捕まえた虫を逃すのはダメだって聞いたけど…
虫を自然に返してあげるのって、どうしてダメなの?
こんな疑問にお答えします。
「外来種問題で話題になる生き物って、海外の生物のことでしょ?」
僕も以前、外来種とはアメリカザリガニやアカミミガメのような海外の生物のイメージを持っていました。
でも、外来種問題って意外にもっと身近な問題なのです。
例えば、カブトムシも外来種になりうることは知っていますか?
さらに外来種に対しては外来生物法という法律があって、これらを知らないと、そのつもりがなくても法を犯してしまうこともあります。
そういったリスク回避はもちろんのこと、身近な日本の身近な生き物たちを守る上でも知っておきたい知識なのです。
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
今回は、外来種の影響と問題点について紹介します。
外来種とは
外来種(外来生物)とは、他の地域にしか生息していない生物を、人間が外部から持ち込んだ生物のことを言います。
外来種というと、海外の生き物が対象と思う方もいるかもしれませんが、「国内の他の地域」から持ち込まれた生物も外来種になり得ます。
国内の他の地域から持ち込まれた外来種のことを、国内外来種と言います。
例えば、旅行先でクワガタを捕まえたとして、
・飼いきれなくなって近所の公園に放してしまった
といったことにより、そのクワガタは外来種となってしまいます。
外来種の影響と問題点
外来種が問題になる理由
では、なぜ外来種が問題になるのでしょう?
その理由は、以下のような不都合があるため。
・交雑などにより、在来種の遺伝子がかく乱される
・農作物を食べる、樹木を傷付けるなど、実害がある
外来種では、在来種が減るから〜など、在来種が主語になることが多いので、自然好きな人が愛情的な心でやっている印象を持っているかもしれません。
もちろん実際、日本の素晴らしい在来種を守りたいという意識でやっているところもあるでしょう。
しかし実はそれ以上に、人間にとっての損失を防ぎたい、という理由も大きいのです。
例えば今年、大阪の堺市で外来種のカミキリに懸賞金が掛けられました。
そのカミキリはサクラの木を食害する種であり、彼らが増えると町の桜が枯らされてしまう。
そうすると、花見の季節に観光客が減って、ひいては経済的な損失になります。
他にも、農作物や漁獲物が食べられたり、建物を壊されてしまうような被害があります。
これらの被害がばかにならないため、論理的に考えても外来種は防ぐ必要があるのです。
外来種による影響は事前に読みづらい
外来種による悪影響があることをお伝えしますが、外来種の恐ろしい点はもう1つあります。
それは、外来種が増えることによる影響が事前に読みにくいこと。
例えば、原産地ではそれほど存在感のなかった生き物が、天敵のいない場所に持ち運ばれたことで猛威を振るうことがあります。
日本の外来種で言うと、セイタカアワダチソウ。
セイタカアワダチソウ
今日本ではいたる地域で普通に見られるほど分布していますが、原産地のアメリカでは背丈ももっと低く、日本ほどの勢いはないそうです。
逆に日本の在来種のイタドリは、海外で猛威を振るい、大きな被害をもたらしています。
このように、環境が変わることでパワーアップする生物がいます。
なので、原産地の様子からだけでは判断できないことも多く、実際に広まって影響が出てその外来種のパワーに気付くことも。
これが複雑なバランスで成り立っている生態系の難しさ。
そのため、そもそも外来種を産み出さないことがもっとも大事なのです。
外来種と混同しがちな「環境変化」によって分布拡大する生物
また、環境変化などによって、自ら分布拡大をする生き物たちは外来種と混同されがちです。
紛らわしいポイントは、どちらも「もともとその場所には生息していなかった生き物」であること。
先述した通り、外来種とは人為的に移動させた生き物のこと。
そのため、生物が自ら移動して分布を広げた場合は外来種にはなりません。
近年は開発による環境変化や、地球温暖化などにより、分布を変化させている生物たちがいます。
特に温暖化などにより、南の生き物が北上していくケースが多いです。
そのパターンの一種がツマグロヒョウモン。
ツマグロヒョウモン
ツマグロヒョウモンは元々沖縄など南の島に生息していたチョウ。
ちなみに上記の写真は紺色の紋が目立つメスです。
今は分布が北上していて、関東でも普通に見られるようになっています。
