虫はどういうところを探したらいいの?
こんな疑問にお答えします。
虫を探すには、虫のえさを知ることがとっても大事です。
今回紹介するのは、「食草・食樹」。
これらを知ると、意外なところに虫が暮らしていることに気付きます。
すると、街中のちょっとした植え込みなんかをのぞくのがとっても楽しくなる。
毎日がちょっと楽しくなるんですね!
僕はネイチャーエンジニアの亀田です。
年間100回以上全国各地で生き物観察をし、様々な虫に出会ってきました。
そんな虫好きの僕が、身近な食草と、それにつく虫たちを紹介します。
食草・食樹とは
食草とは、「草食性の虫のえさ」のこと。
例えば、多くのチョウやガの幼虫は、植物の葉を食べて育ちます。
また、虫は植物の好みというのが結構あって、特定の植物の葉しか食べないといった種もたくさんいます。
見方によれば、「その虫が生きられるかどうかは、その特定の植物に依存している」ということ。
昨今色々な虫が絶滅の危機に瀕していますが、「食草が減っている」ことが影響しているものも多いのです。
食草が減る原因は、開発などの人間の活動による環境改変の影響も。
以下の記事にあるオオカバマダラというチョウの減少も、除草剤による食草の減少が原因とのこと。
食草を知ることは、虫たちの生態を知ることに繋がり、虫たちを守っていくための大事な手がかりになるのです。
食草・食樹の例【植物につく虫たちも紹介】
今回は、身近な食草・植樹とそこでみられる虫たちを4種紹介します。
ミカン科
植え込みや、ガーデニングで育てている家庭もあったりして、街中でも見つけやすい植物です。
ミカン科の植物は、アゲハチョウの幼虫の好物です!
■ ナミアゲハ
幼虫(中齢)
幼虫(終齢)
面白いことに、同じ幼虫でも、成長に応じてこんなに姿が変わるんですね。
昆虫の成長については、以下の記事で詳しく解説しています↓
成虫
成虫になると、よく見かけるアゲハチョウの姿に。
成虫は葉を食べません。
ナミアゲハは都会生活に適応しているので、街中でも見つけやすい昆虫。
初心者の観察にもピッタリです!
カラムシ
こちらは林縁でよく見られるイラクサ科の植物。
カラムシでは、以下のような虫が見つかります。
■ フクラスズメ
幼虫
毒がありそうな見た目ですが、毒はありません。
危険を感じると、頭を高速でふって威嚇します。
この姿がかわいらしいのですが、あまりにも必死に頭をふることで食べてた食草を吐いてしまったりして、ちょっかいを出し過ぎるととちょっとかわいそうです。
成虫
カラムシの葉で幼虫はたくさん見るのですが、成虫はあまり見られないんですよね。
成虫は写真の様に、樹液を吸います。
夜行性なので、昼間はどこかにうまく隠れているのだと思います。
■ ヒメアカタテハ
幼虫
幼虫は、葉っぱを折りたたんで巣を作り、その中で生活しています。
毛虫のような姿をしていますが、こちらは毛でなく棘で、毒もありません。
成虫
成虫は秋によく見られます。
オレンジ、黒、白のはねを持つ、綺麗なチョウです。
エノキ
こちらは樹木で、街中でも身近に見られます。
ムクドリなどの鳥が実を食べて種を運んでくれるので、街中で繁殖しやすいのでしょう。
ムクドリ
エノキでは、華やかな姿の虫たちが見つかります。
■ アカボシゴマダラ
幼虫
成虫
幼虫時代はゆるキャラのような可愛らしい姿です。
成虫は成虫で美しい姿のチョウになります。
でも実は、アカボシゴマダラは特定外来生物に指定されてしまった虫。
家に持ち帰って飼育などすると違法になってしまうのでご注意。
■ オオムラサキ
日本の国蝶であるチョウ。
こちらの幼虫もエノキの葉を食べます。
しかし残念ながら個体数が減っていて、準絶滅危惧種に指定されています。
上のアカボシゴマダラと生活が重なっているので、少なからず個体数の影響を受けていると思います。
■ ヤマトタマムシ
日本人がイメージするタマムシと言えば、このヤマトタマムシ。
虹色に輝く姿は、昆虫界最上級の美しさです。
ところで、これまで紹介した綺麗な虫たち、あんまり街中で見かけなくないですか?(アカボシゴマダラは見られるかも)
エノキは街中にもあるのに、どうして?
