ひえー、動物の死体に集まっている虫がいるよ!
この虫ってなんていう虫?
こんな疑問に答えます。
写真の虫は、「シデムシ(死出虫) 」という昆虫。
「死」なんて言葉が入っていて、なんだかとっても気味の悪い名前ですよね。
しかも、"動物の死体に集まっているところでよく見かける”という、これまた不気味なイメージです。
しかしながら、シデムシはただ気味が悪い虫なだけではありません。
実は自然界において、"重要な役割"を担っている虫なのです。
というわけで、今回はこのシデムシたちの真の姿に迫ります!
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。
そんな虫好きの僕が、シデムシの特徴と種類を紹介します。
- シデムシ(死出虫)は動物の死体に集まる気味の悪い虫?
- シデムシは分解者としての役割を持つ
- シデムシの種類
- シデムシの生活から学ぶべきもの
- シデムシ科と同じ分類に属する虫たち
- おわりに:シデムシを観察してみよう!
シデムシ(死出虫)は動物の死体に集まる気味の悪い虫?
シデムシは「コウチュウ目シデムシ科」というグループに属する昆虫たちです。
シデムシを漢字で書くと「死出虫」と書きます。
なんだか気味の悪い名前ですよね。
その名前の意味は「死体があると出てくる虫」であり、ますます怖い感じです。
シデムシがこう呼ばれるのには、彼らの「食性」が関係しています。
それは、シデムシが動物の死体や腐食した植物などを食べること。
例えば、以下は「モグラの死体」に集まっていたヨツボシモンシデムシ。
モグラの死体にいたヨツボシモンシデムシ
僕はヨツボシモンシデムシはモグラの死体で見ることが多く、それ以外の場所で見たことはほとんどありません。
さらに、オオヒラタシデムシは身近な場所で見られるシデムシですが、「死んでいるオオヒラタシデムシを、同種の別個体が食べている」という場面もよく見ます。
同種の死骸を食べるオオヒラタシデムシの幼虫
このように、シデムシはまさに「死体があると出てくる」という習性を持つ虫たちなのです。
シデムシは分解者としての役割を持つ
シデムシは”動物の死体を食べる”という、ちょっと気味の悪いイメージの虫です。
しかしながら一方で、このような習性を持つ虫たちは、生態系においてはとても大事な存在でもあります。
なぜなら、彼らは"エネルギーの再生"という役割を担っているため。
動物の死体などの有機物は、最終的には微生物が分解して土に還しますが、死体のような大きなままの状態では分解できません。
しかしシデムシがいることによって、
↓
・小さな糞という単位で外に出す
↓
・微生物が糞を土に分解する
という流れで、土に還すことができるようになるのです。
このような働きを持つものを「分解者」といいます。
シデムシは死体に集まるので不衛生な虫と思うかもしれませんが、むしろ彼らのおかげで自然は綺麗な環境に保たれ(掃除屋的な役割)、さらには「自然の再生」をも担っているのですね。
実際、シデムシがたくさんいる場所は自然豊かな場所であることが多いです。
シデムシは動物が多くいるような豊かな場所であるからこそ生きていくことができ、一方でシデムシが動物の死体を分解することによってエネルギーの再生を促す。
このように相互に支え合うことによって、自然のバランスが成り立っているのです。
シデムシの種類
オオヒラタシデムシ
最も身近に見られると思われるシデムシ。
動物の死体にもよく集まるが、ミミズを食べる姿もよく見られる。
ベッコウヒラタシデムシ
胸部が赤いシデムシ。
メスは腹部が突出していてはねの外にはみ出るが、その腹部は美しいメタリックグリーン。
ヨツボシヒラタシデムシ
シデムシの仲間は黒い姿のものが多いが、乳白色の体を持つ。
見られる場所も他のシデムシと違って地面でなく、木の上など高い位置であることが多い。
クロシデムシ
他のシデムシよりも大型。
丸くて光沢があり、カブトムシ感がある。
ヨツボシモンシデムシ
モグラの死体でよく見るシデムシ。
僕は山でしか出会ったことがありません。
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シデムシの生活から学ぶべきもの
先述した通り、シデムシは豊かな自然から恵みを得る代わりに、「分解者」という役割によって自然再生を手伝っています。
このシデムシの生活スタイルは、人の活動にも活かせる点があるように思います。
現代の人の生活では、"自然資源の消費だけ"をする方向性のものが強く、再生・還元の観点が抜け落ちているケースが多いように思います。
例えば「里山」といわれる場所においては、山の恵みを食材や木材として人が消費・利用させてもらってきました。
一方で、里山では人が定期的に間伐してきましたが、それによって森には多様な環境が存在するようになる上に森の若返りも起こり、多くの生き物のすみかになっていました。
また、里山にある田んぼには多くの水生生物が暮らし、人の活動によって生かされている生物もたくさんいました。
つまり人の活動が他の生き物の活動にも良い影響を与えていて、相互に支え合っている状態だったのです。
しかし近年では、化学燃料が主流になって木材は使われなくなり(=老齢化した森は放置)、農薬散布や田んぼの水路がコンクリートで改修されたり、人だけにメリットがあるような形のものが多くなりました。
その結果バランスが悪くなり、今まで身近だった様々な生き物が絶滅の危機に瀕していたりします。
このバランスの悪い状態では、人にとってもよくないことが起こります。
例えばマグロなど海産物の漁獲量は年々減少しており、それでも同じように消費していると、マグロが将来食べられなくなる危惧があります。
このままバランスの悪い状態を続けると、人にとってもよくない事態は増え続けていくでしょう。
消費だけをする生き物は、その豊かな生活を長く維持することは難しい。
シデムシのように、資源を消費した分だけ資源の再生も助ける必要があるのです。
そこで今は「SDGs」という目標が掲げられ、世界的に人の生活をバランスの良い方向にシフトしていく流れになっています。
一人一人が持続可能な社会について考え、行動に移していくことが大事な時代だと思います。
僕の活動の目標としても「未来に今以上の自然が見られるようにする」というものがあるので、その目標の実現に向けてできることを考え・実行していこうと思います。
シデムシ科と同じ分類に属する虫たち
シデムシ科はコウチュウ目に属する虫。同じ分類の虫たちを以下で紹介しています。
[コウチュウ目]
甲虫目(コウチュウ目)の昆虫まとめ|頑丈なはねを持つ昆虫最大のグループ
おわりに:シデムシを観察してみよう!
シデムシは地面を這うタイプの昆虫であり、意識しないとなかなかその存在に気付けないかもしれません。
しかし、実は色々な種類のシデムシがいて、その姿もそれぞれユニークなのです。
山や森に行ったら、ぜひ地面で生活する虫たちにも注目してみてください!
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