ネイチャーエンジニア いきものブログ

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益虫・害虫とは?実は虫が人に与えている知られざる大きな恩恵

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トホシテントウ

あ、虫がいた!

この虫は害虫?

僕は虫の情報を発信している中で、たまに上記のような質問を受けます。


このような質問を受けると、悪気はないと理解はしていますが、少し”悲しい気持ち”になります。


なぜなら、生き物の命は「害をなすか、益をなすか」の2択で決められるようなものではなく、すべての命が尊い物だからです。


実際、害虫とされるかどうかは、出会う場面によって異なります


例えばスズメバチは、”人を刺すことがある”という面においては「害虫」となりえます。


一方で、農作物を食べるイモムシをえさとする習性があり、このような場面においてはスズメバチは「益虫」となるのです。


さらに、実は益虫とは言われていなくても、間接的にはほとんどの命が人間の役に立っています


だから冒頭のような質問をされると、彼らの命の大切さを分かって欲しくて、ついつい説明に熱が入ってしまいます。


そういえば当ブログでは「益虫」「害虫」について解説してこなかったので、本記事で解説することにしました。


僕はネイチャーエンジニアの亀田です。


年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な生き物に出会ってきました。


そんな生き物好きの僕が、「益虫」「害虫」について解説します。




 

益虫か害虫かは立場によって変わる

ある虫がいたとして、その虫が「益をなすか」「害をなすか」は、立場や場面によって異なります。


冒頭で紹介したスズメバチは典型的な例。


スズメバチ
ヒメスズメバチ


スズメバチの場合で考えると、

・農作物を育てている → イモムシを食べてくれる「益虫」
・家の玄関に巣を作ってしまった → 人を刺す危険のある「害虫」

となります。


ちなみに、上記の例で「家の玄関」としたのは、人通りの多い場所だからです。


家の敷地内に巣を作ったとしても、人が通らないような場所に作ったのであれば、害虫とはならないと思います。


このように、同じ虫でも「益虫」か「害虫」かは場面によって変化するのですね。


「益虫」「害虫」は人に及ぼす影響によってある程度グループ化されているので、いくつか具体的に紹介したいと思います。

益虫とは

益虫とは、「人間の生活に役立つ虫たち」のことです。

害虫を食べる虫

スズメバチのように「農作物を食害する虫を食べる虫」がよくここに含まれます。


例えば、ナナホシテントウというテントウムシは、アブラムシを食べるため益虫とされます。


ナナホシテントウ
ナナホシテントウ


ちなみに、テントウムシというとそのかわいらしさも相まって益虫のイメージがありますが、草食性のトホシテントウなどは害虫とされます。


トホシテントウ
トホシテントウ


他にも、不快害虫(後述します)と呼ばれる虫を食べる虫たち(クモなど)も、益虫と言われます。

経済面で益をもたらす虫

経済面で人の役に立つ虫」もいます。


例えば、ミツバチが花の蜜を集めて作った「蜂蜜」は、人との付き合いの長い、歴史のある食材です。


ニホンミツバチ
ニホンミツバチ


これらは、食材としての面だけでなく、経済面でも人を支えています。


他には、絹の原料となる生糸を作るカイコ(蚕)なども、経済面で多くの人を支えてきた虫です。

受粉を助ける虫

花粉を媒介して、植物の受粉を助ける働きを持つ虫たち」がここに含まれます。


代表的なものは、ミツバチハナバチ類


トラマルハナバチ
トラマルハナバチ


ハチは多くの植物たちにとって、非常に重要なパートナーです。


どれほど大事かというと、「もしハチがいなくなったら人間は数年で滅亡する」と言われるほど。


彼らは人間が食べる多くの農作物の受粉も助けているため、もし彼らがいなくなればコストをかけて人工的に受粉を行うしかなくなります。


すると、普段食卓で見られる野菜は食べられなくなるか、価格が高騰するでしょう。


人の暮らしが、いかに虫たちに支えられているかが分かります。




害虫とは

害虫とは、「人間の生活に悪い作用をもたらす虫たち」のことです。

