あ、イモムシがいる!
そういえば、イモムシの脚(あし)って種類によって数が違うような…?
こんな疑問に答えます。
イモムシにたくさんついている、脚(あし)。
実はこのたくさんの脚には「本物の脚」とは別に「腹脚(ふくきゃく)」と呼ばれるものがあります。
この腹脚、イモムシの種類によって数が違います。
そしてそれは、「イモムシの移動の仕方」にも影響を与えているんですよ!
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。
そんな虫好きの僕が、イモムシの腹脚について紹介します。
イモムシの腹脚とは
イモムシとは、もともとサトイモやサツマイモを食害する「スズメガの幼虫」のことを指していました。
現在は「毛が目立たない、チョウやガ類の幼虫の総称」を指す言葉となっています。
イモムシについて詳しくは、以下で紹介しています↓
そんなイモムシたちですが、彼らには”たくさん脚(あし)がある”というイメージがありませんか?
実際、以下の通りたくさんの脚に見えるものがついています↓
キアゲハの幼虫
ところが、本物の脚は頭の方から数えて3対(爪のように見えるもの)だけ。
体の後ろについている脚のように見えるものは、「腹脚(ふくきゃく)」と呼ばれる、脚”のような”器官なのです。
昆虫の成虫は「頭部」「胸部」「腹部」に分かれていますが、幼虫も体の構造は同じ。
本物の脚は「胸部」について、腹脚は「腹部」についています。
この腹脚があることによって、木の枝の上を移動したり、枝や幹につかまりながら葉を食べることがしやすくなるのですね。
イモムシの腹脚の数の違い
ガやチョウの幼虫の腹脚の数は、基本的に「5対」です。
チョウ目ヤガ科のフクラスズメの幼虫を見てみましょう。
フクラスズメの幼虫
こちらを見ると、
・体の最後部に1対
と、確かに計5対です。
ちなみに、最後部のものは「尾脚(びきゃく)」と呼ばれます。
このように、ガやチョウの幼虫の腹脚の数は5対のものが多いのですが、昆虫の多様性を侮ることなかれ。
イモムシも様々な特徴を持つものがいて、腹脚の数も種類によって違いがあるのです。
2対(ルーパー型)
チョウ目シャクガ科の幼虫は、一般的なチョウ目の幼虫と比べて腹脚が3対少なく、2対。
チャバネフユエダシャクの幼虫
シャクガの幼虫は、「ルーパー」と呼ばれます。
「ルーパー(looper)」を和訳すると、「輪を作るもの」といった意味。
これは輪っかを作るような移動の仕方が名前の由来で、日本語でも「尺取虫」という親しみのある名前が付けられています。
3対(セミルーパー型)
チョウ目ヤガ科の一部の仲間(キンウワバ亜科、ベニコヤガ亜科など)では、腹脚が3対。
キンウワバの幼虫
ルーパー型に似た動きをすることから、「セミルーパー」と呼ばれます。
4対
チョウ目ヤガ科の一部の仲間(アツバ亜科など)では、腹脚が通常よりも1対少ない4対。
アツバ亜科の一種の幼虫
この仲間も輪っかを作りますが、ルーパー型の幼虫と比べると、作る輪っかはかなり小さくなっています。
腹脚なし
チョウ目イラガ科の仲間には、なんと腹脚がありません。
アカイラガの幼虫
そのため、ナメクジのように腹部をうねらせて移動します。
ハバチの仲間
ハバチの仲間は、チョウやガの幼虫によく似ています。
場所的にも混ざって見つかるため、見分ける上では紛らわしいです。
チョウ目のイモムシによく似たハバチの幼虫
そんなハバチの幼虫の腹脚は、上記のようにチョウ目の幼虫よりも多いものがいます。
科や種によって異なりますが、通常のチョウ目の幼虫よりも3対も多い、8対あるものがいます。
腹脚の違いによる動きの違いが面白い
すでに紹介していますが、腹脚の違いはイモムシの動きや移動の仕方に変化を産み出します。
「尺取虫」と呼ばれるシャクガは腹脚が2対しかないので、ひょっこりひょっこりと体を伸ばすように動きます。
木の枝から枝へと移る行動が得意なようです。
が、代わりに、あまり素早い移動はできない印象です。
それに対して腹脚の数の多い幼虫は、歩幅が小さくのそのそと移動する感じです。
ストライドが短い文、基本的にはゆっくり動くものが多いのですが、「熊毛虫(クマケムシ)」とも呼ばれるヒトリガの幼虫は、腹脚を高速回転させて、意外にも素早い動きを見せるのですよね。
「熊毛虫」と呼ばれるヒトリガの幼虫
このように、腹脚に関連する動きを観察するのも面白いものです。
僕は最初、「なぜ尺取り虫は輪っかを作るような動きをするのか」「なぜ他のイモムシはのそのそと歩くのか」その動きの違いの理由をよく考えずに観察していました。
ところが、本や図鑑で腹脚の違いを知って、非常に合点がいったのでした。
生き物の動きというのは、体の仕組みに大きく関係しているので、これらを知った上で生き物を見てみると、さらに奥深い観察ができるようになりますよ!
ちなみに「イモムシの教科書」という本では、今回紹介した腹脚の数の違いの他、イモムシの様々な面白い特徴を紹介してくれているので、とてもおすすめです!
おわりに:イモムシの腹脚を観察してみよう!
イモムシは、グループごとに「腹脚の数」に違いがあります。
これを知った上で観察をすると単純に面白いですし、そのイモムシがどのグループに属するのかを知る手がかりになります。
イモムシを見つけた時は、ぜひ腹脚にも注目してみてくださいね!
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