ボルネオ島などの熱帯ではカブトムシはいつ見られるの?
こんな疑問にお答えします。
日本でカブトムシが見られる季節と言えば、「夏」ですよね。
逆に、冬にカブトムシは見られません。
では、熱帯地域であるマレーシアのボルネオ島では?
実は、ボルネオ島ではカブトムシが1年中見られます。
僕も先日ボルネオ島に行き、1種ですがカブトムシを見ることができました。
しかしながら、熱帯地域においても「乾季」「雨季」の季節があり、時期によって見つけやすさが異なります。
ボルネオの雨季は10〜3月。
虫を探すには雨季明けが良いらしく(詳しくは本文にて)、4〜5月あたりがベストシーズンかと思います。
このように、昆虫と見られる季節は大きく関係しているんですね。
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。
そんな虫好きの僕が、昆虫と季節の関係について紹介します。
昆虫と四季の関係
多くの昆虫は冬は活動休止
日本(特に本州以北)では、多くの昆虫は冬は活動的でありません。
アリも、アゲハチョウも、カブトムシも冬には見かけませんよね?
これらの虫は、卵や幼虫などの姿で冬を越します。
中には、成虫の姿で隠れながら、じっと寒さをこらえて冬を越すものも。
成長とともに姿や習性が変わることを「変態」と言いますが、「卵」「幼虫」「成虫」などは昆虫の変態における成長段階のことです。
変態について、以下の記事で詳しく解説しています↓
冬を越すことを「越冬」と言い、越冬するときの成長段階のことを「越冬形態」と言います。
例えば、カブトムシならば「越冬形態=幼虫」となります。
越冬形態について詳しくは以下の記事をどうぞ↓
ところが、生き物にはどんなことにもほぼ必ず例外というのがありまして、冬に積極的に活動する特異な昆虫もいます。
その1つが「フユシャク」という蛾の仲間。
ウスバフユシャク
上の写真は、なんと1月後半の真冬に撮影したもの。
冬に活動する虫がほとんどいない中、むしろ真冬に活動する変わり者です。
虫の少ない冬の季節を彩ってくれる貴重な存在なんです。
フユシャクについて詳しくは、以下の記事で紹介しています↓
真夏は活動を休止する昆虫が多い
虫が見られづらい季節は冬だけかと思いきや、実は真夏も活動しない虫は多いです。
聞きなれない言葉かと思いますが、この真夏の暑い時期を超えることを「越夏」「夏眠」と言います。
例えば、テントウムシ。
ナナホシテントウ
「春」や「秋」はよく活動し、アブラムシをたくさん食べます。
しかし、夏は落ち葉の下など涼しい場所で休みながら秋を待ちます。
なので、真夏はテントウムシを見ることはあまりありません。
このテントウムシのように、暑い季節の真夏に活動量が下がる虫もいるのです。
テントウムシについては、以下の記事で詳しく紹介しています↓
季節によって見られる昆虫が違う理由
冬に昆虫が活動できない理由
昆虫にとって、生息地の「気温」はとっても大切な要素です。
特に冬に昆虫が活動できなくなる理由は、気温による影響が非常に大きいです。
なぜなら、昆虫は「変温動物」だからです。
動物が動くためには、エネルギー(=熱)が必要です。
変温動物の体温は、環境の温度によって変化するため、寒いと体を動かすことができなくなってしまいます。
体の活動が維持できず、死んでしまうものもいます。
逆に、僕たち人間が冬でも夏と同じように活動できる理由は「恒温動物」だから。
常に体を動かせるエネルギーを蓄えておくことで、寒くても活動することができます。
エネルギーの蓄えがない昆虫たちは、じっと冬眠するなどの方法で、エネルギーを極力使わないようにします。
なので先ほど紹介した、冬に活動するフユシャクなどはとっても変わった昆虫なのです。
変温動物と恒温動物については、詳しくは以下の記事をどうぞ↓
昆虫は暑過ぎてもダメ
では変温動物である昆虫は、気温が高ければ良いのでしょうか?
