なんだか美味しそうな木の実!
これってどんな木?
こんな疑問にお答えします。
上の写真の実をつける樹木はクワ(桑)。
クワは昔ながらの里山生活に大きく関連のある、日本人にとって馴染み深い樹木です。
現在は里山生活が主流だった昔と比べると少し縁遠くなってしまったかもしれませんが、今でも日常で活躍している植物です。
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な動植物に出会ってきました。
そんな生き物好きの僕が、クワの特徴と魅力を紹介します。
クワ(桑)は2種類ある
なお、代表的なクワには大きく以下の2種類があります。
・中国原産の栽培種である「マグワ」
マグワとヤマグワは
・ヤマグワの方が果実から出ている柱頭が長い
・マグワの方が葉先が短い
などで見分けるようですが、個体差もあり見分けは難しいようです。
僕も見分けに自信ありませんので、この記事ではクワと表現します。
クワは「蚕(カイコ)」の食草になる
クワは里山の環境では昔から身近で重要な植物。
というのも、かつて里山では養蚕(ようさん)業が盛んでした。
クワの葉は蚕(カイコ)のエサになる葉(食草・食樹と言います)であり、養蚕農家にとっては大事な樹木だったのです。
ちなみにカイコの育成に使われていたのはマグワ。
なので、養蚕業の盛んだった場所に生えているクワはマグワが多いかもしれません。
かつて多くの農家がカイコを育てていましたが、その目的はカイコが作った繭(まゆ)から絹を得るため。
この絹が農家の大事な収入源になったため、カイコは「おカイコ様」と呼ばれるほどにありがたがられる存在でした。
またカイコは「カイコガ」と言うガの仲間ですが、家畜化された虫で人の力なしでは生きていけません。
そのため野生下では見られず、実は僕もカイコガを見たことはありません。
しかしその代わりに、カイコガにはその祖先とも言える「クワコ」というガがいます。
クワコの幼虫
頭が大きくて、なんとも不思議な姿の幼虫です。
クワコはカイコの原種であり、カイコと同じくクワを食草とします。
上の写真も、もちろんクワの葉にいるところです。
こんな不思議で面白い虫に出会えるのも、クワの魅力ですね!
クワの花は目立たない
クワの花は1つ1つは小さく目立ちません。
このように小さな花が房状に垂れ下がっているようなものは、風に花粉を運んでもらうものが多い。
例に漏れず、クワの花も風媒花です。
クワの葉は切れ込みが特徴的
クワの葉は、下の写真のように大きな切れ込みがあるのが特徴的。
切れ込みが特徴的なクワの葉
この形の葉を見たら、「クワだ!」と見つけられますね。
でも実はこれには罠が。
まず、この切れ込みがあるのは若い木のみで、大人になったクワの葉には切れ込みがありません。
また葉単位で切れ込みがあったりなかったりします。
なので、ずっと特徴的な形の葉であれば見分けが簡単なのですが、そううまくはいかないものです。
ですが、そういった色んな特徴や多様性を持っているのが生き物の面白いところでもありますね。
クワの実はグローバルな食材
赤い実
クワは実に美味しそうな赤い実をつけます。
実際クワの実は食べることができ、甘味と酸味のバランスが良い感じです。
また、人間だけでなくアシナガバチもこの実にやって来ます。
アシナガバチは動物食オンリーのイメージだったので、クワの実をかじる姿を初めて見たときは意外でした。
ハチもつまみ食いしてしまうぐらい美味しい実と言うことなのでしょうね。
様々な栄養成分が含まれる優秀な食材
クワは昔から食料とされてきました。
しかもただ美味しいだけではなく、様々な栄養成分が含まれる食材なのです。
実だけでなく、葉の部分も食材になります。
桑の葉茶は、以下のように健康食品として利用されています。
ハーブの世界でも活躍
クワはハーブの世界でも活躍していて、ハーブティーとしても飲まれます。
ちなみにハーブの世界では英語名のマルベリーと呼ばれます。
マルベリーのハーブティー
マルベリーは、ハーブの様々な活用方法を紹介する記事でも登場しました↓
このように、クワは東洋だけでなく、西洋でも親しまれているすごい樹木なのです!
おわりに:里山生活に関連の深いクワを観察してみよう!
クワの実、桑の葉茶、カイコ。
どれも里山生活に関連の深いものたちです。
つまり、クワは日本人の里山生活と密接な関係があった身近な樹木なのですね。
そして今も僕たちの役に立ち続けてくれています。
そんなありがたいクワ。
クワの木を見つけたら、改めて彼らのことを観察してみてください!
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