動物保護センターにいる犬って怖いイメージ…
実際どんな感じなの?
こんな疑問にお答えします。
動物保護センターにいる犬って、怯えていたり、怖いイメージがありませんか?
僕は今回の取材で、神奈川県動物保護センターにいる保護犬たちの姿を伝える活動をしている方とお話をして、イメージが変わりました!
お話を伺ったのは、写真家の犬丸美絵さん。
神奈川県三浦半島の葉山町にて活動する写真家。神奈川県動物保護センターで保護犬の撮影や、ご自身で立ち上げたプロジェクトで動物保護の啓発活動も行う。
一緒にいる犬は愛犬Danbowくん。
以下の記事で掲載した浜田あゆりさんの愛犬たちの写真も、実は犬丸さんが撮影したものでした↓
犬丸さんはペットの犬や人の撮影だけでなく、犬を主とした動物保護の啓発活動(※)もされています。
※動物たちが幸せに暮らせるように、ペット・動物に関する知識や情報を発信する活動のこと
人との関わり方によって、犬は悲しい表情にも、キラキラの明るい表情にも変化します。
それをよく表しているのが、以下の写真。
犬丸さんが撮影した保護犬の写真(どちらも同じ犬です)
このように、犬は環境によって全く違った表情を見せます。
実は1枚目が動物保護センターに捨てられた直後の写真で、2枚目はその後新たな飼い主さんに譲渡された後の写真なのです。
犬丸さんは、こんな彼らの笑顔と幸せを心から願い、「楽しくて明るい啓発活動」をポリシーに活動されています。
というわけで、今回はそんな犬丸さんの活動内容や考えについてお伝えします!
犬丸美絵さんへのインタビュー「写真を通して飼い主のそばにいる犬がとっても幸せなことを伝えたい」
写真を始めたきっかけ【老いていく愛犬の姿を残したかった】
犬丸さんは、もともと写真が専門だったわけではないんですよね?
はい。
情報工学部出身ですので、専門と言えば情報系なんだと思います。
写真はどういうタイミングで始めたんですか?
小さい頃から写真や絵など芸術系が好きだったんですが、親の希望もあり芸術系に進まず理系大学を卒業後、JR九州に5年ほどに勤めていました。
その後神奈川に引っ越すことになり、自由な時間に写真をとにかくたくさん撮っていました。
頼まれて友人たちの写真を撮ることが増えてきたとき、「頼み辛いから、料金を取ってほしい」と言われたのが、今の仕事の始まりでした。
その後ありがたいことに口コミで撮影の依頼が増えていき、今に至ります。
30代半ばになってやっと、本来の道に進むことができた気がします。
なるほど、そうだったのですね。最初に撮り始めたのはどんな写真なんですか?
最初はずっと花と犬を撮っていました。
犬は高校生の頃に初めて飼った犬が11歳くらいになって年老いてきた時に「この子を写真に残したいな」と思って。
一眼レフカメラを買って犬を撮り始めました。
花と犬が始まりだったんですね。
はい。
2代目の犬が歳をとってきた頃にデジタル一眼レフの値段が下がってきて購入。
デジタル一眼レフは、撮影した写真がすぐに見られるので勉強しやすくて。
とにかくたくさん撮って学びました。
撮影する写真はオールジャンル。クルーズトレイン「ななつ星」の撮影をしたことも
現在はどんな写真を撮影してらっしゃるんですか?
犬の写真と人の写真が半分ずつくらいの比率ですね。
お客さまから撮影依頼されたものを撮るので、私がモデルさんを選んではいません。
撮影するテーマは絞っている訳ではないんですね。
はい、人の場合は七五三や結婚式、プロフィール写真など様々です。
JR九州に勤めていたご縁がつながって、クルーズトレイン「ななつ星」の撮影をさせていただく幸運に恵まれ、その写真が公式写真集等に採用されたことも。
これは最高の親孝行になりました。
クルーズトレイン「ななつ星」
撮影:犬丸美絵
他にも新築物件の写真など。
ご依頼いただければ基本的に何でも撮ります(笑)
お客さまは犬丸さんのことをどういったところで知って、撮影を依頼されるんですか?
