ネイチャーエンジニア いきものブログ

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ソーラーパネルは本当に自然に良いのか?太陽光発電の環境問題と未来

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おおさきメガソーラー

ソーラーパネルって、設置するために山を切り崩したり、災害で飛ばされたり。

逆に問題になっていることも多いイメージ…

本当に自然にとって良いものなのかな?

こんな疑問にお答えします。


ネイチャーエンジニアの亀田です。


ソーラーパネルとは、太陽電池をつなげてパネルにした発電装置。


自然エネルギーを利用して電力を生み出すエコな装置」として、様々な場所に設置されています。


広い土地にたくさんのパネルが並べられた「メガソーラー」は、インパクトのある景観ですよね。


現代の生活では電力を必要とする場面が多く、今後も必要電力が増えることが予想されるわけで、電力を作り出す装置は欠かせないものだと思います。


しかし一方で、ソーラーパネルに関するネガティブな話も、見る機会が多いです。

・パネルを設置するために、山を切り崩す
・強風でパネルが飛ばされる
・川が氾濫してパネルが流される


それらを目にしていると、
ソーラーパネルの設置は、本当にエコなのだろうか?
自然にとってマイナスの影響も大きいのではないか?
と思うことも。


そんなことを考えていたところ、僕の友人で、初期の頃から最前線で太陽光発電の事業に取り組んでいる方がいることを思い出しました。


それが、宮城県大崎市の「株式会社菅原工務店」の代表取締役、菅原順一さん


菅原工務店 菅原順一さん
昭和40年に創業。「長く住むことのできる、あたたかい家」を追求し、自然エネルギーを活用したエコな家づくりで大崎市の暮らしを支えています。


菅原工務店では、一般住宅向け家づくりにおいて、太陽光発電システムに20年ほど取り組まれてきました。


大崎市の自然エネルギー活用促進に貢献したい」との想いから、2012年からは京セラと「おおさきメガソーラー事業」も行っています。


太陽光発電事業に長く取り組む、順一さん(僕は普段そう呼んでいます)に、

・ソーラーパネル(太陽光発電)の良いところ
・ソーラーパネルの問題について
・ソーラーパネルの今後

といった話を伺ったので、記事で共有させていただきます!




 

ソーラーパネル(太陽光発電)にはどんな良い事があるのか?

菅原工務店が最初に太陽光発電を始めたのは、なぜだったのですか?

ウチの本業は、もともと家づくりです。

菅原工務店では、「長持ちする、あたたかい家を作っていきたい」という想いで、もともと自然エネルギーを使った家づくりをしてきました。

例えば、日本は湿度が高いため、木材が消耗しやすい。

その解決策として、風の力を利用した「エアサイクル」という工法で家づくりをしてきました。

通気層」という風が通り抜けられる空間を作ることにより、換気は良くなり、冬は断熱層となって"あたたかい家"になるんです。


菅原工務店
宮城は寒い。だから地域の人に「あたたかい家」を提供したい、という想いがあるとのこと。


このように、もともと「自然エネルギーを使えたら良いよね」という考えが根底にあり、「太陽光発電」というクリーンエネルギーにも注目したんです。

ふむふむ。

太陽光発電を利用できるようにするには正直手間が掛かるのですが、省エネになって社会のためになると考えました。

なので「自然エネルギー活用を促進したい」という想いから、事業を進めていくことにしたんです。

当時は設備が非常に高額だったのですが、最初は会長の父が500万円をかけて自宅に取り付けて試していましたね。

太陽光発電での暮らしを、まず自分で試したのですね。

はい。

ところで「売電」って知ってますか?

電気が売れる…んでしたっけ?(浅学ですみません)

はい、太陽光発電で使いきれなかった電力を、電力会社に買い取ってもらうことができる仕組みです。

モニターで売電量などを見られるのですが、節約料が可視化されるので、節電のモチベーションになったりするんですよね。

「節電で貯めたお金で家庭旅行に行こう!」のように家庭内のコミュニケーションに繋がったりしていて、それも面白いと思いますね。

そういうところからエコ意識が向上したりするのですね。

それは良いことですね!

あと、太陽光発電は防災の観点でも役立ちます。

2011年に東日本大震災があり、宮城は大きな被害を受けましたが、その時は電気が使えない状況になりました

震災があったのは3月で寒い季節だったので、その時は「あたたかい炊き立てのご飯を食べられる」ということが非常に価値のあることで…。

太陽光発電によって電気が使えたお客さんには、とても感謝されましたね。

中には、自宅での発電で余った電力を近所の方に分け与えていたお客さんもいました。

あの状況の中での「あたたかいご飯」は心の活力になりそうですね。

住民同士で電力をシェアして震災に対応したのもすばらしいです。

それも、自前で発電できるからこそ、ですね。

各地に建設されているメガソーラーは、町の防災対策の面で非常に役立つシステムだと思います。

また、「局所的だった発電所を分散させた」というメリットもあると思います。


ソーラーパネル問題について

ソーラーパネルを設置するために山を切り崩したり、災害時にパネルが流されている映像をよく見ます。

正直言って、ソーラーパネルにはこのあたりの課題が多いように感じるのですが、実際どうなんでしょうか?

