まつばらりつこさんへのインタビュー「ハーブを学んだことで愛犬との暮らしがもっと楽しくなった」
今の活動を始めたきっかけ【愛犬の健康トラブル解消のためにハーブ(植物療法)を始め、伝える価値がある!と思った】
今の活動は、どういった経緯で始められたんですか?
最初はウチの犬(ぽち ※)のためにハーブの勉強を始めたんです。
※ ぽち=今年17歳8ヶ月で亡くなった、まつばらさんの愛犬(柴犬)の名前。「ぽちの和」の名前もぽちが由来です。
まつばらさんの愛犬「ぽち」
私はもともとコーヒー党だったので、ハーブティーはほとんど飲んだことがありませんでした(笑)
そうだったのですね(笑)
ぽちが健康トラブルの多い子だったので、ちょっと何かあると即病院に連れて行って薬をもらう、を繰り返していました。
でも病院や薬以外で、「普段の生活の中で何か私にできることはないのか」と思ったんです。
それがホリスティックケア(※)との出会いでした。
※ ホリスティックケアとは、心・身体・環境などに気を配ることで、動物が本来持っている自然治癒力を高めること
最初はドッグマッサージ、次にハーブと学んで行ったのですが、ハーブを実践していくうちに気が付けばぽちのいろんなトラブルが解消していったんです。
友人のワンちゃんにも勧めてみると、その子たちにも良い変化があって、「これは私も飲まなきゃ勿体ないな」と思ったんです。
それから少しずつ私自身もハーブティーを飲むようになり、花粉症が改善されたり、なんとなく不安定な心や身体の状態もセルフケアで乗り切れるようになったりと、変化を実感するようになりました。
そんな経験をきっかけに、犬のハーブに続いて人のハーブの勉強をして、「ぽちの和」を始めました。
現在の主な活動【ハーブは天然のサプリメント】
現在の活動内容を詳しく聞かせてください。
ぽちの和の一番大きな柱は、愛犬のために家庭でできる、ハーブを用いた"犬の植物療法講座"です。
普段の犬の体調--例えば、粘膜便や下痢・便秘などうんちの状態やおしっこの匂い、嘔吐、目やに、耳の傾き、発作や咳、お散歩の時の歩き方など、普段の生活の中で不調を知らせてくれるサインがいっぱいあります。
それらの解消や健康維持・増進にハーブを役立てていただこうというのが植物療法(フィトセラピー)です。
日々の暮らしの中で、犬だけでなく人だけでもなく、愛犬と一緒に、ハーブを楽しみながら役立ててもらいただきたいので、それをお伝えするのが私のメインの仕事です。
ただ、普段狂犬病の予防接種やワクチン接種など以外に動物病院に行かない元気なワンちゃんと暮らしている方には、「ケア」というジャンルはなかなか興味を持っていただけなかったりもします。
また何かお悩みがあったり、「ケア」に興味があったとしても"犬"と"ハーブ"はなかなか繋がらないようです。
そのため、クラフトやコスメや愛犬と一緒に食べられるオヤツを作るなど、ハーブを使って楽しんで役立ててもらうワークショップなども開催して、ハーブへの入り口を見つけてもらうえるように工夫しています。
愛犬のホームケアに役立つハーブ
ハーブの様々な活用については、後ほど紹介します
もうひとつのメインはハーブのカウンセリングですね。
ぽちの和まで足を運べない方や、老犬を置いて講座に通う事はできない方、健康に関する悩みや、飼い主としてできることはないかなと探してこられた方のご相談をお受けてしています。
「今はウチのコ元気だから大丈夫」「病気になったら病院に行くから大丈夫」という飼い主さんがとんどだと思うのですが、それでも、小さな「あれっ?」や「不安の種」を経験したことはあると思うんです。
ちょっと様子を見てみようかな?と思う時にもハーブでできることがあるので、愛犬が元気なうちから備えておけるともっと良いと思います。
「予防」ということですかね?
そうです。
人間でも最近は予防医学が重視されて来ていますが、犬の世界でも同じだと思いますね。
予防の手法ってハーブ以外にもあるのかなと思うんですけれども、その中でハーブを選んだのはなぜなんですか?