例えば、カブトムシやクワガタなどは夏に見られる虫たちです。
ノコギリクワガタ
彼らは暑さに強いのでは?と思われがちですが、実はそうでもありません。
カブトムシやクワガタは基本的に森の中で活動します。
それは、日の当たらない森の中の方が涼しいからです。(日なたと日陰で気温が5度ほど異なる)
また夜行性であるのも、気温の下がる夜の方が活動しやすい、といった理由のようです。
特に標高の高い場所に住むミヤマクワガタなどは、暑さに繊細です。
これは僕も実体験があります。
子供の頃に家でミヤマクワガタを飼育していた時のこと。
家族で2日間ほど旅行に行った際、その間の温度管理ができませんでした。
帰ってきたらミヤマクワガタが死んでいて、ショックを受けた経験があります。
ちなみにその時、カブトムシは大丈夫でした。
このように、主に夏に活動する虫たちであっても、暑すぎる環境では生きていけないことが分かります。
ちなみに、今年はニューヨークの街中でミツバチが大量発生しました。
セイヨウミツバチ
アメリカのニューヨーク中心部のタイムズスクエアにミツバチが大量飛来し、大騒ぎとなる事態が発生したとのニュースが出ました。
記事によると、8月28日午後、ホットッドックスタンドのパラソルに4万匹を超えるミツバチが大量に飛来。危険とのことから、通りを一時的に封鎖し、専門家と警察が掃除機を使ってハチを除去したとのこと。
実はミツバチも、真夏を耐えるための習性を持っています。
ミツバチにも人間と同じように適温があり、気温が高くなると巣内の温度を下げるため、巣の外に出て新しい住処に移動します。
巣箱の密度を下げて適温を守ろうとするんですね。
今回のニューヨークの事件の原因は、今年の猛暑による影響で、ミツバチが新しい住処を探す行動を取ったことと言われています。
熱帯地域での昆虫と季節の関連性
では、1年を通して暖かい気候の熱帯地域の虫たちと季節の関係はどうなのでしょうか?
その答えは、1年を通して虫が見られます。
1年を通して虫が見られる
先日マレーシアのボルネオに行きましたが、ホタルやカブトムシ、バッタなど様々な昆虫の成虫に出会えました。
ただ、年中生息してはいるものの、見やすい時期と見にくい時期があるようです。
例えば、雨季が明けた直後は植物が一斉に開花します。
その時期は、そこに集まる虫たちが見やすいとのこと。
ボルネオに行った時のガイドさんも、ボルネオのカブトムシは乾季の時期の方が見やすいと言っていました。
では、日本で熱帯に最も近い気候を持つ南西諸島についても見てみましょう。
南西諸島の気候は「亜熱帯」と呼ばれていて、年間平均気温は23.7度、真冬でも20度前後。
ここでの昆虫の生態はどうでしょうか?
南西諸島では、例えば「オオゴマダラ」というチョウは年間を通して見られます。
オオゴマダラ
熱帯地域と同様に、1年を通して昆虫が活動できる気温が保たれているからなのでしょうね。(餌となる花が咲いていることも大きな要因と思われます)
一方で、南西諸島でクワガタが見られる時期は、やはり限られています。
亜熱帯でも、最低気温は20度以下になりますし、本州の夏と比べたら寒い環境になりますからね。
生物相としても、本州と熱帯地域の中間といったところになるかと思います。
昆虫は環境に合わせて自分の行動を変えている
僕はしばらく前まで、昆虫が見られる時期は決まっているものだと思っていました。
例えば、「カブトムシと言えば夏に見られる虫」といった感じ。
だけど、海外や本州から離れた場所で暮らす生き物たちを見ると、環境に合わせて行動や生活を変化させていることが分かります。
生き物たちの、賢く適応するたくましさと不思議さに、毎度感心します。
近似種であっても、土地ごとに生活スタイルや行動が全然違う。
これは、日本だけで観察していたのでは得づらい発見で、生き物観察の旅ならではのものです。
ボルネオ島の旅でも、「熱帯地域では1年中虫が見られて羨ましい」と思う反面、日本での四季の素晴らしさも知りました。
1年間で、「春夏秋冬」それぞれの季節と生き物が楽しめるって、とっても珍しいですよね。
季節によって自然のいろんな表情を楽しめる、日本の四季ってとても良いなと感じます。
おわりに:色々な季節に虫を観察してみよう!
季節を意識して虫を観察すると、色々な発見があります。
冬を乗り越える工夫が虫ごとに違うこと、季節によって姿が違うこと、など不思議で奥深いことだらけです。
また、虫の季節による違いを知ることによって、それを観察している僕たちは季節の移り変わりをより感じられるようになります。
すると、彼らを通して季節をより楽しめるようになるんですね!
また、地域によって季節ごとに出会える生き物が違うのも面白いところ。
これは日本が縦に長い国であり、北部と南部で気候帯が違うという、日本ならではの特徴があるからこそなのです。
なので日本では、生き物観察旅行がとっても面白いんですよ!
以下では僕が使っている、旅行に行く時に便利なサービスを紹介していますので、ぜひご覧ください!
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