あ、顔に隈取のような模様のある鳥がいるよ!
この鳥ってどんな鳥 ?
こんな疑問にお答えします。
写真の鳥は、ヒレンジャク。
頭部には長い冠羽があり、顔には隈取のような模様がある、とてもユニークな姿の鳥です。
ヒレンジャクはそのユニークな姿と”年によって飛来数が変わる”という特徴があるため、バードウォッチャーにも人気の鳥。
さらに、「ヤドリギ」という、ちょっと変わった植物との関係も面白い鳥なんですよ!
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な野鳥に出会ってきました。
そんな鳥好きの僕が、ヒレンジャクの特徴と魅力を紹介します。
ヒレンジャクは顔に隈取模様のある鳥
ヒレンジャクは「スズメ目レンジャク科」に属する鳥で、とてもユニークな姿を持つ鳥です。
ユニークな姿のヒレンジャク
その姿は、
・顔にある隈取のような模様
・”緋”レンジャクの名前の由来となっている、尾羽の鮮やかな赤い羽
と、色々と個性的な特徴があり、バードウォッチャーにも人気の鳥です。
ちなみにレンジャクとは漢字で「連雀」と書きます。
これはレンジャクが群れをなして行動する習性を持つことが由来で、「連なる雀(すずめ)大の小さな鳥」という意味のようです。
ヒレンジャクとヤドリギ
ヒレンジャクは「ヤドリギ」というちょっと変わった植物の実を食べます。
ヤドリギの実を食べるヒレンジャク
ヤドリギは漢字で「宿木」と書きますが、これはヤドリギが半寄生植物であることが由来です。
ヤドリギは「宿主である他の樹木に根を食い込ませて養分を吸収しつつも、自ら光合成も行う」という、宿主に全てを頼るタイプではないので、"半寄生"なのです。
他の植物に半寄生するヤドリギ
ヤドリギが寄生を行うには、種子が宿主の樹皮についたあと、樹皮に根を下ろす必要があります。
そのためには、なんとかして種子を宿主の樹皮に付着させる必要があります。
そこで力を貸すのが、ヒレンジャク。
ヒレンジャクはヤドリギの実を食べたあと、また別の木の枝などに止まりながら「フン」をします。
フンにはヤドリギの種子が含まれていて、このフンが宿主の樹皮に付着すれば寄生成功に近付きます。
ただし、ヒレンジャクが木の枝でフンをしても、普通は樹皮に止まらず、地面まで落ちてしまいます。
そこでヤドリギは「果実の中にある種子を粘液で包む」という工夫をしました。
そうすることで、鳥のフンがネバネバと糸を引くようにし、樹皮に引っかかりやすくなります。
そんなヒレンジャクのネバネバしたフンが、こちら。
ヤドリギの実を食べたあとのヒレンジャクのフン
植物が動物の力を借りて種子を散布する方法を「動物散布」と言います。
植物はしばしば動物の力を借りて種子を散布することがありますが、ヒレンジャクはヤドリギにとって種子を散布するパートナーなのですね。
このように動物と植物の協力関係に注目することも、いきもの観察をさらに面白くするポイントになります!
ヒレンジャクの分布は狭い
ヒレンジャクと同じスズメ目レンジャク科に属する鳥に「キレンジャク」という種がいます。
キレンジャクはヒレンジャクと同様、冬に日本に飛来する「冬鳥」。
レンジャク科の鳥は日本ではこの2種が見られ、僕の愛用する野鳥図鑑「日本の野鳥650」では、
・キレンジャク → 北日本に多い
とあります。
しかし、世界的に見ると両者の分布は大きく異なります。
キレンジャクはユーラシア大陸、アメリカ大陸の広範囲に分布する、かなりグローバルな鳥。
一方でヒレンジャクは繁殖地はロシアのシベリア東部や中国の北東部のみ、越冬地は日本とその近海のみ(中国南部、朝鮮半島など)と、非常に狭い範囲に分布。
そのため、ヒレンジャクの英名は「Japanese Waxwing」でもあります。
日本だけで見ると両者はよく似た種のように見えますが、世界視点で見るとかなり見え方が変わるのですね。
日本周辺にのみ分布するヒレンジャク
ちなみにレンジャクは"年によって飛来数が大きく変わる鳥"で、アトリのように「当たり年」なるものがある鳥たちです。
年によって見られるチャンスが大きく変わるため、それだけに出会った時は嬉しい気分になります。
この面でも、レンジャクはバードウォッチャーから人気のある鳥たちなのです。
ヒレンジャクと同じ分類に属する鳥たち
ヒレンジャクはスズメ目レンジャク科に属する鳥。同じ分類の鳥たちを以下で紹介しています。
[スズメ目]
スズメ目の野鳥まとめ|美しい声を持つ鳥類最大のグループ
▼
[レンジャク科]
おわりに:ヒレンジャク観察のチャンスがない時には?
ヒレンジャクは、ユニークな外見の面白い鳥。
ただ記事内で紹介した通り、年によって飛来数が大きく変わる鳥のため、年によっては観察するチャンスがなかったりします。
そんな時は、「他の鳥を観察してチャンスを待つ」ことをオススメします。
・いつか来るチャンスをつかめるように、日常から観察力をあげておく
など。
僕の観察スタンスは普段からそのような感じで、
「普段見られない鳥に出会えたらラッキー」
「基本は(珍しくはない)土地土地の生き物の姿や行動を楽しむ」
です。
魅力的な鳥はヒレンジャク以外にもたくさんいますし、他の鳥を観察して生態や習性について知識を得ることで、巡り巡っていざヒレンジャクに出会った時の観察に役立つことがあります。
例えば、日常の観察で「鳥に警戒されにくい距離感」を身につけておくと、むやみに鳥に近付きすぎることが減り、鳥をゆっくりと観察しやすくなります。
ほかにも、他の鳥をよく知っていることで、それとの対比で珍鳥をより楽しめるというのもあります。
このように、多くの野鳥の観察をすることで、個別の鳥の観察はさらに楽しくなりますので、ぜひ色々な野鳥を観察してみてください!
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