ネイチャーエンジニア いきものブログ

虫・鳥などの動植物の魅力や知識など、自然観察をもっと楽しむための情報を発信します。

昆虫採集の規制について。今後も採集を楽しむために必要なことは?

少し前に、奄美大島の「野生生物の持ち出しに対する監視体制を強化する」というニュースが話題になりました。


www.nankainn.com


強化のきっかけは「昆虫採集用トラップの設置や、空港から大量の野生生物を持ち出そうとする事案が急増している」とあります。


このニュースに対してSNSを見ると生き物界に携わる方々からも様々な意見が出ていて、「規制されるのは残念だ」といったものも結構多かった印象です。


しかし僕としては、規制をかけることは"賛成"です。


採集する種や場所によって影響の大小はあると思いますが、大量捕獲する人が増えているという状況では、マイナスの影響が強いと思われるからです。


少し古いのですが、2012年に環境省が「レッドデータブックのレッドリストに記載された種の減少要因」をまとめてくれています。


こちらを見ると、昆虫類の減少要因として「捕獲・採集」による影響が非常に大きいことが分かります。


一方、僕としては「採集は金輪際無くした方が良い」と思っているわけでもありません。


個人で昆虫を採集する目的として、大きいものに「飼育」「標本作成」があると思います。


正直、趣味での標本作成については理解ができていないのですが、飼育については良い効果があると考えています。


それは、飼育することでしか見られない生き物の生態や発見があること。


そしてそもそも大切に飼育すること自体が、生き物を大切にする心を育てることにも繋がること。


なので僕としては、「採集による負荷を減らしつつ、昆虫の飼育ができる状況」を考えていきたい。


というわけで、この点について、現時点の僕の考えを述べたいと思います。


僕はネイチャーエンジニアの亀田です。


年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な生き物に出会ってきました。


そんな生き物好きの僕が、昆虫採集の影響と、今後も採集を楽しむために必要なことについて紹介します。




 

個人レベルでの昆虫採集の影響は少ないのか?

採集行為も自然への負荷はかかる

冒頭でお伝えした通り、大小あれ生き物の採集では「その生き物への負荷」が掛かるのは確かです。


捕獲・採集による負荷のことを「採集圧」と言いますが、奄美大島のように大量採集される状況では、採集圧は決して小さくないと僕は思います。


しかしながら、時に採集をしている方から「個人レベルの採集は問題ない」という意見が聞こえることがあります。


主張としては、

「個人の採集よりも、開発などにより生息環境自体がなくなる方が影響の方が大きいではないか」

というものであることが多いです。


この意見の「開発が影響の方が大きい」という面については、僕も異論はありません。


なぜなら、環境自体がなくなると、その環境で暮らしていた生き物は確実に絶滅または激減するからです。


一方で、採集は影響が無視できるほど小さいとは言えない、とも思います。


もし個人がランダムな場所でランダムな種を数匹持ち帰るくらいなら、確かに影響は軽微だと思います。


しかし実際には、「採集される虫は偏る傾向」があります。

昆虫採集の対象は偏る

例えば、カブトムシやクワガタは"採集対象となる人気の虫"です。


人気の虫であるクワガタ
ノコギリクワガタ


このような虫たちの生息スポットがメディアなどで取り上げられると、人が集まって根こそぎ採集されてしまうことがあります。


例えばオオクワガタは、採集ブームにより各地で大きく個体数を減少させてしまいました


加えて「珍しい種」も狙われがちです。


いわゆる「普通種」と呼ばれる出会いやすい種は採集しようとは思わなくても、珍しい種の場合だと興味を持って採集されてしまうこともあるのです。


採集圧の影響は、個体数が少ないほど影響が大きくなります


なぜなら個体数が少ないと「発生個体数 < 採集個体数」の状態になりやすいからです。


では、普通種ならばいくらでも採集して問題ないのでしょうか?


実は、それも気をつけるポイントがあります。


なぜなら、ある県では普通種でも、他の県では絶滅危惧種になっていることがあるからです。


例えば多くの都道府県では普通種であるヤマトタマムシも、東京では絶滅危惧II類または準絶滅危惧に指定されています。


東京では絶滅危惧種のヤマトタマムシ
ヤマトタマムシ


また都道府県といった広い括りでは普通種扱いでも、さらに細かな特定の地域では数を減らしている場合もあり得ます。


今は都市化が進んで自然環境が減っている場所も多く、生息環境の縮小・分断がある場所も多い。


このような貧弱な環境で採集による負荷が集中すると、普通種扱いでも、地域によっては採集圧が大きくなってしまう可能性があるのです。




昆虫と人の生活の関係

生物の"供給"に目を向ける

では、今後も採集圧を気にして我慢をしなければならないのでしょうか?