予防を考えると、医食同源とも言われるように一番の基本は毎日の食事だと思うんですよね。
それにハーブをプラスしてもらう訳ですが、ハーブは様々な抗酸化物質やビタミン、ミネラル、そして医薬品の元となる成分を持っていたりもします。
適切なタイミングで適切なハーブを選んで与える事で、もう一歩進んだケアができるんです。
それに自然のものなので、犬の体への負担も少なくてすみます。
実際、ぽちもハーブを与えていくうちに、色々とあったトラブルがいつの間にかなくなっていって、動物病院に行く回数が明らかに減りました。
それは、ハーブを使っていく事でぽちの身体が変わったというのもあるでしょうし、ハーブを知ることで私自身がトラブルへの対処ができるようになったというのも大きいです。
ぽちちゃんには、具体的にどんな変化があったんですか?
ぽちはアレルギー持ちだったので、一番悩ましかったのは皮膚トラブルでした。
皮膚が赤くなったら即病院。
また、フードジプシー(※)もやっていましたし、やれ発疹だ、外耳炎だとインターネットであれこれ探して、グッズやサプリメントを買って、試して、を繰り返してました。
※フードジプシー:理想のペットフードをずっと追い求め続けてしまうこと。アレルギーのある犬の場合、皮膚トラブルを起こさないフードを探し求めることも
でもそれがハーブを使い始めて徐々に緩和していき、気が付けばグッズやサプリメントを探すこともなくなりました。
以前は何度も繰り返していたおしっこや皮膚のトラブルも徐々に回数が減って行ったし、対症療法も身に付いていきました。
実はぽちの右前足には、おチビの時に入院し、点滴の針跡から起こした感染症が原因でずっと消えないハゲがあったんですけど、あの頃ハーブという引き出しを持っていたら、このハゲは作らずにすんだかもしれないなと思います。
もちろん動物病院での治療や薬が必要な場合もありますが、ハーブは医薬品の副作用を軽減することもできるので、逆に薬が必要な時に躊躇しなくて済むようにもなりました。
アレルギーわんこの飼い主は、どうしても薬に過敏になってしまうんですが、小さな不調のうちに対処できれば、薬に頼りすぎずに済むようになります。
でもそのためには犬をちゃんと見ることが大事で、それってホリスティックの基本なんです。
気が付かなければ先手も打てない訳ですから。
日々の食生活・積み重ねと、愛犬の観察が大事なんですね。
人でも「病気」ってほどじゃないんだけど、気になることが出てくると、サプリメントを探す方が多いと思うんですよ。
目がかすむ、最近物忘れが多い、頭痛持ち、ちょっと血糖値が高い、とか。
そんな時にも、サプリメント以前にハーブという選択肢があることを知ってもらえるようになると良いなと思っています。
まつばらさんは、人に対するハーブに関しても活動されていますよね。
はい。
ぽちの和はJAMHA(特定非営利活動法人 日本メディカルハーブ協会)の認定教室として、犬と暮らしていない方にも、メディカルハーブをお伝えしています。
私のようにもともとハーブティーがあんまり好きではなかった方が、犬の植物療法を受講されているうちに「このハーブ、私(家族)にも良いんじゃないかしら?」となる場合が結構多いんですよ。
逆に、「もともとハーブティーが好きで飲んでいたけど、ハーブって単なる嗜好品だと思ってました!」という方も。
そこからもっと詳しく、とJAMHAの講座に興味を持っていただくこともありますね。
自分自身にハーブを試した人は、「犬にも使ってみたい」となることもありそうですね。
確かに。
ただ、犬の場合とヒトの場合では、取り入れ方が若干違ったりもしますので、「犬の植物療法」を学んでいただいてからの方が、ワンちゃんには安心して取り入れられると思いますよ。
犬のハーブも人のハーブも元は同じです。
でもハーブってすごくたくさんの種類があって、中には体の小さい犬達にはあんまり使いたくないものもあったりもします。
犬の植物療法でお伝えしているハーブは、犬の代謝も考えつつなるべく作用も穏やかで体に優しいハーブが多いんです。
ベーシックな10種類ほどのハーブを知っていただけば、日常的なトラブルはほぼ解消できます。
なるほど、犬の方が覚えるハーブが少ないから、学びやすいのですね!
わんちゃんと暮らしている方がまっさらな状態からハーブを始めるならば、まずは犬の方から入って「自分にも使えるかも」という方向の方がとっつきやすいかもしれません。
少なくとも私はそうでした。
介護が必要になっても犬との生活を楽しんでほしい
今の活動のポリシーや重視していることなどありますか?