農業害虫

農業害虫とは、「農作物を食害する虫」のことです。


例えば、イモムシやカメムシ、カミキリムシなどがいます。

・イモムシ: 植物の葉を食べる
・カメムシ: 植物の汁を吸う
・カミキリムシ: 樹木の幹を食べる


ナミアゲハの幼虫はミカン科の植物を食べる
ナミアゲハ 終齢幼虫


農家の方や、植物を育てている方に嫌われがちな虫たちです。

衛生害虫

衛生害虫とは、人を刺したり病原体を媒介するなど、「健康に関する害を与える虫」のことです。


例えば、スズメバチや毒を持つ毛虫などは、人を刺すことのある虫です。


毒を持つ毛虫、イラガ
クロシタアオイラガ 幼虫


他には、カやマダニ、ハエなどは、病原体を媒介することがあります。


特に公衆衛生の整っていない場所での、上記のような吸血性昆虫は、危険視されることが多いです。

財産害虫

財産害虫とは、「人の所有する財産に害を与える虫」のことです。


代表的なものはシロアリで、木造建築物の木材に害を与えます。


他にも、シバンムシは書籍に害をおよぼすことがあります。

不快害虫

不快害虫とは、「気持ち悪い、見た目が苦手と言われる虫」のことです。


代表的なものは、ゴキブリやクモ、毛虫などがいます。


イメージで嫌われがちなゴキブリ(写真は幼虫)
ゴキブリ 幼虫


ここに含まれる虫は実質的には大きな実害のないものも多く、イメージだけで嫌われているものが多いです。


そのため、その虫を害虫と捉えるかどうかも、人によって違ったりします。


そもそもこのカテゴリ自体、「不快だと言う人が多いので作った」という印象のもので、他のカテゴリとは質の異なるものです。




益虫ではない益をもたらす虫たち

虫たちには、「益虫とは言われなくても、間接的に人に益を与えている」という面があります。


2つほど、例を挙げます。

分解者としての役割

虫には「分解者」としての働きを持つものがいます。


分解者は、"自然界の掃除屋"的な役割を持っていて、エネルギー再生を効率的にしています。


動物の糞や死骸などは、そのままだと大きすぎて微生物が分解できません


しかし分解者の虫たちがこれらを食べ、糞というさらに小さな単位にすることで、微生物が分解できるようになるのです。


ミミズなどは代表的な分解者で、生ゴミをミミズに分解させて堆肥とする「ミミズコンポスト」というものもあります。


また、実はゴキブリやハエなど、一般的に「害虫」と呼ばれるものがこの役割を担っていたりします。


分解者の役割を担うハエ
キンバエの一種


屋内で生活するゴキブリは髪の毛やホコリなど、実に様々な物を食べますが、「それだけ分解者としての能力が高い」と考えることもできるのです。


そのほかにも、東日本大震災の時には、「陸に散乱した魚の不廃物をハエたちが高速に分解して掃除した」という記録もあります。


このように、"虫たちが影で掃除をしてくれていることで、自然界のサイクルが回っている"という面があるのです。

多くの生き物のえさになる

生態系において、「食べられる」というのは超大事な役割です。


昆虫はこの「食べられる」という役割を担う、とても大切な生き物たち。


例えば、鳥にとっても昆虫は大事なタンパク源になります。


タンパクは鳥の雛を育てるのに重要で、普段は主に植物を食べる物であっても、繁殖期には昆虫を食べます。


食没連鎖のピラミッドで考えても、虫←カエル、カエル←鳥というように、虫の存在はより大きな動物たちを支えています


結果、巡り巡って人間も、”小さな虫たちの命の恩恵”を受けているのです。

世界中で減少する昆虫たちから考えること

ここまで紹介してきたように、虫は人を含む多くの命に多大な影響をもたらしています。


1匹1匹が多面的な役割をもっていて、「益虫か害虫か」という2択で決められるものでは決してないのです。


2019年には、すべての昆虫のうちの40%が絶滅の危機に瀕し、今後数十年で絶滅する可能性があるというニュースがありました。


虫たちが減れば多くの生き物の生活に支障をきたし、その先には人間の生活にも少なくない影響を与えるでしょう。


虫たちの見た目は非常に小さいとしても、それぞれが「尊い命」です。


身近な小さな生き物たちの命について知り、彼らと一緒に今後も豊かな生活をしていけるように、考えていきたいものです。


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