あ、鳥がいるよ!
あれ、この鳥はカモ…にしては大きいような?
こんな疑問にお答えします。
写真の鳥は、マガン。
ガンは「カモ目カモ科」というグループに含まれる鳥たち。
ガンの一種であるマガンは、日本で飛来するガンの中で最も飛来数の多い種。
そう聞くと身近に見られる鳥かと思いますが、飛来地は局所的で、どこでも見られるというわけではありません。
また一時は個体数が減り、1971年に「日本の天然記念物」に指定された鳥でもあるのです!
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な野鳥に出会ってきました。
そんな鳥好きの僕が、マガンの特徴と魅力を紹介します。
マガンは飛来数の最も多いメジャーなガン(雁)
冒頭の通り、マガンは「カモ目カモ科」に含まれる鳥たちですが、いわゆる「カモ」とはイメージの異なる鳥です。
一般的に「カモ」と呼ばれる鳥たちは主に水中で活動しますが、ガンは主に昼に活動するスタイルで、農耕地などでえさをついばむ様子を観察できます。
その中でマガンは、日本に飛来するガン類の中で最も飛来数の多いガン。
つまり、”日本で最もメジャーなガン”と言えるでしょう。
それだけに、名前も"真"の雁と書きます。(マガン=真雁)
日本で最もメジャーなガン、マガン
マガンは全長72cmと、大きさもシルエットも「カモとハクチョウ(同じくカモ科)の中間」的なイメージ。
一見地味に見えますが、実際に出会うと「カモのかわいらしさ」と「ハクチョウの優雅さ」を兼ね備えていて、なんだか魅力的な鳥なんです。
ちなみにマガンのお腹には目立つ「黒い横じま」があり、上空を飛んでいる時もよく目立ちます。
マガンのお腹にある横じま
マガンに出会ったら、この横じまにも注目してみてください!
マガンは天然記念物
マガンは日本で最も飛来数の多いガンですが、ガン類はどこでも気軽に見られる鳥ではありません。
実はマガンはもともと全国各地に飛来する鳥でしたが、生息環境の悪化や狩猟圧によって減少してしまったという過去があります。
それから時を経て1971年に「日本の天然記念物」に指定され、狩猟対象からも除外。
このような保護の甲斐があり、個体数は無事回復してきたようです。
例えば日本におけるガン類の最大の飛来地は宮城県で、「伊豆沼・内沼」にはなんと”10万羽”ものガンたちが飛来します。
僕も実際に訪れてガンのねぐら入り・ねぐら立ちを観察したことがありますが、あらゆる方向から集合・離散するガンたちは圧倒的なインパクトで、感動的な体験ができます。
編隊を組んで飛翔するマガン
ところで、「こんなにたくさん飛来するのに、なぜ気軽に見られないの?」と思うかもしれません。
実はガン類の飛来地は局所的であり、宮城県への飛来数が飛び抜けているのです。
そのため、例えば自宅近くの農耕地でガンを気軽に観察、というのはほとんどの地域では難しいでしょう。
もし自宅近くの場所でよくガンが見られるのであれば、その場所は人によってはとてもうらやましい環境だったりするのです。
マガンの警戒システム
マガンは群れて行動する鳥であり、日本にいる時は「家族単位」で行動します。
複数の家族が集まり、大きな群れとなることも多いです。
このようなマガンですが、彼らは「警戒心の非常に強い鳥」でもあります。
田んぼ1枚分以上離れているにも関わらず、危険を感じると飛び立ってしまうのです。
マガンの警戒心の高さには、”ある仕組み”が関係しています。
その仕組みとは、群れの中に「見張り役」がいること。
マガンを観察していると、群れの仲間が一心不乱にえさを食べていても、1羽は首を上げて周囲を観察している個体がいます。
それが、見張り役です。
群れの中に1羽はあたりを観察している個体がいる
見張り役は、例えば人が一定距離以上に近付くと、周りに警戒を伝えます。
すると、群れの仲間たちも顔を上げて警戒体勢に。
その状態でさらに近付くと、それはもう一斉に、群れが飛び立って行くのです。
そのためマガンに対して他の鳥たちの感覚で近付くと、多くの場合マガンを飛ばす結果になってしまうでしょう。
それにしても、マガンは鳥の中ではかなり大型で、他の鳥よりは捕食などされにくそうですが、強い警戒心を持っています。
それだけ野生の世界で生き抜くのは厳しく、ちょっとした油断が命取りになるのかもしれません。
マガンと同じ分類に属する鳥たち
マガンはカモ目カモ科に属する鳥。同じ分類の鳥たちを以下で紹介しています。
[カモ目]
カモ目の野鳥まとめ|水上生活に適応した美しい水鳥たち
▼
[カモ科]
鴨(カモ)の種類と魅力|カモは地味な野鳥ではない!実は個性的で面白い姿を持つ
おわりに:マガンを観察してみよう!
マガンは決して派手な姿をしているわけではありません。
しかしマガンを実際に見ると、かわいらしさと美しさの共存したなんとも言えぬ魅力があり、なんだかハマってしまう鳥です。
僕もシーズンに1回は無性にマガンに会いたくなるので、ほぼ毎年マガンのいる場所に遠征して観察しています。
その魅力は噛めば噛むほど味が出る的なものなので、ぜひ実際に観察して確認してみてください!
著書「弱虫の生きざま」では生き物たちの生きざまから得られる多くの学びを紹介しています。
本ではマガンの話も登場するので、ぜひご覧になってみてください!
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