ネイチャーエンジニア いきものブログ

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コクガンは海で生活するガン(雁)!コクガンの渡りルートの話

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コクガン

あ、海に鳥がいる!

これはカモ…とは違う鳥?

こんな疑問にお答えします。


写真の鳥は、コクガン


コクガンは黒い体をしたガンの仲間ですが、特に特徴的なのはその"生息場所"。


他のガンは内陸部の湖沼を中心に活動しますが、コクガンの活動場所は「」。


また日本への飛来数は3,000羽程度と多くなく、様々な面で特徴的で希少な鳥なのです!


僕はネイチャーエンジニアの亀田です。


年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な野鳥に出会ってきました。


そんな鳥好きの僕が、コクガンの特徴と魅力を紹介します。




 

コクガンは体の黒いガン

コクガンは漢字で「黒雁」と書きます。


名前の通り、黒ベースの体を持つガンで、所々に特徴的な白い斑があります。


黒い姿を持つガン、コクガン
コクガン


全長は61cmと、意外と小さめ。


身近なカモであるカルガモも61cmなので、大型のカモと同じくらいの大きさなのですね。

コクガンのユニークな習性

海で生活

コクガンは姿だけでなく、その生活スタイルも特徴的。


特にユニークなのは、「主に海で生活する」ということ。


他のガンは、基本的に「内陸部の湖沼」を中心に活動します。


例えば、日本で最も飛来数の多いガンであるマガンは、夜は湖沼の水上で寝て、昼は周辺の農耕地でえさをついばむ、という生活をします。


ところがコクガンは、海水域の沿岸部で海草を食べて、夜も海上で休む、という生活をするのです。


海上でえさを食べるコクガン
コクガン


労働寄生

コクガンは「労働寄生」という習性も持つガンです。


コクガンの労働寄生とは、平たくいうと「えさの横取り」。


コクガンは「水上採餌ガモ(水面でえさをとるカモ)」と同じように水中に潜ることができません。


そのため、水中に生える海草を直接取りに行くことはできない。


そこで「水中に潜れる鳥が潜水して取ってきたえさを、横取りしてしまおう」というちょっとずる賢い作戦です。


その対象としてよく狙われるのは、クイナ科のオオバン


オオバン
オオバン


僕が宮城で海鳥を観察していた時も、オオバンがコクガンに囲まれていました。


コクガンに囲まれるオオバン
オオバン コクガン


一番初めに観察したときは、「なんでオオバンとコクガンは仲が良いんだろ?」なんて思っていたのですが、実はコクガンにえさを狙われていたのですね。


オオバンの方が体もかなり小さいので、なんだかちょっとかわいそうに思えてきてしまいます笑




コクガンの渡り

コクガンは、日本の「天然記念物」に指定されている鳥です。


天然記念物に指定される以前、狩猟によって数が減少してしまったという過去もあったようですが、今はもちろん狩猟鳥の対象外となっています。


コクガンはヨーロッパやシベリア、カナダなど北部の地域で繁殖し、世界的には個体数は少なくない数が生息しています。


しかし、アジアに飛来するコクガンは多くなく、日本での飛来数は3,000羽程度。(絶滅危惧種に指定)


北海道の道北や、東北の宮城県以北が主な飛来地です。


日本への飛来数は多くないコクガン
コクガン


ちなみにコクガンの"渡りのルート"についてはまだ詳しく分かっていない模様。


そこでコクガンの渡りについて調べていたら、最新の追跡調査の情報を見つけました。


以下の動画は、ガン・カモ類の研究者である嶋田哲郎さんによる「南三陸のコクガンのGPS追跡調査」に関するものです。


上記の動画は2020年の追跡調査のお話で、コクガンの日本での生活ぶりのほか、渡りについて現状分かっている詳しい情報が聞けます。ぜひご覧になってみてください!


ちなみに渡り鳥が生活する場所は、大きくは

・繁殖地
・越冬地
・中継地

という3つの環境に分かれます。


これらの環境は、渡り鳥にとって"すべてが大事"です。


なぜなら、もしこのうち一つでも失われると、渡りの行動はうまく回らなくなってしまうからです。


例えば開発などにより上記のうちの1つのポイントが失われてしまうと、鳥たちは渡りができなくなってしまう(または別のルートに変更しなくてはならない)のです。


上記の動画の中でも、コクガンにとって「北海道の道北(野付湾)」は大事な経由地であることが紹介されています。


日本で越冬するコクガンたちも、この道北地方を経由して東北沿岸部に渡って来ており、もし道北の環境が悪くなったりしたら日本に飛来するコクガンたちはただちに影響を受けるでしょう。


なので渡りのルートを知らないと、「どの環境を守らなくてはならないのか」が把握できません。


そのため、渡りのルートの研究というのは、渡り鳥を保護する上で超大切なことなのですね。


こういった研究結果が保護活動に活かされ、人と野鳥の共存に役立てられることを願っています。

コクガンと同じ分類に属する鳥たち

カルガモ

コクガンはカモ目カモ科に属する鳥。同じ分類の鳥たちを以下で紹介しています。


[カモ目]
カモ目の野鳥まとめ|水上生活に適応した美しい水鳥たち

[カモ科]
鴨(カモ)の種類と魅力|カモは地味な野鳥ではない!実は個性的で面白い姿を持つ


おわりに:コクガンを観察してみよう!

コクガンは、海で生活するユニークなガン。


記事内で紹介した通り、見られる地域は基本的に東北以北に限られます。


しかし僕が宮城県で観察したときは、漁港や沿岸部の比較的近い場所で見ることができました。(通常、海鳥は遠い場所にいることが多い)


生息地のハードルさえクリアすれば、コクガンは比較的観察しやすい鳥かもしれません。


またコクガンは昼行性なので、活発に行動する姿を見やすい鳥でもあります。


もし冬鳥が見られるシーズンに東北や北海道に行くことがあれば、ぜひ沿岸部に立ち寄ってコクガンを観察してみてください!


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