ホームページやFacebook等をご覧いただいて依頼をくださる方もいらっしゃいますが、ありがたいことに、人づて、口コミのお客様が多いです。
ではお客さまは近場にお住まいの方が多いのでしょうか?
いや、そうでもないですね。
私は九州出身なので、九州のお客さまを帰省時に撮影させていただくこともありますし、神奈川では地元葉山のお客さまよりも、神奈川遠方や東京の方が多いですね。
今は葉山に来てくださるお客さまが多くなりました。
お越しくださったお客さまには三浦半島の素晴らしさを満喫していただきたく、美味しいお店やオススメの遊び場所紹介したりしています。
みなさまとても楽しんでいらっしゃるようでうれしいです。
写真を通して飼い主さんに「愛犬がしあわせであること」を伝えたい
撮影時に伝えたいと思っているメッセージやこだわりなどありますか?
はい。
犬の写真を撮り始めたのには、もう1つきっかけがありました。
とても犬嫌いの親戚のおじさんがいて。
犬に対して言うことがとても納得いくものでなく。
こんなに表情が豊かで、可愛くて、愛おしい生き物なのに、何言ってんだろ?と思って。
なので、カメラで犬の表情をたくさん撮って見せたんです。
そしたら「犬ってこんな表情するんだ」と驚いていて。
ガッツポーズでした(笑)
おじさんも見たことのない良い表情だったんでしょうね!
当時、私の住んでいた田舎では犬は外飼い・放し飼いが一般的だったんですが、我が家では家の中で飼ってたんです。
そのおじさんは犬が居るからと我が家には上がらず、犬が家の中でどんな生活をしているか知らなかったんです。
写真を見せた時のおじさんの反応を見て、スッキリしたと同時に嬉しかったですね。
それ以来、写真を通して犬のすばらしさや感情の豊かさを伝えたいと思うようになりました。
その経験は今の仕事に繋がっていて、お客さまに色々な愛犬の表情を写真でご覧いただきたいなと思っています。
写真を通して愛犬の表情を見た時に
「うちの犬がこんなにいい表情してるなんて知らなかった」
「いつも見ている表情を写真にしてもらえてうれしい」
とおっしゃって、泣いてくださることもあって。
とてもうれしい瞬間です。
そして犬単体の写真もいいのですが、家族一緒で撮った写真がとてもいいと思っています。
犬って人間より寿命が短くて、どうしても先に旅立ってしまう。
私自身、祖父の死、父の死、親友の死、愛犬の死と、この十年の間にいくつもの身近な死に直面して。
一緒に写っている写真がどんなに宝物になるかを感じました。
だからお客さまには「私のそばにこの子がこうやっていてくれたんだな」という写真を残してさしあげたい。
最近は家族写真を撮りませんか?と必ず言うようにしています。
自身の死に直面した体験が仕事への想いにつながっているんですね。
それに他の方に撮ってもらうことで、普段自分が見ていない表情など発見がありそうですよね。
あると思います。
犬たちって飼い主さんと一緒にいる時が一番良い表情をするんです。
特に良い顔をするのが、飼い主さんの横にいて撫でてもらっている時。
でもその瞬間って、飼い主さんが同じ方向を向いていて意外と表情を見ていないことが多くて。
みなさんその表情を知らなかったりするんです。
「うちの子表情なくて…」とおっしゃる飼い主さんに写真を見せると「こんないい表情してるの?」と驚かれる方が多いです。
「この子はうちに来て幸せなのかしら」というお客さまがいらっしゃるのですが、写真の愛犬の表情をご覧いただくだけで、"犬がどれだけ幸せか"って伝わるんじゃないかな?と思います。
犬丸さんの撮影した写真を通して、普段気付けていない愛犬の気持ちに気付けることもあるのですね。
犬とご家族が一緒に撮影した写真
撮影:犬丸美絵
神奈川県動物保護センターを訪れたことが動物愛護の啓発活動の転機に
犬丸さんは、動物愛護の啓発活動もされているんですよね?
