カブトムシ、カマキリ、トンボ…。
昆虫には色々な種類があるけど、強いのはどんな虫なの?
こんな疑問にお答えします。
昆虫には色々な種類がいるけど、一体どの虫が最強なのか?
誰しもが一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
しかし、「最強の虫を決めるのは難しい」です。
なぜなら、ある環境では食物連鎖のピラミッドの上位にいる虫も、環境が変わればその地位を守れなくなり得る。
それに強力な武器を持っていても、その武器を活かせる状況が限定されていれば、やはり安定した勝利は得られません。
例えば、優秀な飛翔速度を持つ大型の昆虫であるトンボ。
彼らは直線的な高速飛翔をして獲物を捉えることが多く、基本的にひらけた場所で生活していることが多い。
日本最大級のトンボ、オニヤンマ
ところが木や草が密集していて、視界も悪い、薄暗い森のような環境では、普段の強さを発揮できない可能性があります。
このような理由で、最強の虫を決めることは難しいのですが、昆虫界で強者として位置付けられているであろうことを示す指標があります。
それは、「他の虫から擬態されていること」です。
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。
そんな虫好きの僕が、昆虫界で強いとされる虫について紹介します。
昆虫界ではどんな虫が強いのか?
強い虫とは
「強い虫」というと、
・相手をバリバリと捕食する
・相手を倒すための強力な武器を持つ
といったことをイメージすると思いますが、戦いで相手を倒すことができる=強者であるとは限りません。
野生の世界の中で生き延びるには、相手を倒す力を持つことよりも、「敵から恐れられること」「攻撃されないこと」の方が大事であったりします。
相手と戦った時に自分がケガをしてしまえば、次の戦いでは負ける可能性が高まります。
常に弱い相手のみと戦えれば良いのでしょうが、相手を選べない世界で連戦連勝ができるのは、本当に一部のもののみでしょう。
そこで生き延びるのに重要なのが「攻撃されないこと」です。
例えば、体内に毒を持っていると、捕食者は食べると苦しい思いをしてしまうので、好んで食べません。
こうして敵との戦いを避けているのです。
このように戦って勝つのではなく、「そもそも戦わない」ということが、野生の世界で生き延びるのに置いて需要なポイントなのです。
強者を真似る「擬態」
毒を持つ動物には、体内で毒を生成するだけでなく、ウスバシロチョウのように、毒を持つ植物を食べて体内に毒を蓄積する者もいます。
毒を体内に蓄えるウスバシロチョウ
しかし毒を身に付けるのは、植物の毒を克服&利用する仕組みを作る必要があるなど、簡単ではありません。
そこで毒を身につけるコストをかけずに利用してしまおうというのが、「擬態」です。
擬態というのは、何かの姿を真似て、自身に有利な状況を作る手法のこと。
例えば「自身は毒を持っていないけど、姿を真似ることで敵に毒を持っているように思わせる」といった形です。
このような強者に姿を似せる擬態を「ベイツ型擬態」といい、僕の著書「弱虫の生きざま」の中でも紹介しています。
「ベイツ型擬態」の使い手、トラフカミキリ
もちろんコストをかけずに強者を利用することにはデメリットもあるのですが、それは本の中で人間社会の例を交えて詳しく紹介しています。
擬態されるものは強者である
つまり、擬態されているということは
ということになり、「擬態される者=強者」と言えるかと思います。
擬態には姿だけでなく、匂いなど目に見えないものの擬態(化学擬態)といったものもあります。
※擬態について詳しくは以下で紹介しています。
ここからは僕の想像の話ですが、擬態にはまだ知られていない「性質」や「行動」を真似しているものもいるかもしれません。
例えば、
・あの植物の裏にいると見つかりにくいらしい → あの植物の裏に隠れよう!
など。
上記のようなものは既存の擬態としての定義にはありませんが、有利な状況を真似る手法は様々にあり、小さなものや臆病なものが「強者」として真似られることもありうるのですね。
擬態というのは複数の生物の状況から生まれる複雑な戦略で、実に奥が深いのです。
擬態される強い昆虫たち
スズメバチ
擬態される代表的なものが、ハチ。
その中でもスズメバチは強力な毒を持ち、やはり昆虫界でも恐れられる存在のようです。
こちらに擬態している虫たちが、以下。
■ マツムラナガハナアブ
ハナアブという、花に集まるハエの仲間(名前にアブとついていますが、ハエです)。
もちろん、毒はありません。
■ アカウシアブ
山に生息する大型の吸血性のアブ。
登山中に出会うと、姿と大きさからスズメバチに追われていると思ってびっくりしてしまう虫です。
■ トラフカミキリ
「弱虫の生きざま」でも紹介している、スズメバチそっくりのカミキリムシ。
以下のように、顔までスズメバチにそっくりです。
テントウムシ
小さくて可愛らしいイメージのテントウムシも、昆虫界の中では強者。
体から黄色くて苦い毒を出すため、昆虫の嫌な天敵である鳥たちにも食べられにくい存在なのです。
こちらに擬態している虫たちが、以下。
■ ヘリグロテントウノミハムシ
テントウムシそっくりの姿ですが、よく見ると長い触覚があります。
ヨツボシテントウダマシ
なんと「テントウムシダマシ科」という分類グループがあります。
そのグループに属する、テントウムシのような色味と斑紋を持つ虫。
■ キボシマルウンカ
分類的にはちょっと遠い、カメムシ目というグループに含まれる虫。
知らないとテントウムシだと思うくらい、テントウムシそっくりの見た目です!
アリ
人間から見ると小さく、弱者の象徴とされがちなアリですが、実は昆虫界では強者。
蟻酸(ぎさん)という酸性の毒を持ち、その大きなアゴで集団で相手を攻撃する、恐ろしい虫たちなのです。
アリは、「強者であるはずの虫たち」からも多く擬態のモチーフにされています。
こちらに擬態している虫たちが、以下。
■ アリバチ
このアリバチ自身にも毒がありますが、その姿はアリそっくり。
強者であるはずのハチでさえも、姿を似せるほどにアリは恐れられているのです。
■ アオバアリガタハネカクシ
「ペデリン」という毒を持ち、触れるとやけどのような水ぶくれが発生することから、「やけど虫」と呼ばれています。
■ アリグモ
写真はアリグモのメス。
頭に近い2本の脚(あし)を触覚のように動かして、擬態の精度を高めています。
クモも捕食する側の立ち位置で強者なはずですが、アリに姿を似せた方がより生き残りやすいということなのでしょうね。
おわりに:強者の真似をする虫たちを観察してみよう!
虫たちを観察していると、一見すると弱そうな、意外な虫が色々な虫に擬態されていたりします。
そんな擬態する/されるの関係を観察するのも面白いので、ぜひ観察してみてください!
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