ネイチャーエンジニア いきものブログ

虫・鳥などの動植物の魅力や知識など、自然観察をもっと楽しむための情報を発信します。

森の保全活動に参加して分かった、森林管理の大変さ

本ブログには広告が含まれます。

森

ここは良い森だなあ!

ところで、このような森の管理ってどうしてるのかな?

こんな疑問にお答えします。


林内に明るい日が差し込み、美しい鳥のさえずりが響き、彩りのある植物も見られる−−。


そんな、"いるだけで良い気分になれる森"って、ありますよね。


人里近くにある、人の生活に利用されてきた森は「里山」と呼ばれたりします。


この里山は、人が手を入れることで良い環境が維持されています。


しかしながら、実は良い状態の里山環境を維持するのは、なかなか大変。


この素晴らしい環境というのは、実は管理している方々の多大な時間と労力を使うことによって成り立っているものなのです。


僕はネイチャーエンジニアの亀田です。


全国各地で生き物観察をし、森の保全活動にも参加しています。


そんな僕が、「森林の管理の大変さ」について紹介します。




 

森林の保全活動は肉体労働

僕は全国各地の森で生き物観察をしてきましたが、良い環境が保たれている森もあれば、逆に手入れが行き届かずに荒れた状態になってしまっている森も見てきました。


そのような状況を見るにつれ、

「森を良い状態に保持するため、どのように手入れをしているのだろうか?」
「未来に良い状態の森を残していくには、どうしたら良いのだろうか?」

ということに強く興味を持つようになりました。


その後、僕が大好きな森の1つで「森の保全活動ができるボランティア」があることを知り、参加することに。


いざ参加してみると、森の保全活動というのはガッツリと肉体労働であり、大きな労力を要するものでした


また、継続的な対応が必要とされるので、その分の時間も消費します。


僕はかつて「自分の森を持ってみたいな」なんて思っていましたが、自分がイメージするような良い森の環境を保持するには、かなりの時間と体力を割かれることになることが分かりました。


僕の知人で、「以前から憧れていた、森の中にある家を購入したが、毎週のように草刈りに追われることになり、1年ほどで手放すことになった」と言っていたのを思い出しました。


ちなみにここでいう「森林」は山奥にあるような、人の手が入っていない自然林ではなく、人里近くの「里山」と言われるような森を指します。


里山は、林の樹木が薪や炭として使われるなど、かつてから人の生活に利用されてきたような森です。




森林の管理はどう大変なのか?

では森林の管理は、どう大変なのでしょうか?


管理作業の例としては、以下のようなものがあります。

・間伐
・草刈り
・落ち葉かき
・通行路の危険木の除去
など


例えば「間伐」をする場合。


細い樹木は手ノコギリでも対応できますが、ある程度大きくなった樹木の場合はチェーンソーで伐採します。


伐採した木は基本的に車で外に運び出しますが、そのためには「車に載せる」という作業も必要です。


樹木一本をそのままは運べないので(重さと長さで)、幹はチェーンソーでさらに細かくカットしてから運びます。


その際、横に伸びた枝はナタなどで枝打ちします。


幹は50〜100cm程度の長さに細かくカットしたとしても、最低10kg程度はあるので、これらを車に積み込むのもなかなかの重労働です。(積み込むということは、積み下ろしもあります)


さらに作業が終わった後は、使った道具のメンテナンス作業が待っています。


ある程度の規模の間伐を行う場合、1日で終わる作業ではないので、何日もこの間伐作業を行うことになるでしょう。


このように間伐一つに注目しただけでも、かなりの時間と労力、費用が必要になるのです。


ちなみに単体の作業としては上記のような感じですが、長期目線で見ると間伐には他の作業があります。


森林保全における間伐をする目的は「森林の若返り化」です。
(※かつての里山では、「材木や、薪や炭の材料を得るため」というのが主目的であったと思います)


間伐をした後には切り株から新たな芽が出てきて、それが成長することで森の若返りがされますが、芽がまだ小さいうちは、背丈の高い草などに日光を遮られて負けてしまいます。


そのため、間伐後1〜2年は草刈りやつる植物の取り外し作業が必要になります。


このような作業を継続的に対応しないと良い里山環境は保てず、実に多大な労力が掛かるのです。


快適な森林環境を保持するのは大変
森


ちなみに僕が参加している保全活動では、少なくとも毎週30人以上は参加しています。


森の規模が大きい&園路管理などもあるためではありますが、ある程度の労働力が必要なことは確かです。


地主が最初は森を管理していたものの、高齢化などで管理ができなくなり、放置された森になってしまうことが多いと言うのもうなずけます。


また最近のキャンプブームで森を購入する方が多いようですが、ある程度はこれらの作業をし続けないと、購入時の良い状態を保つことはできないと思います。


購入を検討しているなら、購入前にメンテナンスに必要な作業や費用を調べておいた方が良いと思います。


▼生き物の戦略から人生の学びを得る本▼


森林の管理をしないとどうなるのか?

では、もし森林の管理をしないとどうなってしまうのでしょうか?


