あ、奇麗な紫色の花が咲いてるよ!
この植物って、どんな植物?
こんな疑問に答えます。
写真の植物は、カタクリ。
反り返った紫色の花が美しい、里山のような環境に咲く植物です。
またカタクリは春限定で花を咲かせる植物で、出会うと春の訪れを感じられて嬉しい気分に!
しかしカタクリには各地で数が減少し、多くの都道府県で絶滅危惧種に指定されているという問題もある植物です。
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な動植物に出会ってきました。
そんな生き物好きの僕が、カタクリの特徴と魅力を紹介します。
カタクリは紫色の美しい花を持つ人気の植物
紫色の美しい花
カタクリは以下のような美しい紫色の花を咲かせるユリ科の植物です。
紫色の美しい花
反り返った花びらが特徴的で、美しくもかわいらしくも見えますよね。
カタクリは、里山のような環境の林床で見られます。
後述しますが、カタクリは春先に花を咲かせる「スプリング・エフェメラル」の仲間。
カタクリは春先に咲かせる特徴とその姿から、とても人気のある植物でもあります。
片栗粉の原料とされていた
カタクリは漢字で書くと「片栗」。
すでに連想した方も多いかもしれませんが、カタクリは揚げ物の衣やとろみづけに使用される「片栗粉」と関係のある植物です。
片栗粉は、もともとはカタクリの地下茎のデンプンから作られた粉でした。
現在市販されている片栗粉はカタクリから作られるわけではなく、多くはジャガイモから製造されているようです。
カタクリはスプリング・エフェメラルの一種
カタクリは「スプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)」と呼ばれる植物の1種でもあります。
スプリング・エフェメラルとは「春のはかないもの」という意味の言葉で、”春先の短い期間だけに花を咲かせる植物たち”のこと。
カタクリも主に3〜4月くらいの短い期間に花を咲かせます。
春先に花を咲かせるカタクリ
植物たちが光合成を行うには「光」が必要です。
しかし背の低いスプリング・エフェメラルの植物たちにとって、光を得るために背の高い植物たちと競争するのは分が悪い。
そこで、「ライバルの少ない季節に先行して花を咲かせて種子を作ってしまう」という戦略を取っているのです。
※カタクリの生存戦略からの学びについては、著書「弱虫の生きざま」で紹介しています↓
カタクリは種が土に植えられてから花をつけるまでに7~10年ほどかかるという、非常に成長の遅い植物です。
なぜなら、これらの植物はライバルとの争いを避けて春先の短い時間だけに光を浴びるという戦略上、どうしても「得られる光の量が少なくなってしまう」から。
実は他のスプリング・エフェメラルの仲間も、花を咲かせるまでに何年もの期間がかかるものが多いのです。
また、カタクリの種子散布はアリによって行われます。
そのため、種子の移動量はあまり大きくなく、分布の広がりは遅く・狭いのです。
カタクリは絶滅危惧種
残念ながら、カタクリは各地で数が減少している植物。
そのため、多くの都道府県で絶滅危惧種に指定されています。
その大きな理由として考えられているのが、「里山の荒廃」により林の手入れが行き届かなくなってしまったこと。
先述した通りカタクリの競争力は弱く、春先のわずかな光を頼りに成長する植物です。
しかし下草刈りといった林の手入れがされないと、ササが生い茂るなどして光が届かなくなってしまう。
このように林内環境が変化して光が得られなくなると、カタクリは生き残りづらくなってしまうのです。
生き残ったカタクリがいても、先述した通りカタクリは成長の遅い植物なので復活には時間が掛かるでしょう。
ちなみに里山の荒廃の影響は、カタクリだけでなく他の里山生物も受けています。
例えば、カタクリで吸蜜するギフチョウなども絶滅が危惧されています。(ギフチョウの食草であるカンアオイが減少したため)
「春の女神」とも呼ばれるギフチョウ
人間活動は悪影響を与えるイメージが強いですが、人間活動によって生活を支えられてきた動植物もたくさんいるのですね。
かつて身近な場所で見ることのできた生き物たちが、見られなくなっていくのはとても悲しいことです。
人間生活の変化による様々な環境問題もある現在、「共生=自然とお互いにメリットのある暮らし方」を模索していきたいものです。
おわりに:カタクリを観察してみよう!
カタクリは、春限定で美しい紫色の花を咲かせる植物です。
ちなみに、カタクリの減少には「愛好家による乱獲」も少なからず影響はあるようです。
採取は、他の人がその植物を楽しむ機会を減らすことにもつながる可能性があります。
採取全般を否定するつもりはありませんが、僕は1人で楽しむよりも「他の人と生き物の魅力を共有して楽しむ」方が、観察の楽しみはより高まると考えています。
特に希少な動植物こそ、採取をすべきかどうか慎重に考えたいものです。
自然にとっても人にとっても優しい形で、カタクリの観察を楽しみましょう!
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