"知るクスリ"と言う言葉がありますが、今よりもっと犬との暮らしを楽しむ為に「知っておくと良いなぁ」ということはたくさんあって、ハーブもまさにそのひとつだと思います。
知りたい・学びたいと思って来られる飼い主さんは全力でサポートしたいと思っています。
私自身ぽちは初めて迎えた犬だったので、正直、かなりダメダメな飼い主でした。
何かあったら即動物病院だったのが、ハーブという引き出しができたことで、自分で対処できることも増えたし、結果的にぽちのトラブルも減ったし、薬のお世話になる回数も減りました。
不安や、「ダメだなぁ私」と思うことが減っていくにつれ、ぽちとの暮らしが以前よりずっと楽しくなったんです。
まつばらさん自身が前向きになることによって、ぽちちゃんとの生活もポジティブで楽しいものに変化したんですね!
はい。
あと、ぽちは今年17歳8ヶ月で旅立ってしまったのですが、シニアのワンちゃんのケアを伝えていきたいと思っています。
介護ってラクではないと思うんですよ。
「いつまで…」「どこまで…」と先が見えないし、かと言って先が見えてしまうとすごく悲しいし辛い。
老化の階段はものすごく急で、短いスパンでできなくなることが増えていったり、体の状態も変わっていきます。
若い頃には予測できなかったような事も多々あります。
でも、その時その時で飼い主がやってあげられること・工夫してあげられることはいっぱいあります。
まつばらさんのワンちゃんの時は、どのように対応されたんですか?
主に「食事・衛生面・心身両面のサポート」にハーブを活用しました。
ぽちは14歳を前に慢性腎臓病と診断され、一旦は薬が処方されたのですがひどい下痢を繰り返すようになってしまいました。
薬を変えるという選択もありましたが、獣医さんと相談の上、薬をやめて「手作り療法食」と「ハーブ」でケアをしてきました。
その後も、加齢とともに免疫が落ちて行くにつれ、泌尿器や外耳炎などのトラブルが増えましたが、こちらもハーブで対策していきました。
シニア犬はシャンプーが負担になってきます。
最後の2年は、シャンプーは一切しないでハーブティーで体を拭くことで清潔を維持できました。
尿漏れや粗相もありましたが、尿臭対策にもハーブは役立つんですよ。
シニアは下痢から体調をガタガタっと崩してしまう事が多いので、うんちの状態は常にチェックして、早目早目にハーブで対策していました。
耳が遠くなったり、目が見えにくくなったり、身体が思うように動かせなくなったり…と、シニアわんこの心には不安があると思うんです。
ハーブでの対応ができたことによって、不安を軽減することにも役立ったと思います。
またハーブ以外では、17歳を越えた頃から立ち上がりがちょっと困難になってきたので介助ベスト(※)を作ったりもしました。
わんちゃんの介助ベスト
※介助ベストは、ぽちの和でオーダーメイドで作っていただくことができるとのことです
獣医さんに頼るだけでなく、飼い主にもできることは本当にたくさんあるのですね。
はい。
むしろそっちの方が多いし、飼い主にしかできないことこそが大事だったりします。
うんちやおしっこの粗相もそうですが、そういう変化をびっくりしたり、悲しんだりするのではなく、「そういうこともあるよね~」とクスっと顏を見合わせて笑いながら介護に向き合えると良いなと思います。
私自身「段々とお別れの時が近付いているんだな」という思いはありましたけど、シニアのこと、ハーブのこと、介護の事を学んでいたからこそ、介護期へ向けての準備や工夫も楽しみながらできたように思います。
年をとるということは悲しいことではなくて、"介護をさせてもらえる年齢まで一緒に暮らせた"ということですから、本当に幸せなことだと思います。
今もし犬の介護に悩んでいる方がいらしたら、飼い主ができることをちゃんとお伝えしつつ、飼い主さんの心に寄り添っていく必要があると思っています。
そして必要とする情報・人を橋渡しする、そういうお手伝いもしていきたいです。
愛犬が介護の状態になっても楽しく暮らす。そんな暮らしに向けてのお手伝い、すごく素敵だと思います。
現在の活動をする上での苦労【獣医さんの理解も必要】
今の活動を始めるまで、どういった勉強をされたんですか?