はい。
3年半前に神奈川県動物保護センター(※)の撮影をさせていただいたことが大きな転機となりました。
もっと以前から啓発活動は細々としていたのですが、センターの撮影を機に想いが強くなりました。
動物保護事業や、動物愛護普及活動などの事業活動を実施。犬の殺処分は平成25年度からゼロ、猫の殺処分は平成26年度からゼロを継続中。
事業活動においては多くのボランティア団体などが協力していて、犬丸さんはセンター登録のボランティアカメラマン。
関連: 動物保護センターのホームページ - 神奈川県ホームページ
実は以下の記事で紹介した僕の愛犬のやまとも、ここで譲渡された犬でした。
センターの犬たちはブルブル怯えながら暮らしているように思っていたんです。
はい、僕もずっと怯えているようなイメージがあります。
でも実際保護センターに行ったら、犬たちが淡々とそこで生きていました。
神奈川県動物保護センターでは今殺処分していない空気もあると思いますが。
友達がいて笑っていたり、職員さんに甘えたり、喧嘩もしたり、中には隅で震えている子もいる。
でも、それぞれがきちんと生きていると感じました。
「保護センターの犬たちはかわいそう。」
「センターで生きながらえるのは愛護ではない。」
等々いろんな話がありますが、実際にセンターに通い、犬たちの生きている姿を見ると私は「事実はそうでないのになぁ。」と思いますね。
8年ほど前に、神奈川県動物保護センターの卒業犬が出産、母犬と子犬たちを撮影させていただきました。
その時の写真が好評をいただき、写真展を開くことに。
それがきっかけで、その子を保護したボランティア団体とご縁がつながりました。
そのころから、チャリティーフリマや撮影会をしたり、チャリティーカレンダーを作らせていただいたり。それが啓発活動の始まりでした。
5年ほど前から動物保護センターで保護犬の写真を撮ってほしいというお話もいただきましたが、勇気が出ず、ずっとお断りしていました。
ですが4年ほど前、「現センターがなくなる前に、センターの建物を数年前まで殺処分し続けたという忘れてはならない現実として写真に残して欲しい」というお話をいただいたときに、撮影に行かなければいけないと感じました。
「捨てる」ということは動物の表情を変えてしまう行為
初めてセンターに着いたとき、軽自動車が横に止まりました。
後部座席にお年を召したご夫婦と笑顔のかわいい犬が乗っていて。
「まさか捨てにきたわけじゃないよね」と思いつつ撮影へ。
半日後、最後に個室収容房の撮影に行ったら、最後の部屋にその犬がいたんです。
その子の表情を見て愕然としました。
つい半日前笑顔だった犬が、とても言葉にできない表情に変わっていたんです。
この子はあっという間にすべてを悟っている。
「この犬が幸せになるまで追い続けたい」。
そう思ってセンターに通って撮影するようになりました。
センターに捨てられた犬(スタッフォードシャーブルテリア)の表情
捨てられた理由は、近所の人に「その犬種って噛むよね」と言われたから。
本犬は朝まで家族とお布団で寝ていたとってもいい犬です。
3ヶ月後に保護団体さんによりセンターから引き出されました。
当時7才位。シニアのスタッフォードシャーブルテリアだけに時間はかかりましたが、1年半後に無事新しいご家族へ譲渡されました。
1時間ほど譲渡先のご家族とともに過ごした後の表情
<犬丸さんが撮影してきた他の犬たちの写真>
大介くん
※1枚目:センターに入った当初、2枚目:センターから引き出された後
クロトくん(現ヤマトくん)
※1枚目:センターに入った当初、2枚目:新しい飼い主さんに譲渡後
犬たちはセンターで職員さんから、引き出し後はボランティアさんたちからの愛情を受け、本来のその子の笑顔に戻っていきます。
そして新しいご家族のもとで愛情を受け安堵し、さらに若返って見違えるように美しく、元気がみなぎっていきます。
生きていたからこそ、本来の笑顔に戻ることができる。
活動を通して、私が見てきた事実を伝えていきたいと思っています。
動物保護センターでの取り組みと、保護犬を新たな家族に迎え入れる
センターに通うようになって、色々と取り組みたい課題も増えました。
たとえばどのような点でしょうか?
