うわー、すごい姿の毛虫がいる!
この毛虫、やっぱり毒あるの!?
こんな疑問にお答えします。
上の写真の毛虫は、ヒトリガの幼虫。
毛むくじゃらのその姿から、熊毛虫(クマケムシ)とも呼ばれています。
そのインパクトのある見た目からは、いかにも毒がありそうですが、実は上の写真の毛虫に毒はありません。
彼らに触ってもケガもしないし、はれたりするようなことはなく、むしろモシャモシャした毛並みは触り心地が良いくらい笑
※ 皮膚が弱い方やアレルギーのある方は、かゆみが出たりすることがあるようです
彼らの本当の姿を知ると、実は嫌いになるような理由はほとんどないかもしれませんよ!
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。
そんな虫好きの僕が、ヒトリガの特徴と魅力を紹介します。
※動画版はこちら▼
ヒトリガの特徴と魅力
熊毛虫(クマケムシ)は、「チョウ目ヒトリガ科ヒトリガ亜科」というグループに含まれる虫たちの幼虫です。
僕が思う、ヒトリガたちの魅力は大きく2つ。
2. 幼虫と成虫の姿のギャップ
1. 幼虫の姿は毛虫型【クマケムシ】
ヒトリガの幼虫の姿は毛虫(ケムシ)型。
熊毛虫は、毛むくじゃらで非常にインパクトのある姿をした毛虫です。
「熊毛虫(クマケムシ)」の名前の由来も、まさしくその"熊のような姿"から。
熊毛虫(クマケムシ)
見た目上はいかにも毒がありそうで、かぶれたり腫れたりしそうですが、上の毛虫は実は無毒。
下の写真のように、触っても刺されたりしません。
毛虫は「毒を持つもの」「気持ち悪いもの」といった、マイナスイメージを持たれがち。
僕も子供の頃は、毛虫に触れたりしてよくかぶれていたので、「毛虫=毒を持つもの」というイメージがありました。
しかし、実際は無毒な毛虫の方が多かったりします。
マイナスの先入観が消えると、モシャモシャした毛は哺乳類の毛皮のよう。
むしろかわいく思えてきたりして、新たな世界が開けるのです。
ところで、野生動物の世界では、"戦わないこと"はある意味「最強の生き残り戦略」。
強力な武器を持っていても、戦えば傷を負ってしまう可能性もあります。
そのため、必要がないのなら戦いは避けるに越したことはないのです。
それを考えると、ヒトリガの幼虫の姿は毒があるように見せて身を守るための「擬態」の1つなのだと思われます。
ちなみに、毛虫の中にはヒトリガの幼虫に良く似たものもいて、本当に毒があるものもいます。
だからこそ、ヒトリガの幼虫はそれら毒毛虫に似た姿をしているのですね。
毛虫を見つけた時に見分けができない場合は、触らずに見るだけの観察のみにしましょう。
2. 幼虫と成虫の姿のギャップ
先述した通り、ヒトリガの幼虫は毛深いものが多く、インパクトのある姿のものが多いです。
その姿からの想像では、以下のような姿になりそうなものです。
トビイロトラガ
しかし上記はトビイロトラガという別のグループのガで、本当のヒトリガの成虫は以下。
ヒトリガの成虫(スジモンヒトリ)
幼虫時代からは想像できない、思いの外シンプルな姿ですよね。
ほぼ真っ白のはねのものが複数いて、識別にはお腹の色を見る、なんてのもいるのです。
このようにヒトリガは、「幼虫と成虫の姿のギャップ」にも注目です!
ヒトリガの種類
ヒトリガの幼虫たち
ヒトリガの幼虫たちは、「熊毛虫」らしい長く多量の毛を持ちます。
ヒトリガ
シロヒトリ(多分)
アカハラゴマダラヒトリ or キハラゴマダラヒトリ
アメリカシロヒトリ
上で紹介した毛虫たちは、どれも毒はありません。
彼らは蛹になる前にあちこち歩き回り、道路などにも出てきてしまうので、いつも踏まれてしまわないかとヒヤヒヤします。
おかげで見つけやすく、観察もしやすいというのはあるのですが。
ヒトリガの幼虫は見分けは難しいものが多いですが、ぜひ色々なヒトリガの幼虫の姿を比べてみてください!
シンプルな姿のヒトリガ
ヒトリガの成虫は、シンプルな姿のものも多いです。
白または黄色のベースのはねに、少し黒い斑点がついている姿のものが多いです。
スジモンヒトリ
ゴマダラヒトリの一種
アメリカシロヒトリ(多分)
毛むくじゃらの姿だった幼虫たちがこんなシンプルな姿になるなんて、面白いですね!
ヒトリガ
「ヒトリガ」というヒトリガ科の代表的な名前を持つ種。
多くのヒトリガの仲間がシンプルな姿なのに対し、随分と派手な姿をしています。
体も大きく、出会うとそのかっこいい姿に胸が躍る種です。
モンシロモドキ
こちらは昼行性のガであり、明るい時間帯にヒラヒラと舞います。
その姿が"モンシロチョウに似ている"ことが、モンシロモドキの名前の由来です。
このように、ヒトリガには結構多様な種がいるんですね!
毒のある毛虫を知る方法
ヒトリガの幼虫の姿はなかなかインパクトがある幼虫です。
しかし、先述したように彼らには毒はなく、かわいらしい温厚な毛虫でした。
ところが、よく似た姿で毒を持つ毛虫もいて、知識がないと判断できない毛虫は多くいます。
そんなイモムシたちの情報を知るのにおすすめなのが、以下の「イモムシ ハンドブック」シリーズ。
この本には、イモムシたちの姿や特徴だけでなく、虫ごとの毒の有無も記載されています。
さすがに全てのイモムシは載っていませんが、この図鑑のイモムシたちを知ることで注意すべきイモムシ・ケムシの傾向は分かってくるはずです。
そういう目的でなくとも、多様なイモムシたちを眺めるだけでもとっても楽しいので、オススメの本です!
その他の幼虫図鑑は以下をどうぞ↓
ヒトリガと同じ分類に属する虫たち
ヒトリガはチョウ目ヒトリガ科に属する虫。同じ分類の虫たちを以下で紹介しています。
[チョウ目]
鱗翅目(チョウ目)の昆虫まとめ|はねに鱗粉を持つ虫たち
▼
[ヒトリガ科]
おわりに:知ることで熊毛虫(クマケムシ)も好きになれる!
ヒトリガの幼虫は、そのインパクトのある姿から、嫌われがちな虫でもあります。
実は僕も、以前はその姿におっかなびっくり観察していたのですが、毒を持たないことを知って、観察の仕方が随分と変わりました。
ヒトリガの幼虫の戦略からすると、怖がって距離を取ってもらった方が良いのかもしれませんが、今では出会うと間近でゆっくりと観察してしまいます。
このように、情報を得て先入観を排除できると、「見え方がガラッと変わる」ものです。
目に入る全ての毛虫を怖がる必要はないし、毒を持つ毛虫でも、向こうから積極的にこちらを攻撃してくることはありません。
情報を得て彼らの本当の姿を知ることで、"日常が楽しくなるような面白い発見"を得られたりするかもしれません。
今回の話でもし毛虫に興味が沸いたら、少しずつ、優しく観察をしてみてください!
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