ネイチャーエンジニア いきものブログ

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冬に活動する蛾!メスははねが退化?フユシャクの種類と魅力

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> チョウ目 > シャクガ科 > フユシャク

ウスバフユシャク

冬なのに蛾がいたよ!
冬に活動する蛾なんて、いるの?

こんな疑問にお答えします。


冬の季節、ほとんどの昆虫は活発な活動を控え、土の中や樹洞などに隠れて過ごします。


しかし、中には"冬に活動する"という変わり者の虫たちがいます。


その変わり者たちの1つが「フユシャク」。


フユシャクは蛾の特定のグループの総称を指し、活動時期のほかにも個性的な特徴を持つ虫たち。


例えば、オスとメスで全く異なる姿を持つ上にメスははねが退化しているなど、実に面白い虫たちなのです!


僕はネイチャーエンジニアの亀田です。


年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。


そんな虫好きの僕が、フユシャクの特徴と魅力を紹介します。




 

フユシャクとは

フユシャクは「チョウ目シャクガ科」というグループに属する昆虫です。


シャクガ科には「フユシャク亜科」というグループがあるのですが、フユシャク亜科=フユシャク、というわけではありません。


フユシャク」とは総称であり、"晩秋〜早春にかけて活動するシャクガ科の仲間たち"のことを指します。


このフユシャクには、冬に活動する以外にも面白い特徴があります。

・オスとメスで姿が全く異なる
・メスははねが退化
・成虫はえさをとらないことが多い


実にユニークな特徴ばかりですよね。


これらの面白い特徴について、もう少し詳しく紹介していきます。

フユシャクの特徴と魅力

僕が考える、フユシャクの主な魅力は以下の3つ。

1. 冬に活動する蛾たち
2. オスとメスで姿が違う【メスははねが退化】
3. メスのコーリング


1. 冬に活動する蛾たち

フユシャクは、ほとんどの昆虫たちが活動しない「」を活動時期に選んだ、変わり者の蛾たちです。


一方で僕のようにいきもの観察する側にとっては、冬でも出会える嬉しい虫たちです。


フユシャク観察は、冬の楽しい昆虫観察の1つ
クロバネフユシャク


それにしても、なぜフユシャクたちは冬に活動するのでしょうか。


その理由は、あえて他の昆虫がいない時期に活動することで「天敵や競合が少ない」というメリットがあるからだと考えられています。


冬は肉食の昆虫や爬虫類などは冬眠しており、天敵もライバルもいない季節なのです。


しかし一方で、冬に昆虫たちが活動しないことにも理由があります。


ほとんどの昆虫たちは、外気温によって体温が変化する「外温性」という性質を持ちます。


外温性の動物にとって、冬は外気温が低いために動きが鈍くなってしまい、活動に向かない季節なのです。


もちろんフユシャクたちにとっても冬に活動することは簡単ではなく、様々な工夫を凝らしています。


それらの工夫こそが、フユシャクたちのユニークな特徴を生み出しているとも言えるのです!(後述します)


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2. オスとメスで姿が違う【メスははねが退化】

フユシャクには、「オスとメスで姿が全然違う」という特徴があります。


オスは一般的にイメージされる蛾の姿をしているのですが、メスのはねは退化しているのです。


その姿が、こちら。


クロスジフユエダシャク オスとメス
クロスジフユエダシャク


メスの姿は、もはや蛾とは思えない姿ですよね。


僕も初めてフユシャクのメスを見たときは、驚くとともに、他の虫とは違う奇妙な姿にワクワクしたものです。


ちなみに上のクロスジフユエダシャクのメスでは、よく見ると小さなはねの跡が残っています。


この、はねの退化具合は種ごとに違います


もう少し大きく残っている場合もあれば、完全になくなってしまっているものもいます。


それにしても、はねがあればより広い範囲を移動でき、パートナーを見つけやすくなるはずです。


なのになぜ、フユシャクのメスははねを持たないのでしょうか。


それは、「彼らが冬に活動すること」と関連しています。


はねをつかって空を飛ぶのには多くのエネルギーが必要であり、えさが乏しい冬はそれらのエネルギーを得づらい時期なのです。


そもそもフユシャクが成虫になると餌は取らないのですが、それは餌が体内にあることが凍結の原因になり得るという理由もあるようです。


さらにはねを持たない理由はもう1つあり、はねを持つと表面積が広くなり、熱を発散してしまうというデメリットもあるためです。


これらから、フユシャクのメスは「はねを捨てる」という決断をしたのです。

3. メスのコーリング

ところで、それでははねを持たない彼女らは、どうやってオスと出会うのでしょうか。


なんとここにも、面白い工夫が凝らされています。


それが「コーリング」。


実はフユシャクのメスは「フェロモン」を出してオスを呼び寄せます。


オスがメスに飛んで近くに来ると、このフェロモンを嗅ぎ分けてメスのもとにやってくるのですね。


メスは木の上にのぼり、コーリングをするのです。


ところが木と間違えて擬木柵の上などに登っていることがあり、むしろ柵の上の方がメスを見つけやすかったりします。


柵にいたフユシャクのメス
チャバネフユエダシャク メス


以上のような、「冬に生きるための様々な工夫」こそが、フユシャクたちの魅力なのです!




フユシャクの種類

クロスジフユエダシャク

クロスジフユエダシャク オス

クロスジフユエダシャク メス

フユシャクの仲間の中では少し早めに出現し、晩秋の時期に見られる。



チャバネフユエダシャク

チャバネフユエダシャク オス

チャバネフユエダシャク メス

メスは大きく、白黒の体色が実にユニーク。


その姿から、通称「ホルスタイン」と呼ばれる。



クロバネフユシャク

クロバネフユシャク

シロオビフユシャクに似ているが、はねの黒みが強く、大きさも少し小さい。


ウスバフユシャク

ウスバフユシャク

1〜2月くらいの時期は出会う機会が多く、最もよく見られるフユシャク。

クロテンフユシャク

クロテンフユシャク

名前の通り黒い点が目立つのと、はねの外側の線がくの字に曲がる。

フユシャクと同じ分類に属する虫たち

ニトベエダシャク幼虫

フユシャクはチョウ目シャクガ科に属する虫。同じ分類の虫たちを以下で紹介しています。


[チョウ目]
鱗翅目(チョウ目)の昆虫まとめ|はねに鱗粉を持つ虫たち

[シャクガ科]
シャクトリムシ(尺取虫)の成虫ってどんな姿の虫?シャクガの種類と魅力


おわりに:フユシャクのように春や夏以外に活動する虫たちを観察しよう!

生き物には、実に多様な生態を持つものがいます。


生息する環境や活動する時期によって、実に様々な工夫を凝らしているので、生き物ごとに気付きや学びがあるものです。


今回紹介したフユシャクは冬に活動する生き物ならではの特徴をたくさん持つ虫なので、ぜひ探して観察してみてください!


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