犬がきちんと生きていること、職員さんやボランティアさんが犬たちのために尽力し協力し合っている現実と、ネット等に流れている情報の乖離が気になるようになりました。
いろいろな苦情対応等に割かれる時間で、本来の業務にしわ寄せが出て、結果収容されている動物たちが困ることになることを感じたり。
そこで頑張っている現場を見てもらって感じていただけたらと思い、センター見学会「みんなでセンターへ行こう」を企画して、2年弱続けてきました。
今は新センターへの移行時期でお忙しいので休止しています。
新センターが動き始めたら、これからは保護犬をもっと知っていただいて、保護犬を迎えようと思っている方の助けになるような見学会を開催していく予定です。
立ち上げ時コラボしていたTumugu=つむぐ=プロジェクトの活動報告↓
※2018年9月までのセンター見学会の記事。現在はSwimmy One・Wan Project主催で別の見学会を立ち上げています。
私は犬たちを保護して里親さんへつなぐ保護活動は、仕事上、生活上できません。
ですので、写真やことばを通して、私が見知ってきた事実、犬たちの気持ちを伝えるという、私にできることをつづけています。
犬たちの表情の変化や感情の豊かさを写真で感じていただくことで、こんなすばらしい犬たちを棄てるなんてありえないでしょ??と思っていただけたらと感じています。
半年前、運命的な出会いではじめての保護犬のDanbowを家族に迎えました。
彼のおかげで保護犬のすばらしさをあらためてたくさん知り、また新しい視点で啓発活動をできるようになりました。
出会いに感謝しています。
新たな家族・Danbowくん
「Swimmy One・Wan Project」明るくて前向きな啓発活動を続けたい
今までの経験をもとに、昨年(2018年)2月に友人と2人で「Swimmy One・Wan Project」という動物啓発団体を立ち上げました。
明るく前向きに、基本は笑顔で。
犬たちが笑顔でいられるような、飼い主さんたちが楽しく啓発活動に参加できるようないろいろなイベントを開催しています。
いろんな犬たちが楽しく仲良くしている様子は人間の心を動かしてくれます。
元保護犬もペットとしてずっと幸せに暮らしてる犬たちも、みんな同じ、いい意味で「ただの犬」です。
保護犬たちと実際にふれあうことで、彼らのすばらしさを伝えたい。
そして同時に保護犬だけに限らず、犬を家族に迎える前のアドバイスも。
迎える前にぜひ知っておいていただきたいことなどもお伝えしていけたらと思っています。
前向きなポリシー素敵です!
また実際に保護犬とふれあって、彼らのことを知るのが一番大切ですよね。
啓発活動にはいろいろな方法があります。
私は、「私たち一愛犬家が今できることをする」その小さな積み重ねが、いつか大きな流れになるといいなと思うんです。
犬たちはいつも前向きに今を生きています。犬たちを見習って、今できる最善を尽くす。
自分にできることって何だろう??
それを考えるきっかけになれるような、啓発活動をしていきたいと思っています。
すべての犬に幸せでいてほしい。
ただただそのために動いていきたいと思います。
おわりに:犬丸美絵さんの連絡先など
今回の取材のおかげで、保護センターで暮らす動物たちの生活を少しだけ知ることができました。
僕が実家で一緒に暮らしていた「やまと」も保護センターから引き取った犬でしたが、とっても優しくてお利口な犬でした。
人に捨てられたりして、悲しい思いをする犬が少しでも減るよう、この記事を通じて保護センターの正しい姿や尊い命たちのことが伝わればと思います。
動物たちを守る活動をしている犬丸さんの活動も応援したいと思います!
保護犬の話になると、「かわいそう」「私は何もしてあげられない」と落ち込んでしまう方もいるんですが、私たちにできることはたくさんあります。
「なにかしたい」「どうしたらいいだろう?」と思われたら、ぜひSwimmy One・Wan Projectのイベントなどにご参加ください。
実際に保護犬たちと触れ合って"楽しく"何かを感じていただけたらと思います。
犬丸さんの活動を知りたい・参加したい!という方は、以下のページからぜひ連絡してみてください!
合わせて以下の記事もどうぞ↓
ペットのリハビリの仕事にインタビュー!
飼い主と獣医さんの橋渡し役として活躍する浜田あゆりさんにインタビュー。「人どうしが手を取り合って、動物との暮らしをよりよいものにする」
ハーブを使った植物療法について知りたい!
犬の植物療法を伝える、ぽちの和・まつばらりつこさん。「ハーブを学んだことで愛犬との暮らしがもっと楽しくなった」
自然や生き物に関わる活動を知りたい!