「良い自然」「豊かな自然」って、どういうものなの?
「生物多様性」って何?
こんな疑問にお答えします。
「豊かな自然」とか「良い自然」って、よく聞きますよね?
これらの言葉からは、漠然と
「緑が多い」
「生き物が多くいる」
といった様子が頭に浮かんでくると思います。
しかし、"具体的にどんな自然なのか"を説明するのは難しいのではないでしょうか。
ここがはっきりしていないと、例えば「自然に良いことをしたい!」などと思っても、
「どういう行動を起こせば、自然のためになるのか」
というのが見えてこなかったりするんですよね。
僕は生き物の魅力発信や保全に関わる活動をしていますが、実は以前の僕も、よく「何をすれば良いのだろう?」と悶々としていました。
これを解決するには、分かりやすい定義があると良いですよね。
実は、この"豊かな自然"を測るものとして、ピッタリな考え方があります。
それこそが「生物多様性」なのです!
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な生き物に出会ってきました。
そんな生き物好きの僕が、「豊かな自然とは何か」について紹介します。
生物多様性とは
生物多様性を、すごく端的に言うと、”幅広く、様々な性質を持つ生物がいること”となります。
しかしこれだけでは、どうやったら自然をよくできるかの指針にはならないので、この言葉の定義を詳しく見ていきます。
生物多様性について環境省の運営するサイトを見てみると、生物多様性条約では以下の3つのレベルの多様性があるとあります。
・種の多様性
・遺伝子の多様性
こちらは、上から下に行くほどより細かく小さな単位になっており、下位のレベルの多様性は上位レベルの中に含まれる関係性になっています。
生態系の多様性
まず、生態系とは、”生き物とそれら生き物が暮らす自然環境のこと”を言います。
例えば、
・海とそこに暮らす生き物たち
といったものです。
森林でいえば、樹木や草花があるだけでなく、カブトムシなどの昆虫がいて、野鳥やタヌキ、シカなども暮らしているでしょう。
森林とカブトムシ
植物食の昆虫は植物の葉を食べ、鳥はそれらの昆虫を食べます。
このように動植物たちは相互に関係し合ってバランスを取って暮らしており、全体で「生態系」というものを形作っているのです。
これを踏まえて考えてみると、生態系の多様性は"環境の多様性"に紐づくことが分かります。
なぜなら、生物は環境に適応するからです。
環境には「森林」「海」「河川」など様々なものが存在します。
さらに細かなレベルで見てみると、森林の中にも「広葉樹林」「針葉樹林」「亜熱帯多雨林」などがあります。
これらそれぞれの環境に異なる生態系が生まれるため、
といえるのです。
ちなみに、逆に「生物多様性の低い環境」というのはどういう場所でしょうか。
それは、変化や幅のない単調な環境になります。
例えば、サッカー場。
こちらの芝生が天然芝であったとしても、芝として使われる植物は限られた種であり、葉の長さも揃えられて単調になります。
このような場所では多様な生き物が暮らすことはできず、生物多様性は低くなってしまうのです。
種の多様性
種とは、生物分類上の基本単位のことです。
例えば、ヤマトタマムシは昆虫という大きなグループの中の1種。
ヤマトタマムシ
スズメは鳥類というグループの中の1種です。
スズメ
他にも、爬虫類であれば「ニホンカナヘビ」、両性類であれば「ニホンアマガエル」、魚類であれば「メダカ」など、様々な種がいます。
これらの種の数が多ければ多いほど、種の多様性は高まります。
ちなみに「昆虫」は生物の中で種数が圧倒的に多く、なんと世界で100万種以上も見つかっています。
つまり、昆虫は非常に種の多様性が高いグループと言えます。
また「絶滅危惧種」という言葉は聞いたことがあると思います。
この絶滅危惧種を保護する理由は、種の多様性を守るためなのですね。
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遺伝子の多様性
同じ種であっても、遺伝子にはそれぞれ違いがあります。
この遺伝子レベルの違いによって、姿や能力などに先天性の個体差が出ます。
同じ種でも個体変異がありますが、これも遺伝子が関わっていることがあります。
例えば、クワガタの仲間には、個体によってアゴの形が大きく違うものがいます。
ノコギリクワガタ 大歯型
ノコギリクワガタ 小歯型
このようなクワガタのアゴの形の変化には、"特定の遺伝子が関わっている"という研究結果があります↓
ちなみに、この遺伝子レベルの多様性は、種を存続させるために重要です。
例えば強力な伝染病が蔓延した時、みな同じ耐性であれば全滅ですが、同じ種の中にその病気に耐性のある遺伝子を持つものがいれば、全滅を免がれることができます。
なので、多くの動植物には、他の遺伝子を交配させて子孫を残す仕組みが備わっており、単独で子孫を残せる場合でもそちらを優先したりします。
例えばオオイヌノフグリは、「自家受粉」という、自分だけで受粉できる仕組みを持っています。
オオイヌノフグリ
自ら受粉して子孫が残せるのであれば、その方が確実で良さそうですよね。
しかし、自家受粉はあくまで他の個体と受粉する「他家受粉」の保険であり、他家受粉ができなかった時に使われます。
このことから、遺伝子レベルの多様性を保つことを重視していることが分かります。
日本は生物多様性の高い国
以上の多様性の話を踏まえると、日本は実に様々な生態系を持つ国であると分かります。
日本の国土は南北に長く、様々な気候帯にまたがっており、そこにはもちろん異なる生態系があります。
さらには海に囲まれて高い山もあり、高低差による生態系の違いもあります。
生態系の多様性は生物多様性の最上位の概念なので、「日本は生物多様性の非常に高い国」と言えると思います。
おわりに
というわけで、「豊かな自然とは」について紹介してきました。
もし自然のことを配慮したり、良くしたいと思うのであれば、
「生物多様性を低くしている原因を、取り除くことはできないか?」
という点を紹介した3レベルから考えてみると、具体的なアイデアが出てきやすくなると思いますので、ぜひお試しください!
ちなみに実は、今回は話が長くなってしまうので、割愛している部分も多いです。
例えば
「生物多様性を高めるとどんな恩恵があるのか?」
「生物多様性を維持するのに、どんなことに注意しなくてはならないのか?」
という話もあると思うのですが、こちらはまた別記事で紹介できればと思います!
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