あ、タマムシだ!
とっても綺麗な虫だよね!
タマムシ(ヤマトタマムシ)は、虹色のはねを持つ、とても美しい昆虫です。
その美しい姿は、多くの人を魅了してきました。
しかしそんな美しい昆虫であるヤマトタマムシに関して、僕は「不思議な現場」に数回出会ったことがあります。
それは、"切り株にある小さな穴の中で、顔をこちらに向けたタマムシが死んでいる"というもの。
その謎の場面との遭遇に、僕の頭は混乱しました。
「なぜこちらに顔を向けているのか?」
「どうせなら生きたタマムシに出会いたかった」
しかしようやく最近、その謎が解けました。
そこには、"美しいタマムシが生きる、厳しい世界"が関係していたのです!
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。
そんな虫好きの僕が、ヤマトタマムシが穴の中で死んでいる理由を紹介します。
ヤマトタマムシはエノキに集まる
食草は主にエノキ
ヤマトタマムシは「コウチュウ目タマムシ科」というグループに属する昆虫です。
その ”虹色に輝く美しいはね”から、人気のある昆虫です。
虹色に輝くはねを持つヤマトタマムシ
やはり、昆虫界随一の美しさを持っていますね!
このヤマトタマムシの成虫の食草は、主にエノキやケヤキ。
特にエノキで出会うことが多い。
ヤマトタマムシが良く集まるエノキ
7〜8月の良く晴れた日には、エノキの樹上周辺を活発に飛翔する姿を見ることができます。
でも、なかなか下には降りてきてくれません笑
たまに付近に降りてきてくれた時はラッキー。
その時は、その美しい姿を優しくじっくりと観察させてもらうことにしましょう!
木の中で3年かけて成虫になる
ヤマトタマムシは切り株や立ち枯れした木に産卵します。
木の中で卵から孵化した幼虫は、木の内部を食べて育ちます。
タマムシが幼虫から成虫になるまでの期間は、なんと3年ほど。
例えばカブトムシの幼虫期間は8ヶ月ほどなので、タマムシの幼虫時代がいかに長いかが分かります。
なので今年見られたヤマトタマムシの成虫は、3年以上前に生まれた個体なのですね。
ヤマトタマムシの世界も厳しい
タマムシというと美しく華やかな生き物というイメージ。
しかしながらそのイメージに反し、実は厳しい環境で生き抜いている昆虫でもあるのです。
実は厳しい世界を生き抜いているヤマトタマムシ
タマムシが木の穴の中で死んでいる理由
冒頭で紹介した通り、僕は「切り株にある小さな穴の中で、顔をこちらに向けた状態でタマムシが死んでいる」というのを見たことがあります。
ずっと不思議に思っていたのですが、千葉市立中央博物館の以下のブログ記事を見つけて、その謎が解けました。
この記事によると、枯れ木の内部で成虫になったタマムシは、そこから自ら木を削って外に出る必要があります。
しかしながら、自分が出られる幅まで穴を広げられずに力尽きてしまう個体も。
数年かけてようやく成虫の姿にまでなることができたのに、外の世界を目の前に亡くなっていくものもいるのですね。
僕も見たということは、偶然ではなく一定の割合で、穴の中で力尽きてしまうものがいるのだと思われます。
このように、野生で生き抜くということは厳しいもの。
一方で、せっかく外に出られた個体は、できるだけ優しく見守ってあげたいですね。
都市部で減少するヤマトタマムシ
さらに、タマムシには環境面でも苦境に立たされています。
実はタマムシは都市部で数を減らしており、例えば東京都では絶滅危惧II類または準絶滅危惧に指定されています。
タマムシが育つエノキは人里近くにもよくある身近な樹木です。
先ほど紹介した通り、タマムシの幼虫が成虫になるには、枯れ木の中で数年を過ごす必要があります。
ところが、街中では枯れた状態のものを長く放置しておくことはありません。
そのため、枯れ木を撤去されてしまうような環境では、成虫まで育つことができないのですね。
僕自身、街中でタマムシを見たことはなく、見られるのはやはりある程度の規模の林がある環境ばかりです。
もし今後も開発などが進み、林の分断が進んだり縮小化されれば、タマムシの生きる環境はもっと減少してしまうでしょう。
今後も美しいタマムシが見られるように、彼らが生息する環境を残し、人と共生できる道を考えたいものです。
ヤマトタマムシと同じ分類に属する虫たち
ヤマトタマムシはコウチュウ目に属する虫。同じ分類の虫たちを以下で紹介しています。
[コウチュウ目]
甲虫目(コウチュウ目)の昆虫まとめ|頑丈なはねを持つ昆虫最大のグループ
おわりに:ヤマトタマムシを観察してみよう!
ヤマトタマムシは華やかな姿に反して、非常に厳しい世界を生き抜いています。
もし出会うことができたら、無事に世代を繋げられるように、ぜひ優しく応援してあげてください!
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