あ、スズメバチ!
と思ったけどちょっと違うような…これは何ていう虫?
こんな疑問にお答えします。
写真の虫は、アカウシアブ。
スズメバチによく似た姿をしていますが、ハチではなくアブです。
ハチもアブも"人を刺す虫"というイメージが強いですが、それぞれ人を刺す理由は実は全然違います。
よく似た姿であったり似た行動を取っていても、その理由や背景に多様性があるのが昆虫の面白い点でもあるのです!
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。
そんな虫好きの僕が、アカウシアブの特徴と魅力を紹介します。
アカウシアブはスズメバチに似た姿を持つ国内最大のアブ
アカウシアブは「ハエ目アブ科」というグループに属する昆虫。
その姿は黄色と黒の配色をしており、その大きさと体型からも、「スズメバチにそっくりの姿」をしています。
アカウシアブには山でよく出会いますが、不意に出会った時にスズメバチとよく勘違いしてしまいます。
スズメバチのような姿を持つアカウシアブ
上の写真のように止まっていれば識別できるのですが、素早く飛んでいると細かな点が確認できないので、勘違いしやすいんですよね。
ちなみにスズメバチの姿はこちらです。
ヒメスズメバチ
特に「頭部(複眼、触角など)」が全然違うので、ここを確認すると簡単に識別できます。
ところで姿に注目すると、黄色と黒の配色をした姿は、スズメバチ同様になかなかかっこいいです。
またサイズも30mmほどにもなる大型の種で、吸血性アブの中では国内最大級です。
刺されることがあるのでなかなかじっくり観察する余裕はないかもしれませんが、余裕のある状況の時は、ぜひそのかっこいい姿にも注目してみてください!
アカウシアブとスズメバチの違い
先ほど紹介した通り、アカウシアブとスズメバチの姿はよく似ています。
また、両者には「人を刺すことがある」という行動においても共通点があります。
ただし、アカウシアブとスズメバチでは、”人を刺す理由”が全く異なるのです。
人を刺すこともあるアカウシアブ
まずスズメバチが人を刺す理由は「自身や巣を守るため」です。
例えば、スズメバチをつかむなどして身の危険を感じさせた時、または巣に近付いた時などは、防御のために人を刺すことがあります。
一方でアカウシアブの場合は、「人から栄養分を得るため」に人を刺します。
産卵のため多くの栄養分が必要なアカウシアブのメスは、リスクを冒して人や牛などの動物に近付き、皮膚を噛むことによって出た血を吸うのです。
※そのためアブの場合、正確には「刺す」ではなく「噛む」が正しい表現になるかもしれません。
このような習性の違いから、スズメバチはこちらから近付かなければ刺されることはありませんが、アカウシアブの場合は向こうから近付いてきます。
登山などをする方は、こちらに近付いてきたアカウシアブをスズメバチと間違え、びっくり&焦った経験があると思いますが、それは上記のような習性が原因だったのですね。
ちなみに人を刺すのは、スズメバチもアカウシアブも「メスのみ」ですが、これも両者理由が異なります。
スズメバチの毒針は「産卵管」という卵を産みつけるための器官が変化したものなので、それを持つのはメスのみになります。
これに対してアカウシアブの場合、人を刺すのは”産卵のための栄養分を得るため”なので、メスのみなのです。
このように、似た行動を取る虫であってもその理由や背景は全然違うこともあり、昆虫の多様性の面白さの1つなのです!
※刺すアブ・刺さないアブの話は以下の記事でも紹介しています↓
おわりに:アカウシアブを観察してみよう!
アカウシアブには、夏に山に行くと出会うことができます。
実際出会った時は刺されないようにするため、観察どころではないかもしれません。
しかしもし余裕が持てたら、ぜひその姿や行動をじっくりと観察してみてください!
虫のすごい能力や特性を楽しめるバトルゲームも配信中!こちらもぜひ、遊んでみてください↓
■ 虫が主役のターン制バトルRPG「虫&バトル」
他の虫の紹介、虫ゲーム・アプリ、虫観察、用語解説などに関する記事はこちらから↓