あ、アリがいる!…と思ったら、何か違う?
この虫は、一体何?
こんな疑問に答えます。
写真の虫はアリのように見えますが、その正体は「クモ」。
アリグモという、「アリ」に擬態したハエトリグモの仲間です。
アリグモのアリへの擬態テクニックは実に巧みで、姿だけでなく行動まで真似ているほどです。
今回はその驚くべき"アリへの擬態"について、紹介します!
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。
そんな虫好きの僕が、アリグモの特徴と魅力を紹介します。
アリグモの特徴と魅力
アリに似た姿のハエトリグモ
アリグモは「クモ目ハエトリグモ科」という分類グループに属します。
クモというと、糸を張って「クモの巣」を作って獲物が引っかかるのを待つ、"待ち伏せタイプの狩り"をするイメージ。
しかし、ハエトリグモは歩き回って獲物を探す、"ハンティング型の狩り"をするクモたちです。
そのハエトリグモの中でも、名前の通りアリグモは「アリ」によく似た姿をしています。
アリによく似た姿のアリグモ (メス)
ちなみに、本物のアリの姿はこちらです。
クロオオアリ
写真の通り、本当にアリにそっくりな姿ですよね。
これは、虫の世界では強者であるアリに「擬態」をすることで、身を守っていると考えられています。
ハエトリグモの仲間は、以下のように「丸みのある寸胴な体型」のものが多い。
ヨダンハエトリ
しかしアリグモの場合、「アリらしいスマートな体型」のほかにも、他のハエトリグモとは違った特徴が見られます。
頭胸部(2つに別れた体のうちの前の方)には「くびれ」があり、まるで頭と胸が分かれているように見えます。
さらに、腹部には「白線」が入っていて、こちらもアリの特徴を実に巧みに再現しています。
このように、様々な部分にアリの要素を含めているのですね。
ちなみに、オスはメスと姿が異なり、「鋏角」と呼ばれる上あご(=牙)が大きいです。
アリグモのオス
この大きな上あごもアリへの擬態が関連していて、こちらは「ものを運んでいるアリの姿」に擬態しているようです。
このような細部に拘った、ハイレベルの擬態には、本当に驚きですよね!
行動もアリに似ている
アリグモのアリへの擬態は、姿だけにとどまりません。
なんと「行動」まで、アリに寄せているのです。
ハエトリグモというと、歩行のほかにピョンピョンと「ジャンプ」をして移動もします。
しかしながらアリグモの場合、ジャンプはせずに”歩行のみ”で移動をおこなうのです。
さらにさらに、アリというと「触角」を動かして、他のアリとコミュニケーションを取っている姿をよく見かけますよね。
アリグモはこの仕草もちゃんと真似ていて、”8本ある脚のうちの前の2本を触角のように動かす”のです。
脚を触角のように動かすアリグモ
初めてアリグモを見た時は、あまりに擬態が巧みすぎて、何度も姿を見直しました。
観察会などでアリグモの紹介をすると「ええ〜、アリじゃなくてクモなの!?」といつも驚かれ、いわゆる鉄板ネタになっています笑
アリグモを観察するときは、このような巧みな擬態行動の数々に注目です!
アリグモには他にも種類がいる
今回紹介したのは「アリグモ」という種でしたが、実はアリグモの仲間は一種類だけではなく、他にも種類がいます。
例えば、以下のようにより細長い姿を持つヤサアリグモなど。
ヤサアリグモ
このようなアリグモを含むハエトリグモについてもっと知りたいなら、「ハエトリグモ ハンドブック」がオススメです。
ハエトリグモをここまでまとめてくれている一般向けの図鑑はほとんどないと思います。
この記事を読んで彼らに興味が出たら、ぜひご覧になってみてください!
アリグモと同じ分類に属する虫たち
アリグモはクモ目ハエトリグモ科に属する虫。同じ分類の虫たちを以下で紹介しています。
[クモ目]
▼
[ハエトリグモ科]
ハエトリグモ(蠅捕蜘蛛)の種類と魅力。小さな体のかわいい虫ハンターたち
おわりに:アリグモを観察してみよう!
アリグモは身近な場所に暮らしていますが、今までアリと思って気付かずにスルーしてきた方も多いと思います。
もし今度アリのような姿の虫を見つけたら、ぜひじっくりと観察してみてください。
そのアリのような姿の虫は、アリグモの仲間かもしれませんよ!
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