先ほどから手入れされていない森のことを「荒れた森」と表現していますが、例えば以下のような状態になる可能性があります。

危険性が増す

林内の樹木の間伐などをせずに放置すると、それらの樹木は老齢化していきます。


そうすると、台風などの際に倒木が増えるなど、林内の危険性が増してしまいます。

快適性が減る

適切な草刈りが行われないと、林内にササなどが繁りすぎて暗くなってしまいます。


そうすると、森の中の快適性が減るほか、林床に日が当たらなくなり、背丈の低い植物は成長できなくなってしまいます。

快適性が減る

適切な草刈りが行われないと、林内にササなどが繁りすぎて暗くなってしまいます。


そうすると、森の中の快適性が減るほか、林床に日が当たらなくなり、背丈の低い植物は成長できなくなってしまいます。

生物多様性が損なわれる

適度に森の手入れがされていると、様々な樹齢や樹種の植物が存在し、結果的に多様な動物が生息する環境になります。


逆に手入れをされずに放置されてしまうと、日の光が少なくても生育できる植物や、大きくて強い植物に偏っていき、背の低い植物は日の光を受けられなくなってしまいます。


例えば、ライバルの少ない春だけに花を咲かせるスプリング・エフェメラルと呼ばれる植物などは、放置された林では成長しづらくなります。


スプリング・エフェメラルの代表種カタクリ
カタクリ


他にも、人が手を入れた環境に適応してきた動植物には、森の管理がされなくなると生きにくくなってしまうものもいます


このように、里山環境では人が手を入れることで、生物多様性が高まる場合も多くあるのです。

今後の里山保全の課題

僕が参加している団体では、活動を長期的に捉えると"ある課題"があります。


その課題とは、「高齢化」。


僕が活動している団体のメンバーの多くは、定年を迎えた方々がほとんどで、現役世代はほとんどいません


30代後半の僕でもほぼ最年少であり、年齢的に倍近く離れた先輩方も多くいます。


僕の場合、活動が事業とリンクしているため積極的に参加していますが、多くの現役世代の場合では、活動に参加するにはハードルがあると思われます。


もちろん活動は毎週参加必須とかではないのですが、仕事を持つ現役世代は可処分時間が少ない方が多く、定期的に活動できる人というのは相当に限られるでしょう。


とはいえ活動の中で学べることは非常に多く、意義もあるので、個人的にはこういったボランティア活動への参加はとてもオススメです。


ちなみに僕の場合、「森の保全活動について学びたい」ということが参加したことがきっかけですが、実際大正解でした。


作業を通じて期待した以上の多くの学びがあった上に、先輩方からも生きた学びが多く得られます。


また、学べるのは知識だけではありません。


先述したように作業自体はかなりの肉体労働なのですが、高齢になってもバリバリ作業する姿からは「森への愛」というメンタル的な学びも。


その姿勢には本当に尊敬しており、僕も今後その想いを引き継いで森を守っていきたいと感じています。


少し話がそれましたが、結論を言うと、現状森の保全は、大先輩方によってギリギリ支えられている状況です。


僕は全国各地に自然観察に赴きますが、どこでも山や森林の手入れをしているのはご高齢の方ばかり。


きっとどの地域においても、同様の課題を抱えているのでしょう。


このままでは、今残っている日本の美しい里山の風景は、なかなか見られないものになってしまうかもしれません。

森林・里山管理の今と昔

ところで里山というのは、昔から維持されてきた環境のはずですが、なぜ今になって保全が難しくなっているのでしょうか。


その理由は、「日本人の生活スタイルの変化や機械化」にあります。


例えば、以下のような変化があります。

・薪や炭を得るためにコナラやクヌギが一定年数おきに伐採されて定期的に森は若返っていた
→化学エネルギーが主流になり、伐採されなくなった


・雑木林の落ち葉や枯れ草は、水田の堆肥として利用。落ち葉かきや下草刈りにより、林床に日が当たる環境が維持されていた
→化学肥料の登場でその作業の必要がなくなった


・水田は、水生生物の大事なすみかとなっていた
→圃場整備による乾田化、農薬使用、水路のコンクリート化ですみかが消失


環境変化により、ホタルも減少
ゲンジボタル


このように、以前は普通に生活を営んでいると、それが自然と里山管理になっていたのですが、今は里山の資源を活用しない生活が主流になりました。


そのため、今は生活と切り離した形で作業しなくてはならなくなったのです。


こうなると、別の仕事で生計を立てる必要のある若い世代は、強い興味がある場合などでなければ、なかなかこういった活動に参加できないのです。

里山を未来に残すために何ができるのか?

では、未来に里山を残していくために、僕たちには何ができるのでしょうか?


僕が何よりも大事なのは、「多くの人が、里山および自然への興味・愛を持つこと」だと思っています。


残念ながら、僕以下の世代の方で、里山の現状を理解し課題に取り組んでいる人は非常に少ないです。


その証拠に、僕が活動している団体でも、僕以下の世代の方はほとんどいません。


そんな若い世代に興味を持ってもらうには、もっと発信をしたり、活動で成果を残して注目される必要があるかもしれません。


また、あまり時間が取れなくても参加できる仕組みを作ったり、コミュニティに属することで育児など日常生活の負担を軽減するようなことができたら良いかもしれません。


幸いにも僕は、今参加している活動の中で工夫できる余地はありそうですし、このブログなど発信するツールも持っています。


僕たちの世代でも森や里山を守り続けることができるよう、継続的にアクションを考えて、やれることをやっていきたいと思っています!


ぜひ、みなさんもお近くの森や里山のことを調べてみたり、機会があればボランティア活動などにも参加してみてほしいです


社会貢献にもなりますし、きっとご自身にとっても有用な経験になると思います!


熱くなって長文になりましたが、また何かご報告・共有できるようなことがあれば、ブログを通じてお伝えしたいと思います!


環境を育成して、野鳥を呼ぶゲームも配信中!こちらもぜひ、遊んでみてください↓


■ 鳥パラダイス

環境育成&野鳥観察シミュレーションゲーム!

鳥パラダイス

f:id:kkamedev:20180714123115p:plain f:id:kkamedev:20180714123127p:plain


他の虫の紹介、虫ゲーム・アプリ、虫観察、用語解説などに関する記事はこちらから↓

虫に関連する記事まとめへ