僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
今日テレビ番組で、希少生物を捕まえる内容の放送がされていました。
普段から、希少生物について伝えている番組はあります。
その多くは、見ていて大変勉強になる内容のもので、生き物が好きな僕は夢中になって見ることも多いです。
しかし、今日の番組の内容にはいくつか疑問と不安を感じました。
その理由は、以下でした。
- 希少生物の価値=販売した時の値段という放送のされ方だった
- 希少生物への配慮について触れられていなかった
- 生物の販売への懸念・問題点を示していなかった
率直に言って、「お金を儲ける方法の1つに、希少生物を捕まえる方法があるよ」と言われている印象を受けました。
そして、生き物への配慮の知識を持たない視聴者が、
「希少生物=儲かる」から、希少種・固有種の生息地を荒らす
という行為をしてしまうのでは?
と思ったのです。
生物の価値は、ちょっと高価で販売できる程度の重みではありません。
その生物がいることは、文化的にも経済的にもとても大きな価値を持ちます。
この生物たちが絶滅してしまうと、結果的に人間たちもしっぺ返しを食らうことになります。
今回記事を書くことになったきっかけは今日の番組でしたが、僕は番組への批判をしたいわけではありません。
社会にはテレビに限らず、間違ったり偏った情報が溢れかえっています。
普段自然などの知識に触れない方が情報に踊らされるのを減らすために、少しでも正しい情報を伝えたいと思い、情報発信することにしました。
もしこの記事で書き足りていない情報などがあれば、コメントやメールでご連絡ください。
この記事への追記や別記事でさらに発信していきたいと思います。
絶滅すると何がいけないの?生物の本当の価値
希少生物を捕まえることで恐れられるのは「その生物の絶滅」ですよね。
では、なんで「絶滅」を恐れるのでしょうか?
それは、絶滅による「人間への損失」があるからです。
つまり、今いる生物によって人間は何か恩恵を受けているということです。
生態系のバランスが成り立っているからこそ、
- 鳥たちがフンをして種を巻いてくれるから、木の実をつける樹木が育つ
- ハチたちが花粉を運んでくれるから、いろんな草花ができる
- ハエやアリがいることで、動物の死骸が分解される
となり、人間にも恩恵をもたらしてくれます。(生態系サービスと言います)
例えば、上記のハエがいなくなったら動物の死骸が分解されず、菌が繁殖して未知の病気が流行したりするかもしれません。
環境省のサイトにもこう書いてあります。
大昔に繁栄した恐竜達のように、生きものはいったん絶滅してしまうと、二度と地球上に戻ることはありません。
また、それぞれの生きものは自然の中で密接につながっているので、ある生きものの絶滅によってバランスが崩れ、 自然環境全体に大きな影響を与えてしまうことになります。
実際に生態系のバランスが崩れて起こっている問題の代表格は「シカ問題」でしょう。
シカが増えて、農作物を食べたり、森林を裸地化したり、被害は深刻です。
日本で野生のオオカミが絶滅したことで天敵が減ったという影響は大きいはずです。
ただ難しいのは、生態系が複雑すぎて、事前にどういう影響があるのかが分からないこと。
オオカミの問題は、影響が出た後の今だからその存在の大切さが分かりました。
今それぞれの生物がいなくなったらどういう影響が出るのか、については予想できないのです。
でも、大きな影響が起きる可能性がある「かもしれない」。
でも、絶滅したらその生物は2度と戻らない。
失った後では取り戻せないのです。
だから、「今、生き物の多様性を守ること」が大切なのです。
番組では、希少生物や固有生物の価値を「販売価格」で示していました。
希少生物を絶滅するまで高額で販売し続ければ、1億円以上稼げるかもしれません。
でも、その生物が絶滅した結果、第2のシカ問題が起きるかもしれません。
そうなったら、1億円どころではない損失です。
シカ問題は関係のない遠い世界の話ではなく、ごく身近な問題です。
生き物の絶滅は些細なことでもひとごとでもなく、僕たち身近に影響のあることなのです。
生物販売の何が問題なの?ペット問題のリスク
希少生物を捕まえるほかに、「販売」という行為にも懸念があります。
それは、「外来種問題」というものに繋がる可能性があるからです。
外来種とは、人為的に持ち運びされた生物のことです。
原因には、以下のようなものがあります。
- ペットが逃げて外来種になった
- 材木などにくっ付いてきて外来種になった
詳しくはこちらの記事で説明しています。
昨今話題になっている、ヒアリ問題も外来種問題の1つです。
外来種問題が及ぼす影響は、ヒアリのように毒を持って直接的に人間に害のあるものもいます。
しかし、最終的な一番の影響は、先述した「生態系バランスの破壊」でしょう。
つまり、外来種が在来種(もともとその土地にいた種)の絶滅に加担してしまうのです。
その原因となるものはいくつかあります。
・外来種が在来種を直接食べる
・外来種が在来種と交雑してしまう
・外来種と在来種のえさが競合して、間接的に在来種を減らす
など
例えば、外来種のブラックバスやブルーギルが在来種を脅かす問題などは代表的な外来種問題です。
外来種は、荷物にくっついていたなど、注意していても運んでしまうことがあります。
ましてそれがペットとしての移動となると、とてもリスクの高いことです。
例えば、
- 不注意で逃してしまう
- 経済的に飼えなくなって放してしまう
- 災害が起きて逃げてしまう
- 子供が産まれて飼いきれずに意識の低い人へ譲渡してしまう
少し考えてもいろんな要因があります。
特に固有種は生息域が限定されている生物。
これらの生物は今まで外部の地域にいなかったわけですから、どういう影響があるか未知数なのです。
このように、生物の販売のリスクや影響は正しく伝えていかなくてはならないと思います。
希少生物を絶滅から守るためにできること
では、僕たちが希少生物を絶滅に向かわせないためにはどういったことができるのでしょうか?
残念ながら、根本的な対策は対応が難しい場合があります。
なぜなら、その生物が減っている原因は場合によるし、複数の原因が関連している場合があるからです。
ならばできることは、少なくとも今以上にその生物を減らさない行動をすることです。
例えば、こんなこと。
- 知識のない人に正しい情報を伝えてあげる
- 生物をむやみに傷付けない
- 生物の生息環境を破壊しない
- 飼いきれなくなるとわかっている生き物は、そもそも飼い始めない
- 飼いきれなくなったペット(虫や植物も)は放さずに、適切な場所に相談をする
今回僕が記事を書いているのは、一番上の行動ですね。
みんながこの情報を知っているだけで、生物の絶滅はずっと減らせるはずです。
みんなで生物を守っていきましょう。
おわりに
- 生物が絶滅することの問題点=生物の価値
- 生物販売の問題点=外来種の問題
- 僕たちが生物を絶滅から守るためにできること
をお伝えしました。
できるだけ論理的に伝わるように、経済面での話を多くしました。
でも、僕個人的には、人間にとって具体的なメリットがなくても、ただ生物が絶滅せずに生き残ってくれるだけでとても価値のあることだと思います。
少なくとも僕は、生き物がいるおかげで人生がとても豊かになっています。
生き物を観察するだけで楽しい・ワクワクする、こんなに良い気持ちにさせてくれる生き物たちを、未来も守っていきたいです。
今回残念なことがきっかけでこの記事を書くことになったわけですが、いろいろなことを考えさせてくれました。
僕の知識や力が生き物たちを守ることに繋がるのであれば、これからも行動をしていきたいと思います。
長文を読んでいただきありがとうございました。
少しでもお役に立てれば幸いです。