あ、大きな葉っぱを見つけたよ!
この植物、どんな花が咲くのかな?
こんな疑問に答えます。
写真の植物は、カンアオイ。
大きな葉を持つので、さぞや大きな花をつけるのだろう、と思いきや…
実は想像とは違う、控えめで不思議な姿の花を咲かせます。
また、"その花粉がどう運ばれているかはまだ明らかになっていない"という、色々と好奇心をくすぐられる面白い植物なのです!
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な動植物に出会ってきました。
そんな生き物好きの僕が、カンアオイの特徴と魅力を紹介します。
カンアオイの名前の由来
カンアオイは名前に「アオイ」とつきますが、アオイ科ではなく「ウマノスズクサ科」というグループに属する植物です。
カンアオイは漢字で「寒葵」と書きますが、葉がアオイに似ており、冬でも枯れない(葉が残る)ことが名前の由来のようです。
葵に似た葉を持つカンアオイ(カントウカンアオイ)
写真の通り、カンアオイの深緑色の葉は大きくて立派ですよね。
ただ、カンアオイの仲間は背丈が低いため、冬は落ち葉に隠れてしまっていることも。
でも落ち葉から葉が顔を出している横を掻き分けてみると、そこにはちゃんと青い葉があります。
そんなカンアオイとの冬の出会いも、楽しいものです。
また、葉に入る模様(斑紋)もオシャレで美しいですよね。
葉の形も変化に富んでいて、丸っぽいものがあったり尖りが強めのものがあったりします。
このように、カンアオイは葉を観察しているだけでも、たくさん楽しむことができる植物なのです。
カンアオイの花
密やかな花
カンアオイは"花"も個性的です。
花期は10〜11月なのですが、葉と同様に、花も年を越えて春まで残ります。
その姿ですが、葉が大きくて存在感があるだけに、「花もさぞ大きく立派なものなのだろう」と想像してしまいますよね。
その花の姿というのが、こちら。
カンアオイの花
「あれ、花はどこに…?」と思ったかもしれません。
でも、ちゃんとあるのです。
花に近づいてみると、こんな感じです。
カンアオイの花
カンアオイの花は、根元に地面に乗るような形、もしくは半分埋まったような場所にあります。
写真のように表に見えている方が少ないくらいで、「葉をずらして根元を覗かないと花が見つからない」ということもよくあります。
それにしても、その咲く場所もそうですが、花の姿自体も奇妙で不思議な姿をしていますよね。。。
さらに、カンアオイは成長が遅い植物。
なんと発芽してから花を咲かせるまでには、何年もの時間が掛かるという植物なのです。
今見られている花は、何年もの準備期間を経て、ようやく咲いたものだったのですね。
花言葉も「秘められた恋」と、花の様子をうまく表したものになっており、健気さを感じます。
花粉媒介の方法
ちなみに、カンアオイが控えめな花をつけるのには、その"生態"が関係していると思われます。
美しくて目立つ花をつける植物の多くは「虫媒花」と呼ばれるもので、虫に花粉を運んでもらいます。
空を飛ぶ虫に、遠くからでも見つけてもらう必要があるため、目立つ姿をしているのですね。
一方で、多くのカンアオイの仲間は、どうやって受粉をしているかは実はよく分かっていないようです。
一部のカンアオイの仲間はキノコバエがその役割を担っているようですが、他の種はカタツムリやナメクジ、ヤスデなどが媒介しているのではないかと言われています。
植物が派手な花をつけるのには、それだけのエネルギーが必要になります。
カンアオイが密やかに地味な花を咲かせるのは、生態上その必要がない、ということなのだと思われます。
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カンアオイとギフチョウ
カンアオイというと、「ギフチョウ」という蝶と関連の深い植物でもあります。
ギフチョウは「春の女神」とも呼ばれる、春限定で見られるアゲハチョウの仲間です。
ギフチョウ
ギフチョウは里山環境を好む蝶ですが、人の生活変化により全国的に個体数が減少しており、東京でも1970年代に絶滅してしまったと言われています。
そんな今ではなかなか身近な場所で見ることのできないギフチョウの食草が、カンアオイなのです。
カンアオイは地域によって様々な種がいますが、ギフチョウはそれぞれの地域のカンアオイの仲間を利用しているようです。
もし春にカンアオイを見つけたら、もしかしたらその付近で春の女神に出会えるかもしれません。
おわりに:カンアオイを観察してみよう!
カンアオイは、葉も花も、その生態もとても面白い植物です。
もし見つけたら、ぜひ今回紹介した特徴を意識して観察してみてください!
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