僕の考えでは、今後自由に採集を楽しめるかどうかは今後の僕たち人間の行動次第だと思っています。


まず、現在は「生物の供給量(発生量) < 人による生物の消費量」の式に当てはまるケースが多くなってしまっている、現実があります。


まず問題なのは、生き物及び採集を楽しむ際、「消費することに偏り過ぎていて、供給に目を向けられていないこと」だと思います。


毎年夏はカブトムシが出てくる季節!」というように、"生き物は毎年自然発生するもの"という考えが多くの人のイメージにあると思いますが、その前提が崩れつつあるということです。


なぜなら、生き物が毎年自然発生するような環境が減ってきているからです。


これを解決するには、「ある程度の消費(採集)に耐えられるような環境を作る・保持すること」が必要です。

人の生活と生き物の生息環境

実はかつての日本人の里山での生活スタイルでは、人間の生活が野生動物の生活にも還元されていることが多いものでした。


例えば、

・薪を使っていたので、定期的に森を伐採
→ 森の中に様々な樹齢が存在した状態になり、多様な生き物の環境が保持されていた

・水田の水路は土で形成されていた
→ カエルや水生昆虫など、水路を多くの生物が利用していた


ところが人の生活変化により、現代では周辺で暮らす生き物を顧みないスタイルのものが増えました。


燃料は木材由来のものから化石燃料が主体となり、放置された森は老木ばかりに。


水田の水路は三面コンクリート張りになって、水生生物のすみかは大きく減りました。


このような生活変化によって、以前と比べて生き物が生きられる場所が減ってしまっているのです。


実はスズメも減少中。木造家屋が減ったため
スズメ


ちなみに余談ですが、「ゴキブリはたくさん家に出るよ?」と思われるかもしれません。


現代家屋内で生息するクロゴキブリなどは、人が現代の生活をすることで、ある意味逆にすみかが供給され続けられているといえます。


でも大半の生物は、その変化に適応できずに数を減らすものの方が多いはずです。

今後も昆虫採集を楽しむために必要なこと

今後も昆虫採集を楽しむために僕たちがとるべき方向性には、大きく以下の2つがあると思います。

1. 生き物の消費を減らす
2. 生き物の供給を増やす


1. 生き物の消費を減らす

これは「消費(採集)をせずにいかに生物楽しむか」ということです。


僕は以前から、採集よりも「観察」を推しています。


観察であれば、その昆虫の繁殖活動を邪魔することはありません。


生物には飼育しないと観察しづらい生態もありますが、野外でないと観察しづらい生態や行動もそれ以上にたくさんあるのです。


また観察には「みんなと生き物の魅力をシェアできる」というメリットもあります。


採集してしまうと、採集した人だけしかその生き物を観察できず、他の人が観察できる機会を奪ってしまうからです。


僕も、

・樹木でカブトムシを発見
→ その後に来たファミリーが全て持っていく
・ツマキチョウが飛んでいるの発見し、ほっこり眺める
→ 直後に虫網で捕まえられる
・あるイモムシの幼虫の成長を定期的に見守っていた
→ 他の人が採っていってしまったと聞く

などがあり、少し悲しい気持ちにもなりました。


採集ではなく観察が主目的の人は、きっと僕のような思いをしたことがある人も多いのではないかと思います。


採集は最小限にし、基本的にみんなで観察するのを基本にできれば、より多くの人がその生き物の魅力を知ることができると思うのです。


ここはすでに僕が当ブログやYouTubeなどで活動していることであり、今後も進めていきたいと思っています。

2. 生き物の供給を増やす

環境保全をしたり、自然環境を配慮した生活やサービスを模索する、といったものです。


自治体の活動も含め、すでに行われている保全活動はたくさんあると思いますが、今後人口が減っていくであろう日本においては、もっともっと工夫していかなくてはならないと思います。


それにやるべきことは1つではないし、人によってできることは違います。


例えば、

・地域の活動に保全を取り入れる
・建築業界の仕事をしている → 環境に配慮して建築手法を開発する
・サービス開発の仕事をしている → 国産の木材を使った商品を開発する
・上記のような活動に寄付など、資金面から寄付する

などなど、様々な業界の人がそれぞれ違う方向からアプローチしていくことが大切だと思うのです。


ちなみに僕は今までこちら方向のアプローチはできていなかったのですが、最近は森の保全活動を始めました。


今まで自然観察で訪れていた森の「森を守る会」的なものに入会していて、現在週1くらいの頻度で森の保全活動に参加しています。


まずはここで実際に森を守りながら、勉強。


動きながら学んで、さらに自分ができることを模索したり、他の地域や活動にも波及できる活動なども、考えていきたいと思います。


なお、この活動の話も、今後当ブログやYouTubeなどで発信していければと思っています!

まとめ

かつては、今とは比べ物にならないほどたくさんの虫がいた時代があったようです。


自然観察をしていると出会う先輩方の話を聞くと、「いくら昆虫を採ってもいなくならないようだった」と言われることも多いです。


でも今は僕の子供時代と比べても「虫が少なくなった」と実感できるほどで、人の行動や生活を見直す時が来ているように思います。


記事の中でお話しした通り、できることは人によって違い、むしろ違う方向からアプローチすることも大事だと僕は思います。


あなたもぜひ、自分ができる、自然を守る方法を考えてみてください!


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