犬のハーブをお伝えするには、ハーブだけ知っておけば良い訳ではなく、犬のことや体のことも知っておかないとできません。
動物歯科医学や、犬のケアはもちろん、人のケアで犬に応用できそうなものなどもいろいろと。
そして、ハーブだけで全部事足りるという訳ではなく、ホームケアにはマッサージやごはんも必要だと思っていますので、そのあたりも学びました。
まだまだ多くはないですが、治療や治療の補助としてハーブや鍼灸・漢方などを使う獣医さんもおられるので、そういう獣医さんたちの講座や勉強会にも参加しています。
ハーブだけでなく何でもそうですが、これで終わり!はなくて、勉強はこれからもずっと続きますね。
今の活動で苦労されていることなどありますか?
例えば、病気で治療中のワンちゃんでハーブを使ってみたいとなった時は、基本的には飼い主さんに獣医さんの了解を得るようお願いをしています。
飼い主さんを介して、獣医さんの治療方針やお薬のことなどを聞きながらハーブの取り入れ方を考えていくのですが、ハーブに詳しい獣医さんはほとんどいらっしゃらないので、ハーブの使用を拒否されてしまうこともあります。
獣医さんの治療方針や使っているお薬を知らないと、こちらも「ハーブを使って良いタイミングかどうなのか?」「使用を控えるべきハーブなのか?」が分からなかったりするので、協力していただける状態を作るという点で苦労することもあります。
獣医さんの理解や飼い主さんとの信頼関係が大事になるのですね。
そうですね。
ホームケアで行う植物療法は獣医療と二者択一できるものではなく、獣医療とハーブは両輪だと思っています。
それぞれに得意不得意な分野があって、だからこそ相互に補って行けるものだと思います。
なので、講座などではそれを意識してお伝えするようにしています。
ハーブはいろんなことができるけど、ハーブだけで全部解決する訳ではないし、ハーブに固執して他の治療を受ける機会を奪ってしまってはいけないと考えています。
ハーブって楽しい!【ハーブでできる色々なこと】
私はハーブを始めて、「ハーブって楽しい!」と思いました。
犬のハーブから勉強された方って、ハーブの楽しみ方を知らない方も多いんですよ。
なのでそんな方達にワークショップにご参加いただくと、「こんな使い方があるんですね」と驚かれることもあります。
楽しくて、そのうえちゃんと働いてもくれる!ハーブってすごいヤツなんです(笑)
僕も取材した時にハーブの活用についていくつか体験させていただき、ハーブが色々な場面で活躍することを知りました!
■ ハーブティー
ハーブという言葉で最もイメージしやすいものが、ハーブティーだと思います。
僕が取材中に飲ませていただいた種類は、
・ダンデライオン(セイヨウタンポポ)
・ローズヒップ
・ジャーマンカモミール
・マルベリー(桑)
・ホーソン
あたり。
ハーブティーって、セレブなイメージが強かったんですが、意外にもタンポポなど、身近な植物がたくさんあるんです。
さらに桑(クワ)など、国外に生息する植物だけでなく、日本の植物も使われているんですね。
※クワやタンポポの魅力や特徴については以下の記事をどうぞ。
味や香りも植物ごとに様々で、それぞれ全然違いました。
例えばローストタイプのマルベリーはほうじ茶みたいな味と香りで、僕のハーブティーのイメージとは全然違くてビックリでした。
よく知っている植物が使われていて親近感が湧いたし、それぞれに働きがあることを知れて勉強になりました。
それにハーブごとに様々な味があって、とても楽しかったです!
■ 芳香蒸留水(ハーブウォーター)
ハーブを蒸留してできる芳香蒸留水(ハーブウォーター)は、化粧水やリネンウォーター、ルームフレグランス、そしてワンちゃんのケアにも使えるそうですよ。
僕は取材時のお土産に、レモンマートルを蒸留したハーブウォーターをいただいたのですが、優しく爽やかな香りで、とっても気に入りました。
ちなみにハーブウォーターは市販されているそうですが、蒸留器があれば自宅でも作れるそうです。
■ チンキ剤(ティンクチャー)
ティンクチャーは、ハーブの有効成分をアルコールなどで抽出したもの。
薄めて化粧水として用いたり、入浴剤などにも使えるそうです。
また使用するアルコールによっては、飲用もできるそうです。