もうすぐ春の季節だなあ。
…あ、きれいな花が咲いてる!
まだ寒い季節なのに、花を咲かす植物って意外といるんだね!
こんな疑問にお答えします。
写真の植物は、スプリング・エフェメラルの一種。
スプリング・エフェメラルとは、"春先の短い期間だけに花を咲かせる植物たち"のことです。
しかし春先という季節は、実は植物にとって花を咲かせるのに適した時期とは言えません。
実はスプリング・エフェメラルの植物たちがこの季節に花を咲かせるのには、「戦略的な意味」があるのです!
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な動植物に出会ってきました。
そんな生き物好きの僕が、スプリング・エフェメラルの種類と魅力を紹介します。
スプリング・エフェメラルとは
「スプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)」とは、ある特徴を持つ植物たちのことを指す言葉です。
スプリング・エフェメラルの言葉を日本語に訳すと、「春のはかないもの」という意味。
この言葉の通り、スプリング・エフェメラルの仲間たちは、”春先の短い期間だけに花を咲かせる植物たち”(※)なのですね。
※春だけに見られる昆虫たちの一部を「スプリング・エフェメラル」と言うこともあります
例えば、スプリング・エフェメラルの一種であるカタクリは、主に3〜4月の2ヶ月間のみに花を咲かせ、その後は来春まで休眠してしまいます。
紫色の花が美しいカタクリ
このような習性を持つスプリング・エフェメラルたちは「春の妖精」と呼ばれることもあります。
スプリング・エフェメラルの植物たちの戦略
春先というのは、実は花を咲かせるのには適さない季節。
実際、この時期に花を咲かせている植物は多くありません。
なぜなら、
・他の植物が少ないため、芽を出せば草食動物に狙われやすい
・「寒の戻り」で凍結や雪に見舞われることもある
ため。
しかしそれでもなおこの時期に花を咲かせるのには、それだけの「メリット」もあるから。
そのメリットとは、”ライバルが少ない”こと。
植物たちが光合成を行うには「光」が必要ですが、背の低いスプリング・エフェメラルの植物たちにとって、背の高い植物たちと競争して光を奪うのは不利。
そこで、ライバルの少ない季節に先行して花を咲かせて種子を作ってしまう。
そうすることで、競争力の高い植物たちとの衝突を避けているのです。
春先に花を咲かせることは、競争激しい野生の世界で生き延びるための「弱者の戦略」なのです。
※スプリング・エフェメラルの戦略を含む動植物の生存戦略からの学びについては、著書「弱虫の生きざま」で紹介しています↓
ちなみにスプリング・エフェメラルの植物たちは、少ない昆虫たちに自分を発見してもらいやすいよう、体全体に対して大きく華やかな花をつけるものが多い。
そのため、人からも人気の高い植物たちなのです!
スプリング・エフェメラルの植物たち
セツブンソウ
節分の頃に花を咲かせることが名前の由来。
花の中心は黄色の蜜腺が輪状になっていて、とてもオシャレな姿の花です。
ムラサキケマン
華鬘(けまん)というのは仏前にお花を飾るための仏具のことで、これに姿が似ていることが由来。
花の色が全体的に紫色のケマン。
ウスバシロチョウの食草でもあります。
おわりに:スプリング・エフェメラルを観察してみよう!
スプリング・エフェメラルは春だけに美しい花を咲かせる植物たち。
ところがそんな彼らは、彼らは減少の危機にも直面している植物でもあります。
スプリング・エフェメラルの植物たちは地上部にいる期間が短いため、成長が遅く、花を咲かせるまでに何年も掛かるものが多い。
かつて里山では人の手によって「林の下草刈り」などが行われていましたが、生活環境の変化などによって手入れがされなくなり、林床の環境が変化。
ササや常緑の低木によって薄暗い林になると、光が届きにくくなってしまうことが悪影響を及ぼしている一因のようです。
人間活動というのは、良い方向にも悪い方向にも動植物に大きな影響を与えているのですね。(僕らに何かできることがないか、これからも考えていきたいものです)
このように、スプリング・エフェメラルの植物たちを観察できるというのは、希少な状況になってきています。
彼らに出会ったら、優しくその美しい姿を観察させてもらいましょう!
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