変態ってどういう意味?
完全変態とか不完全変態ってどう違うの?
この記事では、こんな疑問に答えます。
昆虫の多くは「変態(へんたい)」という能力を持ちます。
変態とは、端的に言うと「成長ステージに応じて自らを変身させる能力」のこと。
この能力によって、昆虫たちは成長に応じて「イモムシのような幼虫」「さなぎ」など、同じ個体でも様々な姿に変化します。
昆虫は最も種類の多い動物と言われますが、変態という特徴によって、さらに多様な姿を見せてくれる動物なんですね。
このような多様な姿を持つことは「昆虫の大きな魅力の1つ」でもあるのです!
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。
そんな虫好きの僕が、昆虫の変態を紹介します。
昆虫の変態とは?
変態は、生物の成長に応じて「姿形」や「生活スタイル」を変化させることを言います。
「姿形」の変化とは、以下のような変化のこと。
- 卵 → イモムシ
- さなぎ → 羽のあるチョウ
「生活スタイル」の変化とは、以下のような変化のこと。
- 幼虫:水中で生活
- 成虫:陸上で生活
また、「姿形」と「生活スタイル」には密接な関係があります。
例えば、
- 水中で生活する → 泳げる能力があると有利
- 地中で生活する → 地面を掘ることができると有利
という具合です。
例えば、チョウやガの幼虫には、「腹脚」という脚のような器官があります。
体中央の脚のように見える器官は「腹脚」
この器官があると、木の枝の上などで生活する際に体を安定させるのに有利です。
しかし成虫になると基本的に飛んで行動するので、成虫のチョウたちには腹脚はありません。
このように、姿だけでなく行動や生活場所が変わるのも、変態の面白いところなのです!
成虫と羽化
変態の最終形態は、「成虫」と呼ばれます。
成虫にとって最大の目的は、繁殖行動をして子孫を残すことです。
子孫を残すには、繁殖するためにパートナーを探さなくてはなりません。
そこで多くの種では、成虫になるとパートナーを効率的に探せるように、空を飛ぶための「はね」を持つようになるのです。
昆虫は成虫になると空を飛べる「はね」を持つ
また、変態に関連する「羽化」という言葉があります。
羽化とは、「昆虫が成虫になること」を指します。
この言葉には「羽」の文字が入っていますが、その理由は、ほとんどの昆虫のはねが"成虫になってようやく完成するため"です。
昆虫のはねは"昆虫独自の器官"であり、はねが完成するというのは特別な状態であることを表していると思います。
昆虫の変態の種類
昆虫の変態は、大きくは以下の3種類があります。(もっと様々な変態パターンがありますが、主なものは以下です)
- 無変態
- 不完全変態
- 完全変態
ある昆虫がどのタイプの変態をするかは、属する虫のグループ(ハチ、カメムシ、チョウなど)によって決まっています。
1. 無変態
無変態とは、ほとんど形態を変えずに脱皮を繰り返して、体のサイズだけが大きくなるように成長をします。
この変態を行う昆虫は、シミやイシノミといった原始的な昆虫たち。
イシノミの仲間
無変態をする昆虫は、幼体から成体まで生活スタイルは変わりません。
昆虫ではないですが、ダンゴムシもイシノミのように脱皮を繰り返して大きくなります。
小さなダンゴムシも大きなダンゴムシも生活する場所は変わりませんが、このようなイメージです。
2. 不完全変態
不完全変態をする昆虫には、
という3段階の成長段階があります。
不完全変態を行うのは、以下のような昆虫たち。
- カメムシ
- バッタ
- トンボ
ナガメ:不完全変態(卵→幼虫→成虫)
不完全変態の昆虫では、幼虫と成虫で「全体的な体のつくりが大きく変わらないもの」が多いです。
例えば、バッタやカメムシの多くは、はねが生えそろっていない以外は、大きな形態の変化や生活スタイルの変化はありません。
ところがトンボやカゲロウの仲間は、幼虫時代は水中生活だったのが、成虫になると空中生活になるなど、姿に加えて生活スタイルも大きく変化します。
このように、同じタイプの変態でも、種によって変化の度合いには違いがあったりします。
3. 完全変態
完全変態では、
という4段階の成長過程を踏みます。
完全変態を行うのは、以下のような昆虫たち。
- チョウ
- 甲虫(カブトムシなど)
- ハチ
- ハエ
ナミアゲハ:完全変態(卵→幼虫→さなぎ→成虫)
完全変態では、不完全変態の成長過程に「さなぎ」という段階が加わりました。
このタイプの変態では、「さなぎ」を境に姿も生活スタイルも大きく変化します。
例えば、カブトムシではさなぎまでの期間は地中で過ごしますが、成虫になると地上に出て生活するようになります。
また、実は変態自体はカエルなど昆虫以外でも見られる能力なのですが、「さなぎ」という形態に関しては昆虫独自のもの。
完全変態をする昆虫でしか観察できない、面白い生態なのです。
変態における各成長段階の解説
成長段階には「卵」「幼虫」「さなぎ」「成虫」の4ステージがありますが、これらについて詳しく解説していきます。
卵
ナガメ卵
ナミアゲハ卵
卵の形は、種類によって様々です。
例えば、カメムシは筒状、チョウは球形になっていることが多いです。
また、卵も自ら動くことはできないため、天敵に襲われたらひとたまりもない。
そのため、天敵に狙われないように様々な対策がとられています。
- 敵に見つかりづらい場所に隠されている
- 卵を守るために繭(まゆ)や卵嚢(らんのう) に包まれている
- 孵化するまで親が卵を守る(体で隠すものもあれば、背負うものもあります)
- 卵をフンで覆う
このような、動けないゆえの工夫を観察するのも面白いのです!
