あ、地面に面白い虫がいるよ！
この虫は、どんな虫？
こんな疑問にお答えします。
写真の虫は、ケラ。
ケラはコオロギに近い虫なのですが、他のコオロギとは異なるイメージの姿をしています。
英名は「Mole Cricket（=モグラコオロギという意味）」であり、名前の通りモグラのような生態と特徴を持つ、とっても面白い虫なのです！
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。
そんな虫好きの僕が、ケラの特徴と魅力を紹介します。
ケラは童謡に出てくる「おけら」の正体
ケラは「バッタ目ケラ科」というグループに属する昆虫です。
「筒状の体型」「太く頑丈な前あし」など、なんだかユニークな姿をしている虫です。
ユニークな姿のケラ
童謡の歌に出てくる「おけらだーって」のおけらの正体は、このケラのこと。
ところが僕が子供の頃はケラのことを知らずにこの歌を歌っていました。
というのも、ケラは田んぼや畑でよく見られる虫です。
かつてはそのような環境が多くあってケラは身近な虫だったのだと思いますが、今では田畑が減り、あまり身近な虫ではなくなっています。
このようにあまり身近でなくなりつつあるケラですが、実は姿も生態もとっても面白い虫なんです！
ケラはモグラのような姿のコオロギの仲間
ケラは「コオロギ」に近い虫なのですが、他のコオロギとは異なるイメージの姿をしています。
コオロギとのイメージの違いの原因は、コオロギを含むバッタ目にある「大きな後ろあしが見られない」ためではないかと思います。
形態の違いは行動の違いにも表れていて、ケラの成虫は他のバッタ目に属する昆虫のようにジャンプはしません。
逃げる時は、ジャンプではなく、走ります。（若齢幼虫ではジャンプするようです）
ジャンプではなく歩くケラ
というのもケラは他のコオロギたちとは生態に大きな違いがあり、彼らの生活場所は主に「土中」。
英名も「Mole Cricket（=モグラコオロギという意味）」であり、モグラと共通する特徴をいくつも持っているのです。
ケラとモグラの共通点
穴を掘る能力
ケラは土中で穴を掘って生活します。
そのため、"土中生活するのに適した特徴"をいくつも持っています。
土中生活する動物と言えばモグラがいますが、このモグラと共通する特徴もあります。
中でも最も目立つのが「太くて頑丈な前あし」。
前あしの先にはいくつかの突起があり、シャベルのようです。
またその突起は外側を向いていて、土を掘るのに適した形状をしています。
ケラの前あし
この形状はモグラの前足と同様です。
実際ケラの穴掘り能力は非常に高く、僕が地面でケラを見つけて写真を撮っていたら数秒で穴を掘って土の中に消えてしまいました。
見失ったすぐ後にケラが消えた土を少し掘ってみたのですが、すでに奥深くに掘り進んでしまったようで、ケラの姿は全く見られず。
その穴掘り能力の高さに驚いたものです。（もともと巣への横穴があったのかもしれませんが）
土中生活に適した体
他にも、頭部には「金色の短い毛」が密生しており、これにより土が付着しづらくなっています。
モグラにも同様にビロード状の毛があるので、共通の特徴となりますね。
また、土中で移動しやすいように「筒状の体型」をしていたりするのもモグラと共通。
このように多数の点において、ケラとモグラは似た特徴を持つのです。
ちなみに、異なるグループの生物が、同様の環境・生活に身を置くことで似た形質を獲得することを「収斂（しゅうれん）進化」と言います。
ケラとモグラは、収斂進化の関係性が見られる、代表的な例なのですね。
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ケラは水陸空を制する虫
ケラは土中に特化した形態を持つので、土の中のみで生活するのかと思いきや−−−。
実は、水上も移動できます。
短毛が水を弾くため、水の上を浮きやすいのだそうです。
水上にいたケラ
さらには水上だけでなく、ケラは空を飛んで移動することもできます。
このように、ケラは土中＆水陸空を移動できるという、幅広い環境に適応できるすごい虫なのです。
一方で、色々なことができるけれど土中環境以外はスペシャリストでないことから、「おけらの七つ芸」という器用貧乏を意味する言葉もあります。
個人的には、これだけさまざまな環境に適応できる能力は、素直にすごいと思うのですけどね！
おわりに：ケラを観察してみよう！
今回紹介した通り、ケラは他の昆虫たちとは大きく異なる生態や能力を持つ面白い虫です。
田んぼや畑の付近でたまに歩いている姿を見られることがあるので、もし見つけたらぜひその面白い姿を観察してみてください！
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