投資的な目的」で参入する人が増えて、潮目が変わった感じがありますね。

日本でのソーラーパネルの普及は、海外と比べると後発でした。

初期の頃の日本では、「環境に優しいエコなシステム」として扱っているプレイヤーが多く、じっくりと育てていった印象です。

太陽光発電の開発は日本の企業がリードして来た業界でしたが、ドイツなどの海外で投資的な建前で普及の啓蒙が行われ始め、そのうちその波が日本にやってきたんです。

当時は国産のパネルは品質が高い代わりに高額で、海外の安いパネルを使って、大量に設置するところが増えていきました。

土手にパネルを設定して、落ちたり流されたりという話がありますが、「その設置場所では、そうなるだろ」って思いますね。

利益を得ることが最優先になって、明らかに問題のある場所でも、所構わずに置いている、と。

その土地の住民や自然に悪影響があっても、発電量や利益という数字だけを追っていたら、その事実は見えません

なので、置ける場所ならどこでも良いので置く、という感じになってしまうのだと思います。

事業者がどういうビジョンで事業を行っているか」の問題が大きそうですね。

ちなみに順一さんのところでメガソーラーをやる時は、設置場所はどのように決めているんですか?

菅原工務店のメガソーラーは、大崎の地域の人の暮らしを良くしたい、ということからスタートしています。

その想いから、事業の名前も「おおさきメガソーラー」と、社名ではなく地域の名前をつけているんです。

おおさきメガソーラー
おおさきメガソーラー


だから「設置場所」というのはとても大事で、地域の人と情報共有をしながら、慎重に適地を探しました。

森林や山を大きく切り崩したりするのではなく、"使われなくなっている場所を有効活用する"ような形で進めています。

おおさきメガソーラーでは、長く放置されていた雑木林の一部を、少し整備して利用する、という形を取りました。

ソーラーパネルは問題点がよく話題になるので悪い印象を持たれがちですが、事業者によって取り組み方が全然違うんですね。

菅原工務店のように、地域の暮らしや未来を考えて活動されている事業者もいるわけで、話題になっている情報を見ているだけでは気づけないものがあるのですね。


ソーラーパネルの今後について

ソーラーパネルの今後は、どのようになりそうですか?

パネルの普及とともに、年々パネルの価格は値下がりしていて。

以前は3kwシステムで200万円くらいしたのが、今は100万円を切ったりします。

設備投資に必要な額は減ったのですが、一方で売電金額も下がってきて、儲かる事業ではなくなってきました

なので、これからは原点に立ち返って、省エネに向かっていくのではないかと思います。

ふむふむ。

本来のソーラーパネルの使われ方に進みそうなのですね。

今後は「新築」の一般住宅用に設置するものに利用されることが多くなると思いますね。

パネルは20年くらいは持つので、新築から導入すれば、高い節約効果が見込めます。

以前、90代のお客さんが家族に何かが残せるようにと、300万円をかけて太陽光発電設備を取り付けたことがあります。

その方は5年後くらいに亡くなってしまったんですが、その方の家族はその太陽光発電設備のおかげで今も節約することができていて。

これからさらに10年以上恩恵を受けられるんです。

このように、「太陽光発電を使って子供や孫に資産を残す」という使い道もあるんだなと思いました。

ほっこりする話ですね。

正しい使い方をすればちゃんとエコになるし、色々な形で人を幸せにすることができるんですね。


ソーラーパネルは使い方次第である

ソーラーパネルについて、正直僕は自然環境に関する課題が目につき、疑問を抱いていた部分がありました。


しかし今回、菅原順一さんからお話を聞いて、改めて「道具は本当に使い方次第だな」と感じました。


ソーラーパネルも、つまるところ「道具」でしかありません。


心なき使い方をすればやはり良くない結果をもたらしてしまうわけですが、正しい使い方をすれば、"自然も人も幸せにできる、素晴らしいツールになる"と思いました。


今回お話を聞いた菅原工務店の他にも、地域の暮らしや未来を考えて設置されている事業者も多くいると思います。


それらの事業者の方が活躍して主流になり、ソーラーパネルに関するポジティブな話題がもっと増える社会になってほしいです。


僕らとしても、ソーラーパネル自体を批判するのではなく、正しい使い方をしている方々を応援するような声を上げていくことが大事なのではないかと思いました。


菅原工務店は宮城県で「あたたかい家づくり」をしている会社なので、宮城にお住まいの方は、ぜひ以下のページをチェックしてみてください!


また菅原工務店は、地域の自然を伝えるイベント「アースデイみやぎ大崎」にも携わっています。


こちらのイベントは一般参加できるので、ぜひチェックしてみてください!(僕も以前出店したことがあります)


とういうわけで、順一さん、快く取材を受けていただきありがとうございました!


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