植物の種ってドングリとか果物とか色々な形のものがある…。
何で色々な種類のものがあるの?
こんな疑問にお答えします。
植物を含む生き物たちにとって、いかに子孫を残すかは非常に重要な話です。
しかし植物は動物と違って、自ら移動することはできません。
以下の記事では、自ら動けない植物が受粉するためにしている工夫をお伝えしました。
今回の焦点は、受粉したあとにできた種(タネ)をいかに色々な場所に運ぶかという話。
種子の運び方も植物ごとに様々な面白い工夫があり、植物が面白い点の1つです。
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な植物にも出会ってきました。
そんな僕が、今回は植物が種を運ぶ理由と方法を紹介します。
植物が種を運ぶ(種子散布)理由
植物にとっては、子孫を残すための種(タネ)を出来るだけ遠くに・色々な場所に運ぶ方がメリットがあります。
なぜなら、できるだけ生息場所を拡散させた方が、その植物の血が途絶えずに生き残る可能性が高まるからです。
種を色々な場所に運ぶことを種子散布と言います。
例えば、今その植物がすごく居心地の良い場所であったとします。
その植物の種が遠くに運ばれると、場所によっては寒かったり、日が当たりづらかったり、今よりも生きづらい環境で暮らす事になるかもしれません。
ところがもともといた場所が、火事によって一帯が焼け野原になってしまった。
するとどんな居心地が良い場所だったとしても、一箇所に密集して暮らしていた場合、一族は全滅してしまう可能性があります。
しかし仲間が方々に散って色々な場所で暮らしていれば、生息地の一箇所がダメになっても一族の血を残すことができる。
これが植物が種を運ぼうとする理由です。
種子散布の種類
先述したような理由で植物は種子散布をしたいわけですが、困った事に植物は自ら動くことができません。
そのため、植物たちは色々なものの力を借りて種を運ぼうとします。
これが実に様々な工夫があって、とっても面白いんですね!
種子散布には大きく以下のような方法があります。
風散布:風に種を運んでもらう方法
水散布:水に種を運んでもらう方法
自動散布:自らの力で種を移動する方法
重力散布:重力の力を借りて運んでもらう方法
動物散布
動物散布は、動物に種を運んでもらう方法です。
この散布方法の中でもいくつかのタイプの運び方があり、大きく以下の3つに分けられます。
・周食型
・貯食型
付着型
付着型は、動物に種をくっつけて運んでもらう方法。
子供の頃によく人につけて遊んだ「ひっつき虫」と呼ばれるものは、このタイプの植物です。
ちなみに僕は今でも茂みに入ったり草むらを歩いたりするので、大人になってからもひっつき虫とはよく接点があります。
そんな僕が草むらに入ったあと、服についたひっつき虫に気付いて払い落とす行動は、植物の掌の上で転がされている状態なわけです笑
このタイプの散布方法を用いる植物には、以下のようなものがいます。
センダングサ類
ヤブジラミ
周食型
周食型は、果実やフルーツを種と一緒に食べてもらい、糞として排泄される事で運んでもらう方法。
特に鳥は翼を持っていて、より遠くに種を運んでくれるので、植物にとって重要なパートナーです。
視覚に頼る鳥たちに見つけてもらうためか、果実タイプは目立つ色をしているものが多いですね。
いかに鳥に発見してもらい、美味しそうに思ってもらうかが大事なのです。
例えば以下のヒヨドリは、甘い果実が大好きな鳥です。
ヒヨドリ
このタイプの散布方法を用いる植物には、以下のようなものがいます。
ミカン類
クワ
貯食型
貯食型は、周食型と同様に動物に食料として運んでもらいますが、「貯蔵」されることを組み込んだ方法であることが違います。
このタイプの代表的なものはドングリです。
ドンクリは固い殻に覆われており、長期保存も可能です。
なのでリスのような哺乳類や、鳥たちは秋などにこれらを集めて巣などに貯蔵しておくんですね。
そして貯蔵した生き物がどこかで死んでしまったり、貯蔵した種を忘れると、放置されたタネから発芽することで分布が広がるという戦法です。
ちなみにドングリを食べる鳥として代表的なのが、カラスの仲間であるカケスです。
カケス
このタイプの散布方法を用いる植物には、以下のようなものがいます。
コナラ
アリ散布型
アリ散布型は、エライオソームというアリが好む物質と一緒に種をアリに運んでもらう方法。
アリは「エライオソーム+種」を巣に運びますが、食べるのはエライオソームだけなので、残された種子は地中で発芽する、というものです。
このタイプの散布方法を用いる植物には、以下のようなものがいます。
オオイヌノフグリ
風散布
風散布は、風に種を運んでもらう方法です。
そのため、軽くて風を受けて遠くに飛んで行きやすい形状をしているものが多いです。
身近で有名なものだと、タンポポの綿毛(わたげ)ですね!
このタイプの散布方法を用いる植物には、以下のようなものがいます。
タンポポ
ガマ
水散布
水散布は、水に種を運んでもらう方法です。
以下のオニグルミは川沿いによく生息する樹木ですが、オニグルミの実は川に落下してどんぶらこして遠くに運ばれて行きます。
イメージは、桃太郎の桃です。
オニグルミ
自動散布
自動散布は、自らの力で種を移動する方法。
例えばカタバミは実が熟すと、膨れあがってパンパンになります。
その状態の時にちょこっと何かが触れようものなら「パンッ!」と破裂して、大量の種が周囲に弾け飛ぶのです。
このように自らの力で種を遠くに飛ばすような散布方法です。
このタイプの散布方法を用いる植物には、以下のようなものがいます。
カタバミ
フジ
重力散布
重力散布は、重力の力を借りて運んでもらう方法。
ドングリは重力で地面に落ち、周囲にコロコロと転がってそこで発芽します。
この方法のデメリットは、移動距離が短いこと。
代わりに親が育ったのと同じ環境で育つことができるので、大人に成長できる可能性は高いようです。
コナラ
植物は複数種類の種子散布を用いる
お気付きかもしれませんが、コナラは「動物散布」「重力散布」2つの種類の種子散布法を併用しています。
実は植物は複数の散布方法を組み合わせているものも多いです。
こうすることによって、例えばドングリの食べ残しをする動物がいなくて分布が広がらなかったとしても、とりあえず重力散布によって次世代に分布拡大のタスキをつなぐことができます。
色々な手段を講じておくことが、子孫を残すためのリスク回避になるのですね。
おわりに
植物の種には、子孫を残すための様々な工夫がされています。
これが植物によって色々な工夫を凝らしていて面白いんです。
自分の周りを環境を利用したり、他の動物たちを利用したり。
でもきっと、僕らが気付いていない彼らの工夫もたくさんあるはず。
もし外で植物の種を見つけたら、彼らがしている工夫についても考えながら観察してみてください!
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