ネイチャーエンジニア いきものブログ

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モドキやダマシと名のつく虫は劣化版などではない!その理由を解説

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ショウリョウバッタモドキ

あ、バッタがいる!

図鑑で調べてみたら、ショウリョウバッタモドキというんだって!

モドキってことは、ニセモノなの?

こんな疑問に答えます。


昆虫には、「〇〇モドキ」「△△ダマシ」というような名前がつくものがあります。


例えば、上の写真のショウリョウバッタモドキもその一種。


そのネーミングからは、まるで"劣化版"の虫のような印象を受けますが、実はそんなことはありません。


〇〇モドキ」という虫も、面白い虫たちばかりなのです!


僕はネイチャーエンジニアの亀田です。


年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な生き物に出会ってきました。


そんな生き物好きの僕が、モドキと名のつく虫たちが劣化版でない理由について紹介します。




 

モドキやダマシの名前の意味

〇〇モドキ」や「△△ダマシ」という名前を持つ虫たち。


これはどういう意味の名前なのでしょうか?


ということで「モドキ」の意味を調べてみると、以下のような説明が出てきました。

似せて作ること,また似せて作ったもの,まがいものなどの意。(以下省略)


引用: もどき - コトバンク


つまり、モドキは”ニセモノ”的な意味合いであり、ダマシも同様の意味です。


このように名前にモドキやダマシとつく虫には、「もともとよく似た虫=オリジナル」がいることからつけられています。


例えば、冒頭で紹介したショウリョウバッタモドキには、「ショウリョウバッタ」というオリジナルが存在するのです。


ショウリョウバッタ
ショウリョウバッタ オス


ショウリョウバッタモドキ
ショウリョウバッタモドキ


ショウリョウバッタモドキとは、名前的には確かに「ショウリョウバッタのニセモノ」的な意味合いがあるのですね。

モドキやダマシという名前の虫は劣化版ではない理由

では、モドキやダマシはオリジナルの虫の「劣化版」のような存在なのでしょうか?


この疑問に対して、僕は「決して違う」という考えです。


なぜなら、モドキやダマシと名がついたかどうかは""の問題であるからです。


彼らが命名された時の流れは、きっとこのようなものでしょう。

新種発見!…あれ?でも何かに似ているな。

この虫は既知種の「〇〇」にそっくりだ。

〇〇に似ているもの、ということで「〇〇モドキ」という名前にしよう!


なぜそう思うかというと、よく似た既知種が先に存在しないと、モドキやダマシと命名され得ないから。


つまり、見つかったタイミングが偶然、既知種よりも遅かっただけ=""でしかないのです。


もしショウリョウバッタモドキとショウリョウバッタの見つかった順番が逆であったら、彼らの名前は逆になっていたかもしれません。


それに、当然ですがオリジナルとモドキは全くの別種なので、それぞれ「異なる魅力」を持ちます。


ショウリョウバッタモドキは他のバッタと比べ、細長くシュッっとした姿がスマートで素敵です。


それに背中に入る紅色のラインも美しく、このラインの入り方には個体差があるのも魅力。


背中のラインも美しいショウリョウバッタモドキ
ショウリョウバッタモドキ


また意外とショウリョウバッタモドキに出会う機会が少ないこともあって、僕は彼らに出会うとついつい長めに観察してしまいます。


このように、モドキは決して劣化版のような存在ではない。


もし名前の印象のみで魅力を見逃してしまっていたとしたら、非常にもったいないですよ!




モドキやダマシと名のつく虫たちの例

ガガンボモドキ、ガガンボダマシ

ガガンボは「ハエ目」に属する、大型の蚊のような姿を持つ昆虫たち。


キリウジガガンボ
キリウジガガンボ


蚊とは違い吸血性はなく、花の蜜などを吸うことが多いです。


大きい体を持つのに体が貧弱で、触ったりするとすぐに脚が取れてしまうんですよね。


このガガンボによく似た姿の昆虫に、ガガンボモドキがいます。


ガガンボモドキの一種
ガガンボモドキの一種


ガガンボモドキは「」という大きめの分類グループから異なり、ハエ目ではなくシリアゲムシ目に含まれます。


小型のガガンボとは一見よく似ているのですが、こうやって比較すると印象が結構違います。


ちなみに「ガガンボダマシ」というものも存在しており、こちらはガガンボと同じハエ目の昆虫です。

ゴミムシダマシ

ゴミムシは「コウチュウ目オサムシ科」というグループに属する昆虫たち。


セアカヒラタゴミムシ
セアカヒラタゴミムシ


地上を歩き回るタイプの昆虫で、他の昆虫やミミズ、カタツムリなど地面にいる生き物や動物の死骸を食べるものが多いです。


はねが退化して飛べなくなっているものもいて、地域ごとに別の進化をしているものがいたりします。


このゴミムシによく似た姿の昆虫に、ゴミムシダマシがいます。


ミツノゴミムシダマシ
ミツノゴミムシダマシ


ゴミムシダマシ科」という分類グループがあり、こちらはゴミムシが含まれるオサムシ科とは結構異なるグループです。


ただ、「地面を歩く黒っぽいコウチュウが多い」という、大枠の印象は近いかもしれません。


このゴミムシダマシたちには、多様な種がいるのも魅力です。


例えば、ニジゴミムシダマシのように虹色の姿をしたものもいます。


ニジゴミムシダマシ
ニジゴミムシダマシ


他にも「ハムシダマシ」と名前のつく虫たちも含まれ、「ダマシ」と名のつく虫の多いグループです。


アオハムシダマシ
アオハムシダマシ


でも名前の印象とは違い、実は金属光沢のある美しい見た目のものも多いんです。


ゴミムシダマシについては、以下の記事で紹介しています↓


ナナフシモドキ

枝そっくりの擬態が特徴的なナナフシ。


ナナフシにも色々な種がいますが、一般的に「ナナフシ」と呼ばれるのはナナフシモドキという種のこと。


つまり、ナナフシ=ナナフシモドキとなります。


結局オリジナルなのか、ニセモノなのか、混乱です笑


ナナフシモドキ(ナナフシ)
ナナフシモドキ


ナナフシについては、以下の記事で紹介しています↓


おわりに:名前をキーワードに生き物の魅力を知ろう!

以下の記事で解説していますが、僕は「生き物の名前を知ること自体は重要ではない」と考えています。


今回の記事で紹介した「モドキ」や「ダマシ」のように、名前が正確に実態を表しているわけではないため、名前だけではその生き物すべてを知ることはできないからです。


例えば名前を知っただけでその生き物を理解した気になってしまうのは、もったいないんですね。


ただ、名前にも大事な役割があり、それは「その生き物の魅力にたどり着くためのキーワードになる」ということ。


キーワードを使ってWebや図鑑で調べることで、その生き物の魅力を深く知ることが可能なのです。


身近な生き物の魅力を知ることで日常が楽しくなるので、名前を知ったあとには、ぜひその名前を使って、生き物のさらなる魅力を調べてみてください!


ちなみに「逆に見つけた虫の名前が分からない」という場合は、以下の記事を参考にしてみてください↓


他の虫の紹介、虫ゲーム・アプリ、虫観察、用語解説などに関する記事はこちらから↓

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