カラスは賢い鳥って聞くけど、どんなふうに賢いの?
こんな疑問にお答えします。
日本では身近な野鳥、カラス。
カラスというと「賢い鳥」というイメージがあります。
実際カラスたちは車にくるみを割らせたり、水道の蛇口をひねって自分で水を出すなど、人間の道具を利用する行動も取るすごい鳥たち。
そんなカラスたちの「賢さの秘密」について考察してみたいと思います!
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な野鳥に出会ってきました。
そんな鳥好きの僕が、カラスの賢さの秘密を紹介します。
街中でも見られる黒いカラスたち
一般的に僕たちよく目にするカラスには、「ハシボソガラス」「ハシブトガラス」の2種類がいます。
ハシボソガラス
ハシブトガラス
いずれも「スズメ目カラス科」に属する大型で黒い姿の鳥たちで、ざっくり特徴を紹介すると以下の通り。
・ハシブトガラス…都市部の街中や公園を好む都会派のカラス
ハシボソガラスの方がくちばしが細く、体も少し小さいです。
※両者の詳しい違いや比較は、以下の記事で紹介しています↓
この2種は身近な場所で見られるカラスですが、どちらも「賢い行動」を取る面白い・すごい鳥たちでもあります。
カラスの賢い行動とは
カラスというと「賢い動物」と言われることがあります。
賢さを示す行動の例として代表的なのが、ハシボソガラスがくるみを車に踏ませて割って食べる、という話。
それはこういう行動です。
↓
・車の進行方向にくるみを置く
↓
・信号が変わり、車が進むとくるみを踏んで殻を割る
↓
・カラスは自分で割らずにくるみの中身を食べることができる
人間の道具を利用しようと思うなんて、賢い行動ですよね!
ハシボソガラス
これ、僕は賢いのは当然あると思うのですが、それと同じくらいカラスは「観察力」が高い動物だとも思うのです。
例えば、カラスたちは道を走っている車を見ながらこんな風に思っているのでしょう。
「車って、すごいスピードで走っていてパワーもありそうだなあ」
そうやって毎日見ていると、あるとき思いつくのです。
「俺いつもくるみ割るのに苦労しているけど、車に割ってもらえば良いんだ」
それで車が通る瞬間を見計ってくるみを落としてみました。
すると、いつもより簡単にくるみを割ることができたんです。
一方、都市公園に多いハシブトガラスの方でも、観察力の高さを感じる瞬間があります。
都市公園に多いハシブトガラス
カラスはゴミを荒らしするのは分かっているので、公園ではちゃんと対策されてゴミ箱にフタがついています。
でも中には、ゴミ箱からちょっとだけはみ出ているゴミ袋があったりします。
彼らはそういうのを目ざとく見つけて、ゴミ箱にやって来るんですね。
そしてそのはみ出たゴミを落とさないように丁寧に丁寧に抜き出して、持っていってしまう。
このように、彼らは観察力が非常に優れた鳥でもあるんですね。
見ている人間たちの方も、ついつい感心してしまう鳥、それがカラスなのです。
カラスの賢さの秘密は「遊び」にある?
先述したように、カラスは賢い行動を取る鳥。
しかし、その"賢さの秘密"はなんなのでしょうか?
先ほど紹介した通り、カラスは「観察力」もある鳥だと思いますが、観察だけでは利益を得ることはできません。
利益を安定的に得るためには、行動をして試行錯誤を重ねて学習する必要があります。
くるみ割りについても、最初から停止中の車の前に置いたわけではなく、色々試行した結果「車が停止中にくるみを仕掛けた方が良い」と学習したのでしょう。
というわけで、カラスが賢さを得ている理由の仮説の一つが「遊び」との関連性です。
カラスは「風に乗って遊ぶ」「電線にぶら下がる」「滑り台を滑る」など、生きるために必要とは言えない「遊び」のような行動を取ることが知られています。
ハシブトガラス(人工物をくわえている)
「遊びと学びの関連性」について、スウェーデンのルンド大学で実験が行われました。
道具を使ってえさを取るという課題に当たって、事前に道具で遊ぶグループと遊ばないグループに分けて比較する、というものです。
結果としては、事前に道具で遊んでいたグループの方が結果が良い結果になりました。
その結果について、以下のような考察がされています。
このテスト結果では「鳥はものを使って遊ぶことで、そのものの物理的特徴を学ぶことができ、実際に道具として使う時によりよい選択ができる」ということは示されましたが、同時に「全ての鳥が同じようにおもちゃを道具として使えるのではなく、行動には個体差が大きい」ということも示されています。
そしてランバート教授は
「『報酬を目的とせずものを使って遊ぶこと』は、そのものの特性や、問題解決に利用できるアフォーダンスを鳥たちに与えますが、鳥たちが腕を磨いたり新しい行動を生み出したりする結果にはなりません」
「カレドニアカラスたちはオブジェクトを触ることで得た情報を後のタスクに適応していました。しかし、彼らが問題解決の情報を得るためにオブジェクトの特性を戦略的に調査をしていたかどうかの情報は得られませんでした」
と述べています。
上記の通り、遊びが問題解決の刺激やヒントは与えているであろうことは確かなようです。
一方で「遊びの活用は個体差が大きい」「遊びが動物の新しい行動や能力向上を生み出す結論には至っていない」ようです。
つまり、学習コストが高かったり、狙って効果を得られるかは分からないものの、遊びをしていない個体に比べるとヒントを多く与えられるということ。
日々の行動から、人間が作り出した道具を含めて「遊んでいるカラスは、(効率が良いとは言えないかもしれないものの)新たな発見を得られる可能性が高い」とは言えると思います。
カラスを観察する際には、彼らの「遊び」にも注目すると面白い発見があるかもしれません。
※カラスを含む動植物の生存戦略からの学びについては、著書「弱虫の生きざま」で紹介していますので、こちらもぜひご覧ください!
ハシブトガラスとハシボソガラスと同じ分類に属する鳥たち
ハシブトガラスとハシボソガラスはスズメ目カラス科に属する鳥。同じ分類の鳥たちを以下で紹介しています。
[スズメ目]
スズメ目の野鳥まとめ|美しい声を持つ鳥類最大のグループ
▼
[カラス科]
カラス科の野鳥の種類と魅力|黒くないカラスがいる?実は多彩な姿の鳥たち
おわりに:カラスの遊びを観察してみよう!
カラスは一般的には怖がられたり嫌われがちな鳥のイメージですが、実に面白い能力や行動を取る鳥です。
しかも実はカラスを身近に見られる場所というのは、世界的にはあまりなく、日本のように多くの街中で間近に見られる環境というのは珍しいのです。
せっかくの環境なので、ぜひ一度身近なカラスたちをじっくりと観察してみてください!
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