ネイチャーエンジニアの亀田です。
最近、いろんな生き物が減ってきてる…。
生き物たちを守るには、何が必要なの?
こんな疑問を持つあなたに、
里山の生き物を守る方法の1つ、「萌芽更新(ぼうがこうしん)」
について解説します。
僕は年に100回以上虫や野鳥を見に探索に出かけます。
先日も、とある里山に出かけてきました。
そこで、萌芽更新の効果を目の当たりにしたのです。
そういえば、昨日久々に行った公園。
— 亀田恭平(ネイチャーエンジニア) (@kkamedev) July 26, 2018
下草が生い茂っていた林が萌芽更新されていた。
林が明るくなって、タマムシやコガネムシがブンブン嬉しそうに飛んでた。
この公園で、今までこんな光景見たことなかった。
雑木林に住む生き物にとって、伐採による若返りは本気で大事なんだな。
萌芽更新の意味については、公園などで簡単に解説されていることがありますが、「なぜ」生態系にとって良いか、詳しく書いてあるものはあまりありません。
僕は虫たちがあまりに元気に活動していたので、その理由を知りたくて詳しく調べてみました。
この記事で、調べた結果をまとめて解説します。
萌芽更新とは
コナラやクヌギなどの広葉樹は、木を伐採すると、伐採された切り株から新芽(ひこばえと言います)が出てきます。
これを利用して、
定期的に林の木を伐採して、林を若返りさせること
を「萌芽更新」と言います。
※新芽が出ることを「萌芽」と呼びます
こういう風に人の手を入れて、定期的に若返りを繰り返している林が「雑木林」なのですね。
実は雑木林は天然の林ではなく、「人工林」なのです。
対して、人の手を加えていない林を「原生林」と言います。
萌芽更新していない林
ササが生い茂り、林内は薄暗い状態です。
萌芽更新した後の林
林内に光が差し込むようになり、そこから背の低い植物が育つようになります。
ちなみに、伐採された木は、
- 薪
- 木材
- シイタケを植え付けるほだ木
などに利用されます。
雑木林が放置される理由と、生物多様性への影響
現在、放置されて管理されない(=萌芽更新されない)雑木林が増えています。
その理由は、
- エネルギー源が石油などへの変化
- 木材の輸入が自由化されたことによる、国産材の価格低下
などによります。
木は自然のものなんだから、人が手を入れない方がいいんじゃないの?
僕も今の仕事をする前はそう思っていました。
対象が原生林についての話であれば、人の手を入れない方がいいのかもしれませんが、「雑木林」に関して言えば放置してはいけないのです。
なぜなら、雑木林は人の手によって管理されるのが前提の人口林。
雑木林で見られる生物多様性は、実は自然のものではなく、人の手で作り出したものなの、ということです。
そんな雑木林の放置が続くと、以下のような流れが発生します。
雑木林が放置
↓
大木・成長速度の速い植物が有利になる
※さらに20年以上放置されて大木になると、伐採しても「萌芽」しなくなる
↓
カシやシイ、竹などの割合が増える
↓
林内は暗くなる
↓
若い植物が育たず、樹種が少なくなり多様性がなくなる
このように、明るい場所で育つ広葉樹を好む生物たちが住みづらい場所になり、多様性がなくなってしまうのです。
萌芽更新で復活する生き物たち
今失われている里山の生物多様性は、そもそも人間活動が生み出したもの。
なので、それを復活するには人の手が必要なのです。
逆に考えれば、人の手によって再生できる、と希望が持てますよね。
萌芽更新によって、復活が期待できる生き物はこんな生き物たちです。
カブトムシ
ヤマトタマムシ
その他、カミキリムシやクワガタ、コナラなどを食草とするチョウ、などの復活も考えられます。
また、これらの虫を食べる野鳥たち、が戻ってくることも期待できます。
これらの虫たちが復活できる理由は、萌芽更新によって朽木ができるなど、「彼らの幼虫のすみか」が生まれるからです。
例えば、都市部でヤマトタマムシが減っていますが、成虫が生きる場所がないからではありません。
都市では朽木が撤去されて、幼虫が生きていけないから、です。
おわりに
- 萌芽更新の意味
- 雑木林が放置される理由と、生物多様性への影響
- 萌芽更新で復活する生き物たち
を解説しました。
個人的な話ですが、僕は将来、多様性を復活する活動をしたいと思っています。
そのためには、雑木林が必要とされる社会や、人と自然が共存する生き方、を見直して作っていくことが大事になりそうですね。
それに気づかせてくれた、先日の公園での「萌芽更新」に感謝です。
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