それは、街中での樹木の管理の仕方が影響しています。
オオムラサキは、エノキの落ち葉に隠れて越冬しますが、街中のエノキの落ち葉は撤去されてしまうため越冬できません。
またヤマトタマムシは枯れた木に産卵をしますが、街中の樹木では枯れた木を残さないため、子孫を残していくことができないのです。
このようなことがあって、彼らを街中で見るのは難しく、落ち葉や枯れた木が撤去されない雑木林などでないと見られません。
人間にとっては、落ち葉も枯れ木もない環境の方が綺麗で住みやすいと思いがちですが、虫たちにとっては枯れた樹木たちも大切な生活環境なのです。
クズ
クズはちょっとした草地に生えていたり、場所によってはかなり広範囲に生い茂る、身近な草の1つです。
このクズにも、たくさんの虫たちがつきます。
■ マルカメムシ
円形で、5mm程度しかない小さなカメムシ。
僕が以前住んでいた家では、洗濯物を干すと、取り込む時によくくっ付いてきました。
ちなみに、カメムシ類は葉をかじって食べるのではなく、ストローを植物に突き刺して汁を吸って食べます。
■ オジロアシナガゾウムシ
パンダのような姿のかわいらしいゾウムシ。
臆病な性格で、危険を感じると頭を隠して死んだふりをします。
そうなるとポトッと下に落ちたりするので、観察する時は慎重に近づきましょう。
ちなみに、写真のもじゃもじゃしたのはクズの実です。
■ コフキゾウムシ
クズにかじり跡がたくさんあれば、この虫がいる可能性が高いです。
青白い粉がかかっているような姿が特徴的です。
■ クズノチビタマムシ
この虫はちょっと贅沢に葉を食べます。
クズの葉の端っこが、ちょっとずつかじられたような跡があればこいつがいるかもしれません。
食草・食樹をもっと知る【昆虫の食草・食樹の本】
紹介した食草はほんの一部で、他にもたくさんの食草があります。
虫が好む植物を見つけるには、「虫食い跡」を探すのが一番。
葉にかじられた跡があったり、一部の枝だけ葉っぱがないような箇所があれば、その近くの葉の裏などを探してみましょう。
また、食草に関する本も販売されています。
身近な植樹・食草と、見られる虫たちが紹介されているので、この本を片手に家の近くで虫を探してみるのもおすすめです。
おわりに:街で見られる食草・食樹にも注目してみよう!
街を歩いていると、あまりに綺麗な状態の街路樹や草を見かけることがあります。
それは、葉を食べる虫や毛虫がつかないように、消毒をしていたりすることもあるんですね。
樹種によっては毒毛虫がついたり、樹木を弱らせてしまう勢いで食べてしまう虫もいるので、人通りの多いところではやむなしの部分もあると思います。
しかし、ほとんどの毛虫は無害ですし、僕としては生き物が寄り付かない樹木などは不自然&寂しさを感じるのです。
見た目やちょっとした景観の悪さで駆除や消毒をしたりせず、生き物たちとの共存を受け入れられたら、むしろ毎日がもっと楽しくなります。
僕は街中の意外な場所で、生き物の隠れ家を見つけたときは、とってもワクワクするんです。
今後もそんな楽しみ方や、虫たちの魅力をお伝えできればと思います。
以下の記事では昆虫観察の始め方や、観察に役立つ道具を紹介していますので、ぜひご覧ください!
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