寄生したハチたちは全滅です。

 

寄生バチの話ではないですが、ハリガネムシという虫はカマキリに寄生します。

 

ハリガネムシは他の捕食者に食べられないように、宿主のカマキリを操って安全な場所に移動させてから体外に脱出します。

 

(例2)

 

2つめは、幼虫から必要な栄養が供給されないかもしれないこと。

 

幼虫がえさを探せないかもしれないですし、別のハチがさらに卵を産み付けて栄養の取り合いになるかもしれません。

 

実際に、後から産み付けられた卵を食べてしまうものもいます。

 

また、先に孵化した幼虫が同タイミングで産み付けられた卵(つまり兄弟)を食べてしまう種もいるのです。

 

「あれ?なんだかもっとおぞましい話に…」

 

と思ったかもしれません。

 

でも言いたいことは、「寄生したからラクチン♪」ではなく、寄生者もそれだけ必死にならないと生き残れないということなのです。

 

なぜなら、宿主に依存することによって、宿主のリスクがそのまま寄生者にも降りかかるのです。

 

凄まじい生活を送る寄生バチたちですが、そんな生態に似合わず、とても美しかったり、姿も大変ユニークなものが多いです。

 

寄生バチの仲間紹介

キンケハラナガバチ

キンケハラナガバチ

ツチバチというグループの仲間。

 

宿主はコガネムシです。

 

なので、地面の低い位置を飛んでいることが多いです。

 

こちらは花にもよく集まるハチであり、以下の記事でも紹介しています。

 

サトセナガアナバチ

サトセナガアナバチ エメラルドゴキブリバチ

エメラルド色に輝く、とっても美しいセナガアナバチ属というグループに属するハチです!

 

海外にいる同じセナガアナバチの一種は、その姿からこう呼ばれます。

 

エメラルドゴキブリバチ

 

え?ゴキブリ?

 

なんだか今回は驚かすことばかり言っている気がしますが、この寄生バチの宿主はなんとゴキブリなのです。

 

このハチは毒を持っており、その毒を使ってゴキブリをコントロールします。

 

ゴキブリは毒に脳をおかされ、このハチの巣に誘導されて幼虫に食べられます。

 

すごく残酷なハチだな」と思うかもしれませんが、ゴキブリの方が体ははるかに大きいですからね。

 

どれだけの勇気を持って毒を注入しているのでしょう。

 

僕には、とても勇敢なハチであると感じます。

 

オナガバチの一種

オナガバチの一種

このハチは、「ヒメバチ」というグループの仲間。

 

長ーい尻尾は「産卵管」と呼ばれていて、この管を通して卵を産み付けます。

 

ちなみに、このハチが何に寄生するかは不明。

 

なぜなら、「オナガバチの一種」までしかわからなかったため。

 

ヒメバチって研究が進んでいなくて識別が難しいんです

 

なので一般的な昆虫図鑑には、ヒメバチはほとんど登場しません。

 

というわけで、ヒメバチの仲間はなかなか名前の特定ができないのですが、どのハチも美しいんですよね。

 

産卵管が長くて細身で、スタイルがいいんですよ!

 

今後もっと研究が進んで、ヒメバチのことをもっと知れることに期待です!

 

アメバチモドキの一種

アメバチモドキの一種

こちらもヒメバチの仲間。

 

アメバチの名前の由来は、体がアメ色であることから。

 

こちらも識別は難しいのですが、この種類のヒメバチはガ類の幼虫に寄生することが多いようですね。

 

他のヒメバチと比べて産卵管が短いです。

 

色が目立つので、いたら野外でも見つけやすいですよ!

 

ウマノオバチ

ウマノオバチ

こちらは「コマユバチ」というグループに属します。

 

このハチの宿主は、なんと「シロスジカミキリ」や「クワガタムシ」。

 

クワガタとかも寄生されちゃうんですねー。

 

でも、数はとても少ないハチです。

 

このハチの面白いのは、その産卵管の長さ

 

こちらをどうぞ!

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体の3倍以上ある長さです。

 

この馬の尻尾のような産卵管が由来で、「ウマノオ」バチとなりました。

 

生態・姿ともにユニークな寄生バチです!

 

ハラアカマルセイボウ

ハラアカマルセイボウ

セイボウというグループに属します。

 

このグループの仲間は、輝く体を持っていて、とても美しいものが多いです。

 

このハラアカマルセイボウの宿主は、ツチスガリという別のグループのハチ。

 

ツチスガリは地面に穴を掘って巣を作ります。

 

ツチスガリが巣穴から出ていったところを狙って、このセイボウが巣穴に侵入し、卵を産み付けるのです。

 

上の写真も巣穴への侵入を狙っているところ。

 

体の大きさは7mmくらいと極小!

 

なので、よく注意しないと見つからないハチですが、出会えた時はとっても嬉しいものです。

 

寄生バチと同じ分類に属する虫たち

セグロアシナガバチ

寄生バチはハチ目に属する虫。同じ分類の虫たちを以下で紹介しています。

 

[ハチ目]

膜翅目(ハチ目)の昆虫まとめ|ハチやアリなど社会性を持つ昆虫がいる

 

おわりに:寄生バチは多様なハチたち!

寄生バチはちょっと怖いイメージですが、実は外見だけでなく生態も様々なとっても魅力的なハチたちです!

 

ちなみに今回紹介した寄生バチ以外にも、魅力的なハチはたくさんいるんですよ!

 

さらに色々なハチについて知りたければ、以下の図鑑がおすすめです。

 

名前や外見的特徴だけでなく、行動や生態についても紹介されています。

 

今回紹介した、ヒメバチセイボウの仲間も登場しますよ!

 

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■ モンシロチョウ

モンシロチョウ

 

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