このチョウはもともと関東にはいなかったわけですが、自ら分布を広げているので外来種ではありません。
外来種の例
アメリカザリガニ
名前の通り、アメリカ原産のザリガニ。
食用として導入された、外来種ウシガエルのえさとして、さらなる外来種のアメリカザリガニが持ち込まれました。
アメリカザリガニは、在来種であるメダカやヤゴ(トンボの幼虫)を食べたり、水草を切断するなどの悪影響があります。
さらに在来種のニホンザリガニを追いやることもあり、要注意外来生物に指定されています。
ワカケホンセイインコ
もともとスリランカやインドが原産のインコ。
ですが、ペットとして移入されたものが、かご抜け(逃げ出した)したと言われています。
今は東京の都市部の生活に適応して、普通に見られるようになっています。
影響はまだはっきり調査できていないようなのですが、桜の花を食べたりなどの被害があるようです。
アカボシゴマダラ
このチョウは本来奄美大島周辺に生息する、美しい南国のチョウ。
しかし、関東などで見られる彼らは人為的に放蝶された国内外来種です。
近似種のオオムラサキ(国蝶)やゴマダラチョウよりも多く見られるほど定着してしまいました。
今では特定外来生物に指定されたので、家に持ち帰るだけでも違法になってしまうので注意です。
カブトムシ
現在北海道で見られるカブトムシは、実は国内外来種。
もともとカブトムシは北海道には生息していませんでした。
しかし、本州から持ち込まれて野生化し、外来種として定着してしまいました。
外来種を増やさないために僕たちができること
生き物を飼育するのは大変
生き物を飼育するのはすごく大変なことです。
例えば、いわゆるミドリガメと言われるミシシッピアカミミガメ。
ミシシッピアカミミガメ
かつて縁日などで簡単に手に入れることができました。
しかし子供の頃は小さなカメでも、大人になると30cmものサイズになります。
さらに、寿命は30年と長生き。
長い間彼らを適切に飼う環境が整えるのはかなり難しい。
そのため、池や公園などに放した結果、代表的な外来種になってしまっているのが現状です。
飼育できる環境を整える。飼育するなら責任を持つ
生き物を飼育するときは、その生き物の寿命や飼育環境をちゃんと調べてから飼うことが大事。
それを整えた上で、もし飼育し始めたらなら、最後まで責任を持ちましょう。
責任を持つとは、その生き物が死ぬまで見届け、途中で逃がしたりしないこと。
もし飼うことができない状況になるなら、その時は基本的にその命を自分の手で終わらせなくてはなりません。
里子として引き取ってくれる組織もあるかもしれませんが、その組織にも引き取れる数に限界もあるし、そこに頼ることは責任を取るとは言えません。
もし仮に野外に放つようなことをした場合、そのペットにとってもツラい結末を迎えることになります。
野外に放たれたら、生き物にとっても外来種にとってもツラい
命を奪うのは可哀想だから、野外に逃がしてあげよう。
もしそうした場合、ペット側の立場で考えると、大変悲惨な状況になります。
外来種になるような生き物は、強くてたくましいイメージがありますが、実際外部から持ち運ばれて生きていけるものはほんの一握り。
なぜなら、野外に放たれる=危険な動物やライバルがたくさんいる無人島に、裸で放置されたようなもの。
さらに今までぬくぬくと育てられてきたわけですから、都市で生きてきた子供をいきなり戦場に突き放す行為に近いかもしれません。
ほとんどの場合、天敵のえさになるか、慣れない環境で病気になって死んでしまいます。
頑張って生き永らえたとしても、その後は外来種として人間たちに命を狙われる運命になります。
飼い慣らされた生物が見知らぬ土地に放たれることは、かなり残酷なことなのです。
おわりに:身近な自然環境を守るために、外来種について覚えておこう!
外来種問題とは、ごく身近な場所で起きていて、自分自身が関わることも十分にあり得る問題です。
身近な素晴らしい環境を守る為にも、外来種問題のことや、飼育に対する責任については覚えておきたいものですね。
僕は生物はなるべく本来の場所で自然な姿を楽しみたいと思っているので、自分たちの意識で守れることはしていきたいと思っています。
あなたがもし生物を飼育する機会があれば、ぜひ今回お伝えしたことを意識していただけると嬉しいです。
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