蝶(チョウ)と蛾(ガ)を簡単に見分ける方法はある?
蛾は夜行性説とか、一般的に言われる見分け方は有効なの?
こんな疑問にお答えします。
今回の主役である蝶(チョウ)と蛾(ガ)は、分類上はチョウ目(鱗翅目(りんしもく))という同じグループの昆虫です。
蝶と蛾の見分け方で、例えば「蛾は夜行性である」というような、一般的に聞かれるものもありますが、これらは本当なのでしょうか?
結論を言ってしまうと、蝶と蛾を生態で区別するは結構難しいです。
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。
そんな虫好きの僕が、蝶と蛾の見分け方と一般的な説の検証を紹介します。
蝶と蛾の簡単な見分け方
種類を知らなくても外見だけで見分ける簡単な見分け方。
そのポイントは「触角の形」です。
蝶の触角は、先がふくらんでいて
- 触角の先がこんぼう状
- 触角の先がカギ状
のどちらかの形です。
蛾の触角は、
- くし状になっている
- 触角の先までまっすぐ(太さは変わらない)
となっています。
画像で比較するとこんな感じ。
■ 蝶の触角
■ 蛾の触角
ちなみに触角がくし状になっている蛾はオス。
くし状の触角でメスのフェロモンを感知するのです。
日本に生息する蝶と蛾においては、このポイントを知っておくと簡単に見分けられるでしょう。
一般的な蝶と蛾の見分け方は有効なのか検証
次に、よく言われる蝶と蛾の見分け方について検証していきます。
1. 蝶は昼行性、蛾は夜行性説
この説、一般的に浸透している気がしますが、実は昼行性の蛾も結構います。
例えば、オオスカシバというスズメガの仲間。
オオスカシバ
幼虫はクチナシの葉を食べ、身近な場所で見られる蛾。
公園などに行くと、昼間に花の蜜を吸っている姿を見ることができます。
また、以下のホタルガも昼行性。
ホタルガ
昼間でも、ヒラヒラと空を舞う姿が見られます。
このように、蛾は夜行性のものばかりでないので注意です。
2. 蛾は地味説
これは一般的なイメージが先行しているもので、間違いです。
実は派手な蛾はたくさんいます。
先ほど紹介したオオスカシバだって、よくイメージされる地味なタイプの蛾とは違うことがわかります。
他にも、キンモンガという蛾。
キンモンガ
昼行性の蛾で、黒と黄色のはねが美しい。
黄色の紋は個体差があって、白っぽいものもいれば、より黄色味の強いものもいます。
地味と言われる蛾のイメージとは全然違いますよね。
このように、蛾にも派手なはねを持つものはたくさんいます。
蝶よりも蛾の方が種類も多く、種類数やはねの多様さを考慮すると、蝶よりも蛾の方が奥が深いと言えるでしょう。
以下の記事で、蛾のはね模様の美しいガについて紹介しています↓
3. 止まる時、蝶ははねを閉じて、蛾ははねを開く説
確かに、蛾は止まる時に、ほとんどがはねをひらいて止まります。
(一部はねを閉じて止まる種もいます)
しかし蝶については、止まる時にいつもはねを閉じるというわけではありません。
例えば、以下のルリタテハ。
ルリタテハ
ルリタテハはれっきとした蝶ですが、はねをひらいて止まっています。
そう、蝶は日光浴をするのです。
なぜなら昆虫は変温動物。
体温を上げなければ活発に動くことができません。
なので、午前中などはこうして日なたで日光浴をするところをよく見られます。
ということで、「はねをひらいて止まるから蛾」という説はあまりアテにならないでしょう。
4. 毛虫が成虫になると蛾になる説
この説は、正しいと思います。(少なくとも日本では) ※2019/11/24訂正しました
この説も、 正しくはありません。
確かに、いわゆる「毛虫」と呼ばれるくらい毛の生えたものの多くは蛾の幼虫です。
例えば、以下のヒトリガの幼虫は「クマケムシ」と呼ばれるほど毛むくじゃらの毛虫です。
ヒトリガの幼虫
ところが、蝶の幼虫にも毛が生えているものがいます。
以下は、ヒオドシチョウという蝶の幼虫。
ヒオドシチョウの幼虫
このように、毛がある蝶の幼虫もいるのですね。
また、ヒオドシチョウの場合、毛よりもトゲが目立ちます。
ヒオドシチョウのように、毛ではないがトゲがたくさんある幼虫もいます。
これらの姿をした幼虫も、一見毛虫のように見えるでしょう。
さらに、毛のない蛾の幼虫もいますし、毛ではなくトゲがあるものもいます。
もしこのトゲを持つ幼虫を毛虫と定義するなら、毛虫の蝶の幼虫はたくさんいます。
以上から、毛虫=蛾の幼虫は正しくなさそうです。
イモムシ・ケムシをもっと知りたいという方はこちらをどうぞ。
蝶と蛾に関連する虫たち
蝶と蛾の中間の虫「セセリチョウ」
蝶と蛾の中間的な存在で、いまだに研究者でも意見が分かれるグループの虫がいます。
その名も「セセリチョウ」。
チャバネセセリ
触角の見分け方でも出したのですが、触角の先が「カギ状」になっているグループがセセリチョウです。
他の蝶の仲間は「こんぼう状」です。
日本では分類は蝶(チョウ)になっています。
でも英語では、セセリチョウは「skipper」と呼ばれます。
蝶のbutterflyでもなく、蛾のmothでもない、特殊な存在なのです。
その理由は、
- 触角の形が一般的な蝶とも蛾とも違う
- 胴体が蛾のように太い
- はねの翅脈(しみゃく)が分かれない
- 他の蝶とは飛び方が違う
などが原因のようです。
こちらの議論については、以下のページで詳しく説明されていました↓
なお、フランスやドイツなど、蝶と蛾自体を区別しない国もあります。
セセリチョウの魅力は以下の記事で詳しく紹介しています。
蝶と蛾と同じ分類に属する虫たち
蝶と蛾はチョウ目に属する虫。同じ分類の虫たちを以下で紹介しています。
[チョウ目]
おわりに:多様な蝶と蛾を観察してみよう!
今回紹介したように、蝶もたくさんの種類がいますが、蛾はもっとたくさんの種類がいます。
日本には5,000種類の鱗翅目が生息しているようですが、蝶はそのうちたったの5%。
他の95%は蛾とのことです。
なので蛾は多様な特徴を持っているんですね。
このように、蝶と蛾のほかにも身近には実に多様な虫たちが暮らしています。
以下の記事では昆虫観察の始め方や、観察に役立つ道具を紹介していますので、ぜひご覧ください!
そのほかのおすすめ虫紹介記事↓
■ トノサマバッタ
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