幼虫
ナガメ幼虫
ナミアゲハ初齢幼虫
ナミアゲハ終齢幼虫
ナミアゲハの幼虫を2種類貼りましたが、同じ幼虫の段階なのに姿が大きく異なります。
ナミアゲハは、
「初齢幼虫=初期の頃の幼虫」
「終齢幼虫=さなぎになる直前の幼虫」
で姿が大きく異なるのです。
ナミアゲハは初齢幼虫では「鳥の糞」に、終齢幼虫では「ヘビ」に擬態していると言われています。
しかし、体が大きくなっても鳥の糞の姿だと天敵に狙われやすくなるため、終齢幼虫では姿を変えているようです。
姿は初齢と終齢で大きく変わっていますが、実は生活スタイルは変化していません。
どちらの姿も植物の上で葉を食べる生活スタイルであり、成長段階としては劇的な変化はないのです。
いくら姿が変わっても、成長段階が別のステージになった扱いにはならないのですね。
ちなみに、実は昆虫は成虫の期間が長いものはあまりおらず、"幼虫の姿で過ごす期間が最も長い"というものも多いのです。
さなぎ
さなぎは完全変態の昆虫ならではの形態です。
さなぎになると、幼虫は内部で体を一度溶かし、成虫の姿に作り変えます。
この状態の時は大きく動けず無防備になるため、命を狙われるリスクが高まります。
そのため、さなぎの時も、
- 見つかりづらい場所に隠れる
- 葉や茎の中に入り込む
- 硬い殻を作って守る
といった、虫ごとに身を守るための作戦をとります。
この段階を経て、成虫になる虫はほんのわずかなのです。
成虫
ナガメ成虫
ナミアゲハ成虫
成虫になるとはねが生え揃い、空を飛べるようになります。
虫が成虫になるのは繁殖活動をするためであり、はねを生やすのも、遠くに飛んでパートナーを探しやすくするためです。
幼虫ほとんどの虫では、幼虫の期間が長く"成虫の時間は短い傾向"があります。
代表的なもので言うと、セミは幼虫で数年も地中で暮らすのに、成虫になってからは数週間しか生きられません。
他にも、カゲロウの仲間は成虫になって1日弱で死んでしまいます。
このように、虫にとって成虫というのは、生き延びることよりも子孫を残すことを重視した特別な姿。
様々な苦難を乗り越えて成虫までたどり着いた彼らを見つけたときは、優しく接してあげたくなるものです。
昆虫以外の変態をする動物
ちなみに、変態は昆虫だけの専売特許ではなく、他の動物でも変態をするものがいます。
例えば、カエル。
アマガエル
幼生時代はオタマジャクシの姿で水中で生活します。
しかし、大人になるとカエルの姿になって、陸に上がります。
この際、幼生時代は水中生活をするため「えら呼吸」ですが、大人になると「皮膚呼吸と肺呼吸」に変化します。
成長に合わせて、生活スタイルや姿が大きく変化しています。
このように、昆虫以外でも「変態」をする生き物がいるのです。
おわりに:昆虫の変態をもっと楽しもう!
変態は成長と共に姿や行動が変わる、昆虫の魅力的な特徴の1つです。
そのような「虫の成長による姿の変化を伝えたい!」と開発したアプリが、以下の「虫育成ゲーム むしいく」。
■ 虫育成ゲーム むしいく
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