ネイチャーエンジニア いきものブログ

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里山の生物を守る方法 - 雑木林の萌芽更新を分かりやすく解説

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ネイチャーエンジニアの亀田です。

 

最近、いろんな生き物が減ってきてる…。
生き物たちを守るには、何が必要なの?

 

こんな疑問を持つあなたに、

 

里山の生き物を守る方法の1つ、「萌芽更新(ぼうがこうしん)

 

について解説します。

 

僕は年に100回以上虫や野鳥を見に探索に出かけます。

 

先日も、とある里山に出かけてきました。

 

そこで、萌芽更新の効果を目の当たりにしたのです。

 

 

萌芽更新の意味については、公園などで簡単に解説されていることがありますが、「なぜ」生態系にとって良いか、詳しく書いてあるものはあまりありません。

 

僕は虫たちがあまりに元気に活動していたので、その理由を知りたくて詳しく調べてみました。

 

この記事で、調べた結果をまとめて解説します。

 

 

 

萌芽更新とは 

コナラやクヌギなどの広葉樹は、木を伐採すると、伐採された切り株から新芽(ひこばえと言います)が出てきます。

 

これを利用して、

 

定期的に林の木を伐採して、林を若返りさせること

 

を「萌芽更新」と言います。

 

※新芽が出ることを「萌芽」と呼びます

 

こういう風に人の手を入れて、定期的に若返りを繰り返している林が「雑木林」なのですね。

 

実は雑木林は天然の林ではなく、「人工林」なのです。

 

対して、人の手を加えていない林を「原生林」と言います。

 

萌芽更新していない林

ササが生い茂り、林内は薄暗い状態です。

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萌芽更新した後の林

林内に光が差し込むようになり、そこから背の低い植物が育つようになります。

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ちなみに、伐採された木は、

  • 木材
  • シイタケを植え付けるほだ木

などに利用されます。

 

雑木林が放置される理由と、生物多様性への影響

現在、放置されて管理されない(=萌芽更新されない)雑木林が増えています。

 

その理由は、

  • エネルギー源が石油などへの変化
  • 木材の輸入が自由化されたことによる、国産材の価格低下

などによります。 

 

木は自然のものなんだから、人が手を入れない方がいいんじゃないの?

 

僕も今の仕事をする前はそう思っていました。

 

対象が原生林についての話であれば、人の手を入れない方がいいのかもしれませんが、「雑木林」に関して言えば放置してはいけないのです

 

なぜなら、雑木林は人の手によって管理されるのが前提の人口林。

 

雑木林で見られる生物多様性は、実は自然のものではなく、人の手で作り出したものなの、ということです。 

  

そんな雑木林の放置が続くと、以下のような流れが発生します。

 

雑木林が放置

大木・成長速度の速い植物が有利になる

※さらに20年以上放置されて大木になると、伐採しても「萌芽」しなくなる

カシやシイ、竹などの割合が増える

林内は暗くなる

↓ 

若い植物が育たず、樹種が少なくなり多様性がなくなる

 

このように、明るい場所で育つ広葉樹を好む生物たちが住みづらい場所になり、多様性がなくなってしまうのです。

 

萌芽更新で復活する生き物たち

今失われている里山の生物多様性は、そもそも人間活動が生み出したもの。

 

なので、それを復活するには人の手が必要なのです。

 

逆に考えれば、人の手によって再生できる、と希望が持てますよね。

 

萌芽更新によって、復活が期待できる生き物はこんな生き物たちです。

 

カブトムシ

カブトムシ

 

ヤマトタマムシ

ヤマトタマムシ

 

その他、カミキリムシやクワガタ、コナラなどを食草とするチョウ、などの復活も考えられます。

 

また、これらの虫を食べる野鳥たち、が戻ってくることも期待できます。

 

これらの虫たちが復活できる理由は、萌芽更新によって朽木ができるなど、「彼らの幼虫のすみか」が生まれるからです。

 

例えば、都市部でヤマトタマムシが減っていますが、成虫が生きる場所がないからではありません。

 

都市では朽木が撤去されて、幼虫が生きていけないから、です。

 

おわりに

  • 萌芽更新の意味
  • 雑木林が放置される理由と、生物多様性への影響
  • 萌芽更新で復活する生き物たち

を解説しました。

 

個人的な話ですが、僕は将来、多様性を復活する活動をしたいと思っています。

 

そのためには、雑木林が必要とされる社会や、人と自然が共存する生き方、を見直して作っていくことが大事になりそうですね。

 

それに気づかせてくれた、先日の公園での「萌芽更新」に感謝です。

 

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